最近の電源のトレンドは「高品質」。各社の製品リリースを見ると、高品質を謳う機能がずらりと並ぶ。タオ エンタープライズから登場したATX電源の新製品「SILENT BLUE JAPAN」シリーズは、Topower製の電源を日本市場向けにチューンアップしたモデルとされ、日本製コンデンサ、固体コンデンサの使用、効率的なエアフローなどが特徴とされる。今回はこのSILENT BLUE JAPANを試してみた。

SILENT BLUE JAPANの製品パッケージ

SILENT BLUE JAPANはATX12V Ver.2.2準拠の電源だ。ラインナップには容量別に530Wと630Wの製品がある。容量的に見ればボリュームゾーンであるメインストリーム向けと言えるだろう。今回は630Wの製品をテストした。

今回試すSILENT BLUE JAPAN 630W。奥行きは150mmと標準的なATX電源のサイズ

結束バンドやケーブル・タイ、防振シリコンも付属

まず製品の外観から特徴を捉えていきたい。全面メッシュという背面部はエアフローを遮ることなく最大限スムーズに排熱しようという仕様だ。また、右端には+12V系のスプリット、コンバインを切り替えるスライドスイッチもある。同製品では、+12Vが2系統用意されており、2系統での使用時は20A×2、1系統にコンバインすると40A×1となる。スプリットは、例えば1系統をCPU専用に、もう1系統を他のデバイス用に、+12Vを分離し安定化を狙うといった用途で用いられる。

背面はメッシュ仕様

搭載されているファンは12cm角のもので、搭載時にはここがマザーボード側を向く。大きめなサイズのファンを低回転で動作させることで、風量を確保しつつ風切り音の抑制を図っている。先の背面メッシュパネルと合わせ、SILENT BLUE JAPANが静音電源のトレンドに沿った仕様であることがわかる。

電源内搭載のファンは12cm仕様

次はコネクタ端子側。SILENT BLUE JAPANは、本体直結ケーブルと着脱可能なEZケーブルを組み合わせた構成。直結ケーブルは、ATXメインコネクタやCPU用4ピンコネクタ、HDD/FDD用のペリフェラルコネクタ、SATA用コネクタ、PCI Express用コネクタ。これに加え12Vラインのみが結線されたケースファン等に利用するための4ピンコネクタケーブルも搭載されている。

最低限必要となるケーブルは直結式、加えて3つのEZケーブルが利用可能だ。端子は金メッキ仕様であるとされる

本体直結ケーブルのコネクタ。ケーブルはメッシュでカバーされている

ケースファン用に4ピンコネクタケーブルも搭載されている

ケーブルをチェックしていこう。CPU用コネクタはATX 4ピン(EPS 8ピンではない)である(8ピンコネクタを搭載したマザーボードにも4ピンで動作するものもある)。また、ATXメインコネクタは、24ピン/20ピのどちらにも対応できる20ピン+4ピンのジョイント式。PCI Express用コネクタもジョイント式で、6ピン+2ピンの8ピン構成だ。

ATXメインコネクタは20ピン+4ピンのジョイント式

PCI Express用コネクタは6ピン+2ピンのジョイント式

最近はEZケーブルのような着脱可能ケーブルが人気だ。不要なケーブルによってエアフローが妨げられるといったことを防ぐメリットもある。本体に同梱されるEZケーブルは、ペリフェラル用とPCI Express用で各1本ずつ。これらEZケーブルは本体側に3つ用意された黒いEZケーブル用の6ピンコネクタに接続して利用する。コネクタ形状は、ペリフェラルケーブルが4ピンとSATA用、PCI Express用ケーブルは6ピンである。2本のPCI Express用コネクタを持つことから、SLIやCrossFireといったマルチグラフィックスカード環境が構築可能なほか、1枚で8ピン+6ピンを利用するRadeon HD 2900 XT、同様に6ピン+6ピンを利用するGeForce 8800 GTX/Ultraにも対応できる。

付属のEZケーブルはペリフェラル用(4ピン/SATA)とPCI Express用

コネクタの種類と数をまとめておくと下の表のとおりになる。おおよそメインストリーム向けPCの構成では十分すぎる数である。最小構成のPCであれば本体直結ケーブルだけでも問題ないだろう。逆にHDD等のデバイスを追加するとしても7台までサポートできるほか、EZケーブルは別売オプションとしても扱われており、将来的な拡張も可能だ。

