東京・新宿のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)にて、「ライト・[イン]サイト -拡張する光、変容する知覚」展が開催されている。開催期間は2009年2月28日まで。

同展は、「光」と我々の「知覚」を探求する12作品が展示された企画展。知覚と認識の変容などが体感できる実験的なインタラクティブ作品や、興味深いプロジェクトが紹介されている。

サンキュウ―インストゥルメント

ニューヨーク在住のインゴ・ギュンターの作品。暗い室内を歩いていると、不意にストロボが発光する。その直後、そのストロボ光によってできた自分の影が、壁面に一時的に焼き付けられるという作品。自分の影だけが固まって動かず、観客は影の足元から離れて自由に動くことができるという、不思議な体験ができる。「人々が無邪気にシルエットと戯れ始めるという開放的な側面を持ちつつ、1945年に広島に原爆が投下された直後の閃光、そして瞬時のうちに消えてしまった人々の残したシルエット(ヒロシマの影)を観客に疑似体験させることを意図している作品」とのこと。

space-speech-speed

ドイツのミシャ・クバルの作品。暗闇の室内で、回転する3つのミラーボールから反射される光が、空間全体を撹拌する。室内でそれを見つめる観客は、足元がふらつく感覚に陥る。スライドプロジェクターからの発光がアルファベット文字になっていて、それが回転するミラーボールを介して空間全体へ放たれる。「空間(Space)の中で光としての文字がコミュニケーションを誘発しつつ(Speech)、空間内のダイナミックな動き(Speed)をともなって循環していく」というコンセプト。

『思考プロジェクター』

オーストリアやメキシコのアーティストで構成されたエイリアン・プロダクションズの映像作品。机上のスコープを覗くと、観客の眼の表面と眼底の高解像度画像が撮影され、室内の3方の壁に自分の眼球映像が映し出される。発明家のニコラ・テスラが1933年に語った、「体験者の思考を(網膜を通して)撮影するカメラ」という構想に触発されたインスタレーション作品。正面左側の映像は、アーティストがあらかじめ制作した映像アーカイヴファイルとオーヴァーラップする。

You and I, Horizontal

ニューヨーク在住のアンソニー・マッコールの空間を駆使した作品。観客は、光の被膜でできた円錐の中に入り込んだかのような錯覚になる。この皮膜のようなものは、微細なミストにプロジェクターからの光を当てたもの。ミストは流動的に形を変え、三次元の非物質的『彫刻』として見ることができる。

このほかにも、鑑賞者の眼の網膜に向けて弱いストロボ光をあて、文字の残像を作品とする藤本由紀夫作「PRINTED EYE(LIGHT)」など、日本人アーティストによる作品を体験できるコーナーもある。通常のアートでは、なかなか得られないインタラクティブな知覚体験が、同展では待っているので、ぜひ体験してみて欲しい。

藤本由紀夫作の『PRINTED EYE(LIGHT)』

「ライト・[イン]サイト -拡張する光、変容する知覚」展は東京・新宿のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)にて2009年2月28日まで開催されている(※毎週月曜休館 開館時間は10:00~18:00)。入場料金は一般・大学生500円、高校生以下無料。