ソニーの「Liblog Station VGF-HS1」(以下「HS1」)は、ネットワークによってAVライフを一変させる機能を持った革新的なホームサーバだ。「HS1」の魅力、使い勝手をAVライターの鳥居一豊が徹底的に解剖する。
知識がなくても使えるネットワークサーバ
PC用の周辺機器として、最近人気が高まっているネットワーク接続型HDD「NAS」。HDDをPCに直接接続するのではなくネットワーク上に置くことで、複数のPCや端末からデータに容易にアクセスできるため、データの共有がしやすいのだ。これを家庭用のPCやデジタル家電向けにより容易に使えるようにした製品が、ソニーのホームサーバ「HS1」である。
HS1は、「テレビサイドPC」の愛称を持つVGX-TP1シリーズと共通の円筒型デザインを採用している。積み重ねて設置することも可能で、明らかにリビングユースを意識した製品だ。そして、単なる1TBの大容量NASというだけでなく、メモリースティック、SDメモリーカード、コンパクトフラッシュカードスロットや3系統のUSB端子を備えていることが大きな特徴。つまり、デジタルカメラで撮影した静止画データやデジタルムービーで撮った動画を、PCを使用せずにHDDに保存することが可能なのだ。
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ハイビジョンハンディカム「HDR-SR11」をUSBで接続し、撮影した動画をコピーしている。この操作でPCを使用する必要はない |
コピー中の動作は、前面のディスプレイに表示される。操作自体も、下にあるCOPYボタンを押すだけなので、とても簡単 |
動画や静止画の取りこみはいたって簡単で、動画または静止画を記録したメモリーカードを挿入したり、あるいは映像機器をUSB端子で直接接続したりすれば、自動的に「HS1」がメディアや機器からデータを認識する。あとは「COPYボタン」を押すだけで自動で動画や静止画データの取りこみが行われる。よく出来ていると関心するのは、すでに取りこんだデータを確認し、新規に追加されたデータだけを取りこむところ。取りこみたいデータを選択したり、すでに同じデータを重複して取りこむようなことはないので、操作がシンプルなのだ。
こうした動画や静止画の取り込み機能は、同社のBDレコーダー「BDZ-L70」なども備えている。しかし、BDレコーダーはデジタル放送のハイビジョン番組という大容量コンテンツの録画が本来の用途であるため、BDへのダビングのためならともかく、長期的な保存先には向かない。ここに「HS1」の存在価値がある。たくさんの動画や静止画を「HS1」にどんどん保存しておけば、ネットワーク接続したテレビやPCなどで自由に再生が可能となる。家族のそれぞれが自分の持つPCで手軽にアクセスできるし、それらをPC内で加工しようというときも、素材となるデータを気軽に活用できる。VAIOブランドの周辺機器であるためPC用のものと思われがちな機器だが、その活用範囲は明らかに「家庭用」だ。
PCとの連携はスムーズで、使い勝手は家電感覚
PCを使って、「HS1」とアクセスするのも極めて簡単だ。情報のやりとりはネットワーク経由で行うので、直接接続する必要はない。HS1への動画・静止画データのアップロードは、付属するソフトウェアの「PC Link」を使えば、自動で行える。アップロードしたいデータも、好きなフォルダを選択できる。
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PC Linkの設定画面。家庭内LANでの使用だけなら、特に難しい設定は不要。ただし、外出先からインターネット経由で「HS1」へアクセスする場合は詳細な設定が必要 |
アップロード先の設定では、既存の「VIDEO」や「MUSIC」といったフォルダのほか、好きなフォルダを自動アップロードの対象として設定できる |
「HS1」に蓄積した動画・静止画、音楽データは、付属のPC用ソフトウェア「VAIO Media」で視聴できる。これはいわゆるDLNAクライアントソフトだ。画面デザインも、家電の操作系を意識したわかりやすいもので、NASとかネットワーク接続型HDDという言葉に及び腰になりそうな一般的なPCユーザーでも、戸惑うことなく使うことができる。このソフトウェアは、Widows Vista/XPのPC用なので、VAIOユーザーではなくても使用可能。
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VAIO Mediaのメイン画面。基本的な操作は再生したコンテンツのジャンルを選択するだけ |
「ビデオを見る」を選ぶと現れるメニュー。HS1に取りこんだデータは、自動的に写真のようにジャンルで分類されているので、検索しやすい |
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動画ファイルの一覧画面。「HS1」で自動的に取りこんだだけでは、ファイル名は撮影日時を基準としたものになっているので、必要があればPC側でファイル名を変更するといい |
外出先から接続する場合の設定画面。機器のアドレスやポート番号の設定など、少々専門的な知識が必要になる |
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アクセス可能なサーバの一覧画面。新たに「HS1」を購入したときには、ここで機器登録を行う。DLNAサーバ機能を備えるBDレコーダー「BDZ-X90」も自動的にアクセス対象のサーバとして認識していることに注目 |
「HS1」に付属するソフトウェアだけでも十分快適に使用できるのだが、取材時に同時にお借りした最新のVAIO「VGN-FW70DB」には、新たなDLNAクライアントソフトが加わっていた。名称は「VAIO Media Plus」で、画面はソニー独自の家庭用デジタル機器のユーザーインタフェースである「クロスメディアバー」で、PC用アプリケーションという印象はまるでない。こちらはキーボードからの操作も可能だが、付属のAVリモコンの操作することを前提にしたもの。「VAIO Media」以上に家電感覚で使える。大きな特徴は、アクセスするサーバの選択などがすべて自動化されていること。つまり、特別な設定をすることもなく、ソフトウェアを起動するだけで自動的にアクセス可能なサーバから再生できるコンテンツを一覧表示してしまうのだ。
これは、ソニーの家電機器の持つ機能である「ソニールームリンク」を応用したもので、それなりに家庭内LANやWANからのアクセスなどの知識をある人にとっては驚くほどの機能を持つ。必要最低限の設定(「ネットワークへのアクセス:する」、「ソニールームリンク機能:利用する」の選択)をして、ルーターとLANケーブルで接続しておけば、自動でネットワーク上にある対応機器を認識、相互のコンテンツへのアクセスを可能にしてしまうものだ。家庭用機器のDLNAサーバ機能は、あらゆる対応機器とアクセスする必要があるため、最初の接続時は機器の認証のためにそれぞれのMACアドレスの登録などの作業が必要になるものだが、そうした操作がまるで不要なのだ。これは他社のDLNA対応機器に比べて、一歩進んだものと言える。いわゆる家庭内サーバのメリットはわかるし使ってはみたいが、この段落の文章の意味がまるでわからなかった人こそ、「HS1」の対象ユーザーと言ってもいい。
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音楽データの表示画面。ユニークなのは、PC内のHDDにあるデータと、「HS1」内のHDDにあるデータを区別せずに一覧表示していること。両方にある重複したデータを二重に表示しないなど、細かい部分の完成度も高い |
このように、高度なPCスキルを持たない人にとっては極めて使いやすいソフトが用意されているため、「HS1」を使うにあたって要求される知識はほとんどない。気軽に動画や静止画、音楽などのファイルを複数のPCや対応した家電で気軽に共有できる。詳しくは後述するが、「HS1」の運用においてPC(および専門的なPCの知識)は不要だと言っていいほどだ。