CMプランナーは、クライアントのカウンセラーである

中央酪農会議の「牛乳に相談だ。」シリーズ、ソフトバンクモバイルの「ホワイト家族 24 予想外な家族」シリーズ、東京ガスの「ガス・パッ・チョ!」シリーズなど、おなじみの人気CMを生み出している電通の澤本嘉光氏。クリエイティブディレクター / CMプランナーとして広告表現の最前線で活躍する澤本嘉光氏に話を訊いた。

澤本嘉光
1966年、長崎生まれ。東京大学文学部国文科を卒業後、電通に入社。CMプランナーとしてソフトバンクモバイルの「ホワイト家族 24 予想外な家族」シリーズや、東京ガスの「ガス・パッ・チョ!」など、数々のヒットCMを制作し、これまでにクリエイター・オブ・ザ・イヤーを2度受賞している。また、脚本家として映画『犬と私の10の約束』(2008)の脚本を手掛けたほか、読売新聞の会員制サービス「yorimo」にて、小説「おとうさんは同級生」を連載中

――そもそも澤本さんはCMのお仕事に関して、どういった部分を担当されているのでしょうか?

澤本嘉光氏(以下、澤本)「クリエイティブディレクターでCMプランナーを兼任しているという感じですね」

――具体的にクリエイティブディレクターとは、どんなお仕事なのですか?

澤本「宣伝のチームリーダーと考えてもらえば、わかり易いと思います。まず、クライアントから課題が来ます。その課題を聞いて、『グラフィックは誰で、演出は誰で』という感じに、課題に適した人選をしてチームを作ります。ただ、これはあくまで僕の場合です。クリエイティブディレクターの仕事は千差万別なので、人によって違います。僕の場合は、課題や、プロジェクトに関する方向付けをチームに対して行います」

――プロジェクトへの関わり方にクリエイティブディレクターごとに差異が出るものなのですか?

澤本「そうですね。クリエイティブディレクターはコピーライター出身の人も、アートディレクター出身の人も、CMプランナー出身という人もいるので、関わり方に違いはあります。僕の場合はCMプランナー出身なので、プロジェクトの中でその役割も務めるというわけです」

――では、CMプランナーというのは、どんなお仕事なのでしょうか?

澤本「わかり易くいうと15秒や30秒のCMの脚本を書くという仕事です。勿論、誰が出演するとかいう部分まで考えて、それをクライアントに提案して成立させるという役割です」

――プレゼンまでする脚本家という感じでしょうか?

澤本「やってることは、クライアントのカウンセリングという感じです。クライアントの求めている事をクリアにしていくのです。例えば、クライアントが"爽やかさ"を売りにしている目薬があったとします。それに対して『爽やかより"刺激的"という声が強い。だから今回は"刺激的"というキーワードでCMを作ります』というように、方向付けをする場合が多いです。医者やカウンセラーに近い感覚で表現を作っています」

――カウンセリングと、CM制作の仕事の比率はどんな感じなのでしょうか?

澤本「ほぼ半々という感じですね。ずっとCMの中身ばかり考えているわけではないです」

――CMの制作の部分に関して教えてください。

澤本「CMプランナーは脚本までで、演出家まではやりません。あくまでも、撮影の調整、CMの案を通すまでが仕事です。監督を選ぶ、キャストを選ぶ、CMを考えるまでは、僕の役割はCMプランナーで、クライアントに案が通った後はプロデューサーになります。僕の作業としては、このふたつを平行して進めている感じです」

次のページでは、澤本氏が自身のCM制作のスタンスについて語る⇒

澤本氏が担当した中央酪農会議の「牛乳に相談だ。」シリーズ(左)と、ソフトバンクモバイルの「ホワイト家族 24 予想外な家族」シリーズ(右)