巨大な影響力誇る中国のテレビメディア

中国が「改革開放」政策の舵を切って、まもなく30年になる。過去30年の間に、中国人の可処分所得は大幅に増えた。当然、収入増に伴い、人々の娯楽も多様なものになった。だが、テレビ視聴という「伝統的な娯楽」は、依然中国人の日常生活の中で重要な位置を占めている。

これまでもしばしば語られてきたことだが、中国のメディア業界は、最も魅力的な投資先の1つだ。しかし、中国における「メディア」の特殊性から、投資者にとっては、いかに政府のメディア政策を読み取るかが重要な課題となってきた。中国で、テレビ放送はメディア産業の重要な一部であると同時に、世論誘導や為政者の権威付けという意味でも、特に重要視されているからだ。

中国においてテレビはもっとも強大な影響力をもつメディアである。統計では、国民が保有するテレビ台数は4億台強で、人口カバー率で93%を超え、しかもテレビ販売台数は毎年10%の割合で増え続けている。したがって、今後相当長期のスパンでみても、テレビ業界は中国メディア業界のトップメディアであり続けるだろう。

特にここ20年間、中国のテレビ業界は「発展と拡張の黄金期」にあった。同業界には、テレビ局がそもそも「国家機関」であるがゆえの、きわめて閉鎖的な体質がある。言い換えれば、閉鎖空間の中で法外な特殊権益を享受し得る業界であったわけである。

そうした特性があることを踏まえつつも、中国のテレビメディア業界において、一群のベンチャー企業が現れ、自らの努力と創意で、中国テレビメディア業界の現在を築き上げるのに貢献してきたことは事実だ。テレビ業界を取り巻く産業チェーンにおいても、数多くのITソリューションサプライヤーが活躍している。

本稿では、これらITソリューション企業への取材に基づき、中国のテレビ業界の現状を紹介したうえで、これら企業の経営状況や課題、将来の発展の見通しなどをレポートする。