RIA(Rich Internet Application)システム開発のクラスメソッドは9月25日、RIAシステムの事例を紹介する自社セミナーを開催。2006年11月にFlex2.0を利用した取引システムを提供しているひまわり証券の担当者を招き、RIAシステム導入のポイントや効果を解説した。

ひまわり証券は、国内で初めてFX(外国為替証拠金取引)サービスを提供した企業として知られ、現在、FX、CFD(差金決済取引)、投資信託、証券先物などの金融商品を取り扱っている。

クラスメソッド 営業部 マーケティンググループ 伊原稔氏

セミナーでは、まず、クラスメソッドの営業部 マーケティンググループの伊原稔氏が、RIAの特徴や動向、RIAシステム構築のポイントなどを簡単に紹介した。

RIAは、従来のHTMLなどの静的な技術では課題のあった、単純な表現しかできないWebアプリケーションを、FlashやSilverlight、AjaxなどのWeb技術を使って、操作性や表現力を向上させたアプリケーションのこと。特徴としては、ユーザビリティや表現力を向上させるだけでなく、コスト面(操作教育の軽減、メンテナンス性の向上、リスクの軽減など)やパフォーマンス面(通信速度の向上、クライアント資産の活用によるサーバ負荷の軽減、コンポーネント利用による開発生産性の向上など)でも効果が期待できる点が挙げられる。

RIAの業界団体であるRIAコンソーシアムの調査によると、RIAの市場認知度は約31%、システム関係者に限定すると66%に上っている。

また、伊原氏は、RIAをめぐる近年の技術動向について、同社が各技術を評価した図を提示。これは、Flex、AIR、Ajax、Flash、Silverlight、Curlという代表的な6つのRIA技術を開発生産性、拡張性、メンテナンス性、デザイン性、インタラクティブ性という5つの要素から、4段階評価(×、△、○、◎)したもので、実際に同社がRIAによる業務アプリケーションを構築するなかで感じた印象に基づいているという。

クラスメソッドによるRIA技術の印象比較

それによると、開発生産性からインタラクティブ性の5つの要素について、「◎」となっているのは、FlexとAIR。Flexは、ダッシュボード・システムやC/Sシステムからの移行など、業務システム全般に広く用いられ、AIRは、それらにくわえて、ウィジェットやメッセンジャー、メディア・プレイヤーといったデスクトップ・アプリケーションを開発する際に利用されている。

Silverlightは、開発生産性が「○」で、他の4つは「◎」。これは、デフォルト・コンポーネントやノウハウがまだ少ないことが理由の1つという。もっとも、最近では、Silverlightを利用した案件の引き合いが増加しており、FlexやAIRと比較しても、実務上の差はほとんどなくなっているとする。

RIAシステム構築のポイント

RIAシステム構築のポイントとしては、5つを紹介した。1つ目は、 サーバサイドが堅牢であること。UIが優れていても、データを取得するサーバサイドが堅牢でなければ、システム全体が不安定になる。UIの機能要件に応じて即座に対応できるような疎結合な作り方が必要という。

2つ目は、機能要件が追加・変更されたときに、全体の構成を変えずに部分的に機能の追加ができること(=拡張性)。そのためには、ロジック/レイアウト設計とデザインとを分離し、機能をサービス化して追加・修正できるようにすることが必要となる。

3つ目は、ビジネスの変化に合わせてシステムの機能要件を柔軟に変えられること(=柔軟性)。開発モデルとしては、プロセスを繰り返しながら改良していく成長型を考慮する。

4つ目は、スピード。ユーザーの満足度をえるためには動作スピードが非常に重要なポイントとなる。機能が正しく動作することを確認した後は、動作スピードを得るためのチューニングを繰り返す。

5つ目は、デザイン。アニメーションやビジュアルにこだわりすぎると操作性が落ちるため、実際に利用するユーザーの視点からのUIデザインが重要になる。開発初期から、モックやプロトタイプを用いて、デザインを最適化していくことが求められるという。