世界的なバブルの中で右肩上がりの成長を続けてきたIT業界だが、米国発の金融危機の広がりでその至福の時間も終わりを告げようとしている。景気後退の第一波はまず製造装置メーカーやIntelなどの部品メーカーに影響を与え、やがて業界全体へと徐々に波及していくだろう。

IT関連の技術イベントやカンファレンスもまた金融不況の影響を受け、規模縮小あるいはイベントそのものが消滅する可能性が高まりつつある。こうした状況下で飛び込んできたのが毎年1月に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されているMacWorldに関する話題だ。米Appleは12月16日(現地時間)、同社のMacWorld San Franciscoへの参加を2009年で最後とし、同年の基調講演のスピーカーはCEOのSteve Jobs氏ではなく、同社ワールドワイド製品マーケティング担当シニアバイスプレジデントのPhil Schiller氏が担当することになると発表した。

2008年1月にサンフランシスコで開催されたMacWorld 2008。Steve Jobs氏のキーノートが開催される日は前日から行列ができるのが恒例で、この年も当日夜明け前の時点ですでに盛況だ

MacWorld 2008基調講演でiPhone SDKのデモを行うJobs氏。この年が同氏にとって最後のMacWorldキーノートとなった

主役なきMacWorldのその後

ご存じのように、MacWorldはIDG World Expoの主催で行われるApple製品にフォーカスしたユーザー/パートナーカンファレンスであり、ある意味でAppleが最大の主役だ。だがAppleは過去にも、フランスのパリで開催されるApple Expo、MacWorld New Yorkへの参加を取り止める発表を行っており、今回のMacWorld San Francisco参加終了宣言はこれに続くものだ。

Apple亡き後のこれらイベントは規模縮小を余儀なくされており、Apple Expoは規模縮小のうえ不定期開催に、MacWorld New Yorkは拠点をボストンに移してMacWorld Bostonと改称した後、現在ではイベントそのものが開催されていない。これらイベントではAppleのトップエグゼクティブが基調講演のステージ上に登場し、新製品や新サービスの発表を行うのが常だった。だがAppleが撤退を表明して以後は出展社も減少の一途をたどり、現地Appleファンによるユーザー交流会的性格が強くなっていった。

フランスのパリで開催されているApple Expo。写真は2006年開催のもの。すでにAppleは同イベントから撤退しており、キーノート等はない展示会のみのシンプルなイベントになっている。会場もコンベンションセンター「Porte de Versailles」の一部フロアのみを使用した小規模なものだ