米Microsoftのビル・ゲイツ会長が6日、韓国を訪問した。短い滞在期間ではあったが、この間同氏は演説や会談などを精力的に行い、影響力の大きさを見せつけた。

今後到来する第2のデジタル10年

ゲイツ会長は6日、ソウル市内のホテルで行われた演説で、「Second Digital Decade」と題された、今後到来する第2のデジタル10年について演説を行った。

Microsoftのビル・ゲイツ会長

ゲイツ会長は、これまでのデジタル10年では、PCやWindows OSとともに、インターネットやWebサイトも急速に進化するなどして、ソフト、ハードともに「驚くべき発展を遂げてきた」と述べた。これを受け、次のデジタル10年で起こり得ることとしてさまざまなことを予測しているが、その中でも「コンピューティング・インタラクティブ方式」が変わることを強調した。これまでキーボードとマウスのみで入力を行っていたものが、今後はこれに加えて音声認識やペンによる直接入力、リモコンなども台頭してくるというのだ。

こうした入力方式の変化に伴い、タブレットPCも普及し、学校での教材などもこれに代わっていくと同氏は述べている。実際これに関する試験事業を世界的に推進中だということで、2011年までにはこの技術にお目にかかることができるようだ。

このほか、企業のマーケティングや製品設計、テレビ電話による会議といったビジネス分野、テレビで自分の好きな番組だけを見られるシステムなど、第2のデジタル10年で起こりえる変化をゲイツ会長は語った。

そのために現在進めている研究として紹介してくれたのが、宇宙の天体をソフトウェアを通じて観測できる「ワールドワイド宇宙望遠鏡」だ。天体の細かな部分をX-lay線などを利用して見ることができるもので、同時にインターネット検索なども可能となる。

多くの韓国企業、政府との提携

ゲイツ氏は韓国訪問後、さまざまな企業や政府関係者と会談や提携を行っている。

政府関係者としては、韓国大統領のイ・ミョンバク氏と接見している。この際ゲイツ会長は、自動車とITの連動を進める車両IT、ゲーム、教育といった3分野に関して、今後5年間で1億4,700万ドルを投資すると明らかにした。

車両ITに関しては、ヒュンダイ・キア自動車および情報通信研究進行院と、「車両IT革新センター」の設立のための覚書を締結している。同センターでは、車両ITのためのプラットフォームを共同開発するほか、同分野関連のベンチャー企業に対し、資金および施設面で支援を行うことも計画されている。

ゲーム分野では、韓国ゲーム産業振興院と共同で「グローバル・ゲーム・ハブ・センター」を設立。ここでゲーム技術者の育成を行うほか、2012年までにゲーム関連の輸出額2兆5,000億ウォン達成などを目指す。このためにMicrosoftでは、1つのゲームを、PCやIPTV、モバイルなど、多様な機器で利用できるようにするマルチプラットフォーム技術や、教育プログラムなどを提供する。

イ大統領は、こうした協力事業により関連分野の発展が見込めるのはもちろんのこと、ベンチャー企業の育成や、自動車とIT、文化事業とITといった、分野同士の融合事業の推進という意味も付与している。韓国のIT発展にMicrosoftが大きく寄与することになったことが分かる。

演説を行うMicrosoftのビル・ゲイツ会長