『Shade 11』の新機能「フォトモデラー」

イーフロンティアから発売中の3DCGツール『Shade 11』。前回の記事に引き続き、本バージョンから加わった新機能を紹介しよう。今回紹介するのは、複数の写真から半自動でテクスチャー付きの3DCGを作成してくれる「フォトモデラー」。面倒なテクスチャーの設定をShadeが自動的に行なってくれるので、初心者モデラーに向けた機能となっている。そのため、『Shade 11』のすべてのバージョン(Basic/Standard/Professional)で使用可能だ。

用意する写真は最低3枚以上

フォトモデラーを行なうには、3DCG化させたいモノが映っている写真を3枚以上用意する必要がある。写真の画像がそのままテクスチャーとなるので、なるべくキレイに撮影された画像のほうがよい。また、フォトモデラーで作成しやすいのは、四角形や三角形で構成された物体。慣れるまでは、単純な立方体の箱を使ってテストしてみるといいだろう。また、素材となる画像は、ただ単に撮影をすればいいというわけではない。撮影時の注意点を以下に挙げてみた。

フォトモデラー用素材写真を撮影するときのコツ

●ズーム機能は使わない
●各写真を同じサイズで撮影する
●撮影した写真はトリミングをしない
●ゆがみのないように撮影する
●なるべく被写体は写真の中心に配置
●異なるカメラを使わない

3DCGを作りたいモノをデジカメで撮影。下に敷いている紙は「基準面(※詳細は後述)」を設定するため

フォトモデラーは直方体の物体が作りやすい。街に出て四角いモノを撮影してまわってきた

写真撮影時、ついズーム機能を使ってしまいがちだが、これではうまくいかない。実は筆者も初めはズームを使って撮影してしまったが、まったくうまくいかなかった。また、撮影した画像はトリミングしないこと。写真の余白が大きくても、撮影時の状態で保存しておくように。撮影後、手を加えててよいのは、色の調整など、構図が変わらない修正だけだ。 「異なる写真~」と前述したが、できるだけ真正面や真横からの写真は控えたほうがよい。立方体の箱を撮影する場合、1枚の写真に3面が写るような構図で撮影すべき。撮影の枚数は最低条件である3枚でもよいが、より丁寧に作り込みたい場合は4~6枚撮影しよう。ただし、画像の枚数が多過ぎると設定が複雑になる。

モデルとなる立体物を角度を変えて撮影

撮影した画像をShade 11に読み込む

写真を撮影したら準備完了。Shade 11を起動して、新しい「パート」をひとつ作成する。このパートを選択した状態でツールバーの「ツール→作成」から「フォトモデラー」を選択。するとフォトモデラーのウインドウが表示される。このウインドウ内で事前に撮影した画像を読み込み、それぞれの面を設定する。

ツールから「フォトモデラー」を選ぶときは、あらかじめブラウザ内に新規の「パート」を作っておく

Shade 11内に「フォトモデラー」が起動した状態。初めはウインドー内は空白だ

面の設定でまず初めに行なうのは、「基準面」の指定。これはすべての写真で行なう必要があるため、立方体の場合は上面を「基準面」に指定しよう。用意した写真に上面が写っていない場合は、被写体が置いてある机や床の模様など、四角形のモノで基準面を指定する。基準面を指定するときは、アイコンから「rface」を選択した後に、写真内に4点を指定するだけ。これで自動的に基準面となる。ただし、4点を指定するときは、必ず反時計回りに点を打っていかなければならない。これはとても重要なので、よく覚えておこう。そして、読み込んだ写真すべてに基準面を設定したら、次は被写体の面の設定。

「rface」のアイコンを選んだ状態で、「基準面」を設定する。必ず反時計回りに点を打つこと

基準面を設定済みの画像は、画像リストのファイル名に「*」のマークがつく

面の設定はアイコンから「face」を選択して行なう。方法は基準面とほぼ同じ。基準面と異なるのは、「face」は最低でも2枚以上の写真に指定すればよいというところと、「face」を設定した面ごとにIDを入力するということ。例えば、1枚目の写真の上面を「ID:1」としたならば、他の写真の上面もIDを「1」にする。「上面は1、右面は2~」などと、事前に自分のなかでルールを決めておくと作業がスムーズに行なえる。以上の設定を繰り返し、写真に写っている被写体のすべての面に「face」を指定したら設定完了。フォトモデラーウインドーの左側にある「三次元復元」のボタンを押すと、自動的に3DCGができあがる。

3DCGを確認するには、フォトモデラーウインドウ上部にあるタブで「3Dビュー」を押せばよい。もしも問題がなければ、ウインドウ左下にある下矢印のボタンをクリックして、『Shade 11』のブラウザに取り込める。ここまでできたらフォトモデラーウインドウは閉じよう。

面の設定を行なった直後の面のIDは「?」となっている。「フェイスリスト」の項目をダブルクリックして、任意の数字を入力する

すべての面を設定すると、上の画像のようになる。時間がかかるが慎重に行なっていこう

「3Dビュー」で確認しているところ。これで直方体の3DCGが完成

ポリゴンメッシュで3DCGを微調整

取り込まれた3DCGは自由曲線ではなく、ポリゴンメッシュの状態になっている。ブラウザウインドウを見ると、形状データの他にテクスチャデータも自動生成されているのがわかるだろう。ビューのモードを「テクスチャ」にすれば、写真の画像が貼り付けられているはずだ。もしも形状に不満があれば、後はポリゴンメッシュのモデリング方法で微調整を行なう。満足いくまで修正したら、レンダリングを行なって最終確認してみよう。

Shade 11に取り込むと、撮影した被写体が作業エリア内で3DCGになっている

ここまできたら、後は自由にモデリングが可能。前回の記事で紹介した光源「ボリュームライト」を配置する

これで、完成

このように、Shade 11の新機能「フォトモデラー」を利用すれば、とても簡単な作業でテクスチャー付きの3DCGが作れるのを理解してもらえたと思う。ただし、この機能はあくまでもShadeの初心者向け。単なるボックス形状の3Dモデリングの場合、Shadeを使いこなしているようなクリエイターなら、ほんの数秒で作れてしまう。テクスチャーを貼るという作業は、面倒かもしれないが、それに慣れたらフォトモデラーを使うよりも素早く作成できるようになるはずだ。Shade初心者の方は、フォトモデラーで3DCGの楽しさを知り、次は自分の力でモデリングを行なって自作の3DCGにチャレンジしてみて欲しい。

身の回りや街にある直方体をいろいろ利用してみました

このような3DCができました