ATX 20ピン+4ピン
CPU 4ピン
PCI Express 6ピン+2ピン、6ピン(EZケーブル)
4ピン 直結3口、EZケーブル1口(計4)
FDD用 1口
SATA 直結2口、EZケーブル1口(計3)
ケースファン4ピン 4口

では内部にも目を向けてみよう。SILENT BLUE JAPANの製品特徴には、

  • 日本製コンデンサを使用
  • +5VSBに固体コンデンサを使用(※同社では固体コンデンサではなく固形コンデンサと表記)
  • パワーサイレンサー付き電源ファン
  • 80PLUS認証取得の高効率設計

といった点が挙げられている。そこでまずきょう体を開け、内部のコンデンサを確認してみた。大小いくつかの茶色い電解コンデンサは日本製。また、青い固体コンデンサも確認できた。日本製コンデンサに関しては、精度が高く、長寿命で高耐久性であるという点で、世界から評価されているのは言うまでもない。また、固体コンデンサは電解液を使わない点が特徴で液漏れが生じず、長寿命でリップルノイズも抑制されるという。なお、こうしたコンデンサでの高品質追求のほか、各出力電圧±3%以内、ダブルフォワードスイッチング回路設計、サージ電流吸収機能も搭載されているとのこと。こうした点にも目を留めておきたい。

「WARRANTY VOID REMOVED」つまりこの警告シールを破損してしまうと、製品保証が得られなくなるので注意。この警告シール下にネジがある

長寿命・高耐久性な日本製コンデンサを採用(固体コンデンサには頭部に安全弁が設けられていない)

右の方には固体コンデンサも確認できる

次はパワーサイレンサーの構造に関して。一般的にファンで吸い上げた空気は、穴のある方向に向ってどの方向にも出て行こうとする。そのため、内部では部分的に風が巻く箇所(熱溜まり)ができてしまう。パワーサイレンサーはというと、タオ エンタープライズの解説資料によれば、コネクタ側への風は抑制され、背面側により多くの風が向っている。このパワーサイレンサーの機能で熱溜まりが解消されることが、ファン回転数の抑制につながっているという。

パワーサイレンサーはスムーズに排気するための仕組みとされる

実際に動作させて動作音を確認したところ、確かに静かで、静音電源としては十分に合格するレベルだ。もう少し詳しく印象を述べると、手元にある静音電源と比べてずば抜けて静音であるというほどではないが、逆に排気圧は若干強めであるように感じた。そういうセッティングであるように思う

最後に80PLUSについて解説しておこう。これは80PLUSによる認証制度のことを指しており、電源変換効率が80%以上の製品が認証されるものだ。この電源変換効率とは、コンセントからのACがDCへと変換される際の効率である。変換時には少なからず損失が生じており、ほとんどの場合は熱損失となる。理論的にはこの効率が高ければ高いほど電源ユニット自体が省電力であることを示し、同時に発熱も抑制される。この点を試してみようとしたが、筆者手元の650W電源は調べてみれば80PLUSの認証を受けた製品だったこともあり、残念ながらあまり明確な差としては表れなかった。強いて言えばアイドル時でSILENT BLUE JAPANが72W+/-1W、比較用電源が74W+/-1Wで安定といったところ。ピーク値はワットチェッカーのタイミングの問題もありなんとも言えない。ただ、多くの製品が80PLUS認証とのみ表記してあるのに対し、SILENT BLUE JAPANは最大効率86%と明確に示してある点が特徴である。

パッケージにも80PLUSロゴが付されている

3年+1ヶ月の長期保証も高品質の表れか

電源選びというのは実は難しいものだ。容量はもちろん、静音性なども選択の基準となっている。しかし実際、予算の限られた自作の場合ではまずCPUやGPUに予算を割り振って、電源は余ったなかから容量の足りる物を……と選んでしまってはいないだろうか。PCも電気で動く機械である。だからこそ電源選びに信頼性という視点も加えたい。SILENT BLUE JAPANの品質の高さは、ここまで紹介してきたもののほかに、MTBF(平均故障時間)100,000時間という数値や、同社が付す3年+1カ月という長期保証にも表れている。こうした点をふまえながら、信頼性と価格を天秤にかけたうえで、より良い電源を選びたいものだ。