i.MXとSTMPの統合

そもそもi.MXシリーズがカバーする範囲は非常に広い。広義にはMultimedia Device全般ということになっており、PMP(Personal Media Player)やPND(Personal Navigation Device)、自動車向けのInfotainmentなどが含まれるわけだが、もちろん携帯電話もここに入る。実のところMXCシリーズとi.MXの違いは

  • Baseband Processor用のStarCoreやRFが統合されているか否か
  • 高集積パッケージ(RCP:Redistributed Chip Packaging)を使っているか否か

といった程度でしかない。MXCにせよi.MXにせよ、ベースはARMコアのSoCだからだ。このため、i.MXに独自のRFを組み合わせて携帯電話を作ることは当然可能である。実際前回のレポートでもちょっと触れた、富士通によるi.MX31のリファレンスボードを使ったAndroidの移植などこの最たる例だろう。ただi.MXはMXCと異なり、携帯電話に最適化されているわけではない。普通に作る分にはMXC、(商品構成上の理由などで)柔軟性が必要な場合はi.MXという棲み分けがなされているようだ。

とはいえ、PMPやPNDもネットワーク接続性が必要となりつつあるので、段々MXCとの境目があやふやになりつつある気はするのだが

話を戻すと、i.MXはMultimedia Functionが必要とされる分野に向けた製品として位置づけられている。ただ、Primary Applicationsの中に"General Embedded"なんて項目が入っていることからも判るとおり、一応PMP/PND/Infotaimentをメインにしつつも、他に利用できる用途があれば何でも、といった姿勢を見せている。

あと大きな違いはWindows CEのサポートであろうか? これが必要となると、今のところi.MXしか選択肢が残されていない。ところでネットワークカメラがIndustrialの例として、情報端末の制御がEnterpriseの例としてそれぞれ出てきているあたり、ColdFireとの境目が結構あやふやな感じではある。あるいはInfotaimentにしても、MPF2007ではPowerPCベースのMPC5121eを発表した)事を考えると、ここの境目もあまり明確ではないような。というか、Technology Labではもっと怪しい例を見かけたのだが、これについては後述

判りにくいのは、PowerPCはAutomotiveとNetwork向けと言いつつも、General Application向けの余地を残しており、またColdFireもIndustrial向けなどと言いつつ、やっぱりGeneral Usageのケースがあることだ。加えるならばさらにFlexisシリーズの8bit MCUや、(流石にこれは汎用向けとはならないが)16bitのS12シリーズがあるあたり、もう何がなんだか……といったところ。

敢えて分類分けをするならば、i.MXはLCDコントローラ+描画アクセラレータ、Audio Codecなどを搭載しており、こうした機能を必要とする汎用向け、PowerPCはより処理能力が必要とする汎用向け、ColdFireは低コストの汎用向けといったところになるのだろうか。

そのi.MXであるが、SigmaTelの買収により製品ポートフォリオがぐんと増えることになった。もっとも製品ポートフォリオというよりは、マーケットと顧客が増えたと言う方が正確なのかもしれない。

Samsung Electronics/Creative/ソニー/PhilipsなどのOEMが、SigmaTelの買収によってFreescaleの顧客リストに新たに追加されたことに

従来i.MXで獲得できなかった顧客やOEM、これに加えてアプリケーションの営業や流通チャネルなどが新たに獲得できたのは、Freescaleにとって決して小さい話ではないのだろう。実際Creativeが顧客リストに加わったのは少なからぬインパクトがあるようで、基調講演の中でも以下の画像のような形でアピールされていた。

2日目の基調講演におけるRich Beyer氏のIntroductionでのひとコマ。ちなみにこのCreative Zenは、抽選で1台が参加者にプレゼントされた

ちなみに製品展開としては、以下の左側のスライドのように考えているとの事。具体的な製品ロードマップは以下の右側のスライドに示した通りである。i.MXがFreescaleの、STMPがSigmaTelの旧製品ラインである。やはりSigmaTelの製品はMobile Consumer向けに特化しており、これは引き続き製品の販売を続けるという話であった。それだけではなく、"NextGen"と書かれた製品はi.MXとSTMPの両方が含まれており、SigmaTelが開発中だった次期製品(おそらくはSTMP3738の右にあるものだろう)も、そのまま開発を続け、発売予定との事。i.MXにSigmaTelのMixed Signal IPが投入されるJoint IPの製品は2009年以降になるだろうとの見方が示された。

Mobile Consumerの動作環境温度の幅を広げ、接続性を上げたものをAutomotive向けに、さらにそれをIndustrial向けに展開する一方、Mobile Consumerのみならず一般用途向けにも考えるという仕組み

「同じARM926ベースだから互換性がとりやすい」とは担当者の弁。どちらかと言えばSTMPは超小型(実は筆者もCreative Zenを使っているが、超小型ながら性能も良く、そのくせオーランド→成田間をぶっ続けで音楽再生させてもバッテリーが半分弱残っているという驚異の電池寿命を誇る)向け、i.MXはもうすこし大きなデバイス向け(東芝のgigabeatあたりが下限か?)といったところか。最近i.MXはARM11ベースに製品展開を広げつつあり、またFreescaleはすでにCortex-A8のライセンスを受けているあたり、i.MXはこうしたハイパフォーマンス方向に展開し、STMPはARM9ベースのまま推移といった可能性もある

最後にFTFにおけるニュースとして、FreescaleがMicrosoftのWindows Embedded Partner Programに参加した、という話が紹介された。

今まで参加していなかったことがむしろ不思議な気はする。というのは、こんな話があるほどMicrosoftとは関係があるわけだし、Windows CEについてもこんな話が以前から出ていたからだ