中国では個人商店や屋台など小規模な店舗でもモバイルペイメントが使われている。Alipay(アリペイ)とWeChat Pay(ウィーチャットペイ)は個人間でお金をやり取りするように、お店の支払いに使うことができるのだ。しかし実は個人でも簡単にお金の受け取り、つまりお店のように支払いを受けることができるのである。

個人でもQRコードを使ってWeChat Payの支払いを受けてみた

中国のモバイルペイメントの普及が一気に進んだのは導入と使い方が簡単だからだ。店舗側は支払い専用のQRコードを表示し、客側はそれを読み取り代金を入力すれば送金が完了する。たとえば中国のタクシーに乗ってWeChat Payで支払いたいと言えば、運転手は自分のスマートフォンのWeChatアカウントのQRコードを表示してくれるので、それをこちらが自分のスマートフォンで読み取ればよいのだ。

中国・アモイのタクシーに乗車。運転手のスマホのQRコードを、自分のスマホで読み取る

個人間送金のように簡単に支払いのできるWeChat Pay。ならば自分が受け取り側として使うことも出来るのではないだろうかと考えた。ちょうど2017年8月12日に東京・新橋で開催された「ガジェットフリマ 2017夏 with メイカーズフリマ出張版」(ガジェットフリマ2017夏)に筆者は出店し、普段海外取材時に各国で買い集めたモバイルグッズの不要物を放出することにしていた。そこでこのガジェットフリマでWeChat Payでの支払いを受け付けてみることにしたのだ。

ガジェットフリマ2017夏に出展。ジャーナリスト仲間のAyano*氏と同じブースで不用品を放出した

実は他のブースでもWeChat Payなどモバイルペイメントを受け付けている出店者がいらっしゃったが、どうせやるならば本物っぽくしたい、ということでQRコードを紙に印刷してそれを掲示してみることにした。なおWeChatの加入方法やマイウォレットの開通方法はネットに様々な情報があるのでここでは割愛する。QRコードは自分のマイウォレットからクイックペイ→ベンダーに支払い画面の一番下の「お金を受け取る」→QRコードが表示されるので「画像を保存」とする。ダウンロードされた画像を印刷すれば準備はOKだ。

中国の個人商店。QRコードが張り出されている。スマホで読めば決済できるのだ

ガジェットフリマの当日は、このQRコードを100円ショップで買った黒板に貼り付けて、自分のブースに設置。SNSで「現金以外にWeChat Payでも支払い可能」と宣伝も行なった。受け取りは中国元となるし、支払う側ももちろん中国元を自分のWeChat Payのアカウントに入れておく必要がある。

マイウォレットからお金を受けとるQRコードを表示し、画像をダウンロード

果たして日本でWeChat Payを使ってくれる人はいるだろうかと心配していたが、開場してから1時間ほどすると中国人の女性の方が来店。「WeChat Payが使えるの?」とQRコードを見るとすぐに気が付いたようで、「なら買います」とその場ですぐに出店物を購入してくれた。当初は1つだけ買う予定が、WeChat Payが使えるなら、ということで「他に何かないかな」と、もう1つを購入してくれた。日本円を持っていなくてもその場で買えるのは便利なのだろう。WeChat PayのQRコードを表示しておくと、中国の人の購入意欲は高まるようだ。

第一号のお客さんは中国からの方だった

その後は普通に日本人のお客さんが来てくれたが、支払い時に「WeChat Payを使ってみたい」と申し出てくれる方がちらほらと現れた。普段中国で使っているのではなく、記事などを読んで今後のためにWeChatアカウントを開設し、WeChat Payへ中国元を入金。それをテストで使ってみたかったということだった。なお出店物は日本円で値付けしていたが、フリーマーケットゆえに中国元への変換レートは適当に設定。1,000円で60元などにして支払いをしてもらった。

みなさん、初めてということでQRコードのスキャン画面をどう出すか、というところで四苦八苦されていたが、それは筆者も同じこと。最初は慣れるまで誰もが悩むところだ。マイウォレットから支払い画面を出すと思いきや、通常のチャット画面でQRコードを読み取るだけで支払いが出来るのだ。実際の流れは以下の通り。

1.商品を購入
2.WeChatを起ち上げる
3.画面右上の「+」をタップし「QRコードのスキャン」
4.印刷しているQRコードをスキャンする
5.こちらから金額を伝えるのでその額を入金
6.パスワードを入力
7.送金完了
8.こちらのWeChatにサービス通知が届く

友達を追加するように、QRコードを読み取る

支払金額を入力(口頭でお互い確認)。通貨単位は円ではなく元。続けてパスワードを入力

送金完了。記録も残る

なおQRコードは印刷しなくとも、こちらのスマートフォンの画面にQRコードを表示しておき、それをお客さんのスマートフォンで読み取っても良い。だが印刷したQRコードを表示しておけば遠目にもWeChat Payが使えることがわかる。今回中国のお客さんもそれを見たからこそ買ってくれたのだ。

実際に使ってみると、個人間送金のようにお互いが友人なる必要は無く、WeChatアカウントさえ持っていれば簡単に送金ができるのはとても簡単だ。お釣りの準備やものの受け渡しなどに時間を取られる必要もない。

筆者は実際に中国のとある町で大雨が降ってきたので売店にかけこんだところ、店先にQRコードと一緒に傘が並べられており、自分で好きなものを取ってQRを読み込み支払いを行ったことがある。この間、店員はちらりとこちらを一瞬見たものの対応は何もせず、筆者が支払った時に自分のWeChatの通知音が鳴って通知を見たあとは、また別の客の対応をしていた。来客の対応をほとんどしなくてもよいのだ。

中国・杭州のとある売店で。モバイルペイメントのおかげで店員に声をかけることすら不要だった

もちろんセキュリティー面などの課題はあるだろうが、QRコードを使ったモバイルペイメントの「低コスト」「簡便」というメリットは大きい。中国でモバイルペイメントの利用が急激に普及した背景にはいろいろな要因がある。普段自分で中国へ行ったときに支払いに利用しその利便性を実感していたが、受け取る側もやってみることで、両者にメリットがあることを今回は十二分に体感することが出来た。