中国の3つの省庁級機関、工業・信息(情報)化部、国家発展・改革委員会、財政部は今年5月、「電気通信体制改革の深化に関する通告」を共同で発表。同通告には、固定通信最大手の中国電信(チャイナテレコム)による、携帯キャリア大手中国聯合通信(チャイナユニコム)のCDMAネットワーク(資産とユーザーを含む)の買収、チャイナユニコムと中国網通(チャイナネットコム)の合併が盛り込まれた。

重複投資の抑制が買収、合併の要因

さらに同通告には、中国電信による中国衛星通信(チャイナサットコム)の基礎電気通信業務の吸収、中国移動通信集団(チャイナモバイル)による中国鉄道通信(チャイナレールコム)の合併なども盛り込まれている。

今年6月2日、中国電信が通告どおりに総額約1,100億元(約1兆6,500億円)で中国聯通のCDMAネットワークを買収した際、両社は公告を発表した。この公告の中で、中国聯通がGSMとCDMA事業の急速な発展とユーザー規模の拡大につれ、異なる技術による二つのネットワークの同時運営が難しくなってきたことを合併の背景として挙げた。

さらにチャイナユニコムは、中国電信にCDMA事業を売却することが、重点事業への資源集中、GSMから3Gへの着実な移行、3G時代における技術的優位性の確立といった重要課題のどれにとっても有益だと強調している。

専門家の分析によれば、今回の一連の通信業界再編の目的としては、(1)同一事業分野に対する重複投資の抑制、(2)意義の乏しい競争の回避、(3)市場構造におけるアンバランスの調整、の三つがある。

やむにやまれなかったCDMAネットワーク売却

まず、重複投資の抑制にとって最も重要なのは、3Gネットワークを一つ減らすことである。再編前、中国の通信市場には主要通信キャリアが4社あり、しかも全て中国国務院国有資産監督管理委員会の所属企業であった。

要するに、自分の子供のような企業にそれぞれ3Gライセンスを4つ交付することになるわけだった。ライセンスを1つ多く交付すれば、それに伴い何千億元もの資金が余分に費やされることになる。その上市場での競争もさらに激しくなるから、無意味で、かつ激烈な競争が繰り広げられる可能性が大きくなるわけだ。

中国聯通にとって、CDMAネットワークの切り離しは、「絶対にしなければならない事」になっている。同社では、二つのネットワークがお互いに市場のパイを奪い合っているため、限られた経営資源を集中させるというマーケティングの鉄則に著しく反する。結局どちらのネットワークにおいても「虻蜂取らず」の状況となっていた。

CDMAを宣伝しようとするならGSMを否定しなければならず、GSMを宣伝すれば今度はCDMAのほうに影響がくる。長らくCDMAは損失、あるいは損失限界のギリギリにあり、しかも大量の資金投入がGSMネットワークを最適化するための資金余力を奪い取ってきた。中国聯通にとり、CDMA事業の処分とは、早晩避けては通れない課題であったのである。