さて、そろそろIDFの開催から1カ月が経過することだし、このあたりで残り項目をまとめてしまおう。ということで、まずはMemoryの話である。

Memory Update

まずはおなじみIntelのロードマップ(Photo01)であるが、これを見ると春のこちらと大差ない。強いて違いを述べれば、DDR3-1333の投入時期が明確にされた程度か。まぁ既にX38 Platformが公開され、製品出荷すら始まっている状況だから、これは不思議ではない。不思議なのは、DDR3-1600に関する言及がないことである。別にDDR3-1600を無視しているわけではない。消費電力の比較では当然の様にDDR3-1600は出てくるし(Photo02)、性能比較にもちゃんと出てくる(Photo03)。ましてやX38チップセットの投入にあわせ、Intel XMP(Extreme Memory Profile)という新しいStandardをつくり(Photo04)、Corsairと共同でXMP対応メモリを用意し(Photo05)、これを支えるExtreme Tuning Utilityを提供し(Photo06)、あまつさえ基調講演でそれをデモする(Photo07)という具合である。これでDDR3-1600をサポートしないとか言ったらどうかしている、と思うのが普通だ。

Photo01:まだDRDRAMが残っているのに驚き。言うまでもなくIXP2800シリーズ向けであるが、例えばIXP2805の製品ページを見ると、そのやる気の無さにちょっと驚く。折りしもIntelは全ての製品ラインをIA Architectureで置き換えるべく、来年にはまずTolapaiをこのマーケットに投入するわけで、当初はIXP2800の代替は無理にしても、2009年頃には置き換えられる可能性が高い。DRDRAMやSDRAM、DDR-SDRAMもおそらくこのあたりで消えると思われる。

Photo02:DDR→DDR2では(特にDDR-400が2.6V駆動だったこともあり)40%近い省電力性が実現できたが、DDR2→DDR3では1.8V→1.5Vでそれほど電圧に違いがないためもあってか、25%強とやや低めである。

Photo03:もっともDDR3-1333/1600はシミュレーションを元にした推定、というあたりがちょっと不思議だが。

Photo04:存在は今年のCOMPUTEXの頃から明らかにされていたXMP。要するにNVIDIAがDDR2世代向けに導入したEPPのDDR3版である。

Photo05:そのXMP対応モジュールをまず提供するのは、EPPの時同様にCorsair Memory。ここも以前はサーバー向けの高信頼性メモリとかを得意としていた筈が、いつのまにかオーバークロック向けメモリのトップブランドになりつつある。

Photo06:これまでIntelは「控えめな」オーバークロック機能を提供してきたが、ここに来て遂にOEMメーカーと同等なものを提供し始めた。

Photo07:これはPat Gelsinger氏の基調講演で示されたもの。ただこれはDDR3ではなくDDR2のPlatformっぽい。もっともX38はDDR2とDDR3の両対応となったから、X38上でDDR2をテストしている時の結果ではないかと思う。

にもかかわらず、公式にはDDR3-1333までのサポートであり、XMPはOverclocking用のHeadroomだと口を揃えるあたりは、要するにIDFの時点でX48の計画を(ある程度であっても)公に出来ない何かしらの事情があったようだ。X48に関しては、非公式に「年内」をほのめかす程度(「X48は知らないが、X38のImprovementはあると聞いている」などというベンダーの人間も居た)程度だが、1600MHz FSBとDDR3-1600を公式にサポートすると見られるチップセットで、実際にはX38の高速版(それが選別品なのか、高クロック向けに改良を施したものかは現状不明である)以上のものではなさそうだ。

では、事情とは何か? 普通に考えると、やはりOEMベンダーへの配慮だろう。いくらなんでも「1カ月後に更に高速なチップセットが出ます」とアナウンスしたら、誰もX38を買おうとは思わないだろう。X48がどの位の量が流通するか不明だが、ポジショニングを考えればエンスージャスト向けの更にハイエンドという位置づけになるだろうから、ハイエンド向けは引き続きX38が担う事になるわけで、やはりちゃんとX38のラウンチが済むまでは緘口令を敷くということにした、というあたりではないかと思う。