『千鳥の鬼レンチャン』が支持されてきた主な理由は、ハイレベルだからこその緊張感と、千鳥やかまいたちが笑いを誘うトークの2点だろう。放送の大半を占める「サビだけカラオケ」はその最たるところであり、カラオケ番組が乱発される中、挑戦者の緊張感とそこから解放された涙で世代を超えた感動を誘ってきた。

実際、前々回5月25日の放送では無名のアイドル・STU48・池田裕楽(池ちゃん)が4度目の挑戦で鬼レンチャン達成。祝福の声がX(Twitter)に殺到してトレンド入りしていた。「400mサバイバルレンチャン」も同様に挑戦者のハイレベルと「絶対に負けたくない」という緊張感が、数こそ少ないながらも定期放送につながっている。

そんなハイレベルと緊張感があるからこそ4人の毒気あふれるイジリが笑いを誘っていく。しかし、レベルが低ければ毒気あるイジリはイジメのように見えてしまい、緊張感に欠けるとそれを緩和させる笑いにつながりにくい。その点、「ボウリングサドンデス」での4人は毒を弱めて対応するなど、さじ加減を間違えなかった。その点はさすがだったが、『千鳥の鬼レンチャン』らしい4人の毒気あふれるイジリはプロボウラーレベルを集めなければ難しいのかもしれない。

スタッフはそんな危うさをわかっていたのか、「ボウリングサドンデス」の番組紹介欄に「キスマイ&なにわ男子参戦」と掲げていた。アイドルを2人参加させることでネット上の反響を狙ったのかもしれないが、「彼らがワンツーを飾るレベルだった」という現実は厳しい。新企画とはいえ、今後も一部のアイドルファンを狙ったキャスティングを押し出すようでは、せっかく「サビだけカラオケ」で培ったブランドや視聴者の信頼感は揺らぐのではないか。

最後に番組の今後を占うべく、これまで放送された「サビだけカラオケ」と「400mサバイバルレンチャン」以外の企画をさかのぼる形であげていこう。

すぐにでも欲しい第3・第4の企画

25年2月「メダリストレンチャン」、24年12月「4×200mリレーサバイバル」、24年9月「芸人ガマンレンチャン」、24年6月「逃走せよレンチャン」、24年2月「芸人ガマンレンチャン」、23年7月「大縄レンチャン」、23年2月「筋トレサバイバルレンチャン」、23年1月「水泳サバイバルレンチャン」「大縄レンチャン」、22年8月「出塁レンチャン」「大縄レンチャン」が放送された。

レギュラー放送化された22年5月から3年1か月が過ぎたが、「たったこれだけしかない」と言ったほうがいいのではないか。さらにこのどれも「成功した」とは言いづらいのがつらいところ。一方、以前から「『サビだけカラオケ』だけでは飽きられるのが早い」という声もあったが、ここまでは出演者とスタッフのスキルと努力によって、そんな不安を感じさせていない。

しかし、今春に2時間レギュラー化されたことで「今後の不安がない」とは言いづらいのではないか。

今春に2時間レギュラー化されてから、「サビだけカラオケ」が5回、「400mサバイバルレンチャン」が1回、そして新企画の「ボウリングサドンデス」が1回放送されている。さらに言えば「サビだけカラオケ」は4月20日・27日が2週連続、5月11日・18日・25日が3週連続放送された。今は「面白い」や「感動」が勝っているが、このペースではそれがいつまで続くのかはわからない。

理想を言えば、「サビだけカラオケ」は『千鳥のクセスゴ!』と隔週放送されていたときのように、その他の企画と交互の“2週に1回ペース”程度がいいのではないか。ただ、第2の企画「400mサバイバルレンチャン」「女子300m走サバイバルレンチャン」は挑戦者の負担などを考えると年2回程度が限界だろう。

だからこそ第3、第4の企画の重要度が増している。「サビだけカラオケ」のようなホームランは難しくても、「400mサバイバルレンチャン」に近いレベルのヒットを打てるのか。フジのバラエティ唯一の2時間レギュラー化という名誉を得たことで、制作サイドの力が試されることになったのは間違いないだろう。

今後は「ボウリングサドンデス」をブラッシュアップして第2弾を放送するのか。スパッと見切って別の企画を積極的に仕掛けていくのか。どちらを選んでも難しい道が予想されるが、「ボウリングサドンデス」はハイレベルと緊張感が生み出せず、千鳥とかまいたちの“笑える毒”という強みを生かせなかっただけに、後者のほうが近道に見えてしまう。