NTTコミュニケーションズは2015年3月から訪日外国人をターゲットにしたプリペイド自販機の設置を開始した。国内では2社目となるこの動き、外国人だけではなく日本人にもメリットのあるものになりそうだ。

プリペイドSIMが自販機で簡単に買える

2020年の東京オリンピックに向けて、訪日外国人向けのWi-Fi整備が進められようとしている。だが実は日本の外国人向け通信環境は現時点でも結構充実している。2015年の現時点でも鉄道の駅やホテル、カフェなどを中心に無料Wi-Fiは広がっている。さらには訪日外国人をターゲットにしたプリペイドSIMも家電量販店などで販売されている。

だが海外に目を向ければ、各国各都市の国際空港でプリペイドSIMが売られていることが大半だ。Wi-Fiがあれば十分、と考える渡航客は空港到着後は足早に市内へと向かうが、現地でしっかり通信したいと考える旅行者などは空港で時間を取ってプリペイドSIMを買うケースが多いのである。

とはいえ空港到着後はすぐさまSIMを購入したいものだ。そこで海外でも一部の空港にはプリペイドSIMの自販機が設置されており、行列に並ぶことなくその場でSIMを購入できる。但し設置されているのは本人認証やユーザー登録の不要な国の一部の空港だけだ。例えばロンドンのヒースロー空港では複数の事業者のプリペイドSIMを販売する自販機が設置され、空港に到着した来客が購入している姿をよく見かける。

台湾の台北・桃園空港の通信事業者カウンター。プリペイドSIMを買う客が多い

ニューヨークのJFK空港にも最近になってプリペイドSIM自販機が登場

ロンドン・ヒースロー空港のプリペイドSIM自販機。購入する客は結構多い

イギリスの大手事業者やMVNOなど各社のSIMを取り扱う

日本でも2014年4月にソネットが関西国際空港(関空)にプリペイドSIMの自販機を設置を始め、他の空港にも広げている。SIMはデータ専用ということで本人登録は後からでも行える手軽さが受け、訪日客の間で利用者は広がっているようだ。

一方今回NTTコミュニケーションズが関空とお台場に設置した自販機では音声通話も可能なSIMを販売。そのため世界初と言う自販機を使ったユーザー登録にも対応している。購入者は自販機に設置された操作パネルを使い購入したSIMの番号とパスポートをスキャン、あとはメールアドレスと電話番号を入力すれば登録が終わる。ネットを使って別途ユーザー登録する必要はなく、外国人にSIMを販売するうえで一番のネックだった登録作業が自販機だけで完結するのだ。

NTTコミュニケーションズのプリペイドSIM自販機

自販機でユーザー登録も行える

「さすが日本の自販機」を思わせる工夫

NTTコミュニケーションズの自販機で販売されるプリペイドSIMは日本らしいデザインのパッケージに入っており、外国人がお土産感覚で購入したくなるだろう。またSIMフリー端末を持っていない来訪客向けに、なんとスマートフォンやモバイルルーターも販売されている。日本は世界に名だたる自販機先進国だが、スマートフォンが自動販売機で買えるというのはそれだけでも来訪客を惹きつける、観光名所のような存在になるかもしれない。

なお現在販売されているスマートフォンなどはNTTコミュニケーションズが日本国内で販売しているものと同じもの。自販機で販売することからスペックは低いエントリーモデルだ。海外でもプリペイドスマートフォンとして販売されている製品は価格を抑えるためにやはりエントリーレベルの製品が多い。

プリペイドSIMのパッケージは来日客も欲しくなるデザイン

SIMフリースマートフォンも販売されている

だがせっかく自販機でスマートフォンを売るのなら、オプションとして着物柄や浮世絵柄などのバックカバーも別途販売してはどうだろうか?あるいは日本のアニメキャラやゆるキャラ系のカバーもあると面白いかもしれない。日本の魅力は伝統文化に加え、若い世代にはアニメやサブカルなども人気だ。自販機でSIMやスマートフォンを買わずとも、バックカバーだけを買い漁る観光客もいるかもしれない。また将来はSIMに限らずお土産などの物販を手掛けるのもよさそうだ。

日本人にもメリットがある

訪日外国人客をターゲットにした自販機だが、日本人でも日本のパスポートを使ってユーザー登録し利用可能だ。今後は自動車免許や保険証などでも登録が可能になれば、日本人向けの自販機として設置個所を広げられるだろう。

たとえばスーパーに自販機を設置すれば買物ついでにSIMとスマートフォンを買う、という客も増えるかもしれない。登録時に番号ポータビリティーにも対応するようにすれば、大手事業者を使っている人が、自販機で売られる格安SIMのMVNO事業者への乗り換えも簡単になる。MVNOとしても店舗を構えることによる人件費を抑えることができるだろう。スマートフォンの使い方がわからない客向けには、同じ自販機でハウツー本を一緒に売るのもいだろう。

また日本では間もなくSIMロック解除が義務付けられる。機種変して余った端末も各社のSIMを自由に利用できるようになる。自販機でSIMが買えれば、余剰端末用にもう1回線番号が欲しいと思い立った時にすぐに購入できるわけだ。

プリペイドSIM自販機の導入は今後他の通信事業者にも広がるかもしれないが、スマートフォンなどSIM以外の物販の拡充や、日本人利用も視野に入れた機能の追加を望みたいものである。