NTTソフトウェアは30日、『e-Value Visualization ~進化し続ける価値創造を「見える化」~』をメインテーマに掲げたICT活用イベント「NTT SOFT Solution Fair2008」を開催した。会場では各種ソリューションの展示に加え、有識者によるセミナープログラムを実施。今回はその中から、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が講演したオープニングセミナー「この国の行方」の様子をレポートする。

金融危機に対して日本ができることは多い

戦後の日本では、誰もが"現状のままで良いはずがない"という構造的な不安を感じつつも、微調整を繰り返しながらなんとか乗り切ってきた。しかし櫻井氏は「もし日本が戦後に今のような生き方ではなく、"本当の意味で国家"として存続していたなら、そして私たちが"真の日本人"であったならば、もう少し違う状況展開になっていたのではないかと思います」と、意味深な言い回しで参加者の関心を惹き付ける。

現在、アメリカ発の金融危機により株式市場や金融市場、そして実体経済もかなりの窮地に立たされているのは皆さんご承知の通りだ。しかし櫻井氏は「この金融危機に対して日本ができることは多いと感じています。これはアメリカや中国、ヨーロッパなど世界各国にはない"3つの重要な財産"を日本が持っているからです」と語る。

まず1つ目の財産は「約1500兆円もの莫大な個人金融資産」だ。アメリカの家庭では借金をしてでもお金を使うことが経済発展に繋がるという価値観を持っており、実際にアメリカ自体も外国の資本流入により経済発展を遂げてきた。櫻井氏は「金融が持つ本来の役割は実体経済を下から支えることです。しかしアメリカやイギリスは、実体経済よりも利益につながる金融工学を重視してきました。実体経済の潤滑油となるべき金融が独り歩きしたことが、今の金融危機の原因となっているのは言うまでもありません」と語る。

その実体経済、つまり1500兆円の個人金融資産を持っているのが日本なのだ。櫻井氏は「貴重な資産を今こそ金融危機を救うための原資とし、それを材料に日本の立場を強めていくべきです」と、個人金融資産の有効な使い道を提案する。

2つ目の財産は、日本が誇る「トップ水準の技術」だ。数多くの分野において、日本の技術が世界でもトップクラスに位置しているのは言うまでもないだろう。

そして3つ目の財産は「日本人の心」である。確かに日本では戦後に人間の質的な変化はあったが、真面目かつ熱心に働く姿勢には相変わらず好意的であり、世界でもこれほど仕事に対する倫理感が高い国民はいない。櫻井氏は「これら3つの財産は、日本人にとって当然すぎるため価値があることを意識していないかもしれませんが、世界的に見ると素晴らしい資質なのです」と語る。この資質を使いこなせれば、21世紀の牽引役になることも可能なのだ。