ここ数年AI関連のニュースが非常に増えた。

画像生成AIが登場してから、我々画業にとってもAIは大きな関心事であり、業界内でも賛否が割れている。

私自身は「今触れるのは危険なのでクリアになるまで使用も言及も控えよう」という、いつも通りの牙を抜かれた総入れ歯狼の姿勢だが、AI全般に関しては「それを使うことにより我々の生活が便利になり豊かになれるならどんどん使っていくべきだろう」と思っている派だ。

つまり、労働や家事など、人間がやりたくないことをAIが担い、それにより発生した利益は人間が享受するという形が好ましい。

しかし現在のところ、AIが労働することによりヒトカスは職を失い餓死するという論調が多いし、確定申告や洗濯物を入れたり出したりするなど、我々が心から代わりにやってほしいと思う仕事はまだAIにやってもらえず、何故か絵や歌など、どちらかというと楽しみな部分からAIに奪われているという状態だ。

だが、人間とていきなり経費計算から覚えるわけではない。まずは「お歌」や「お絵描き」などお遊戯から学び、最終的に損益計算書などを作る奴と、永遠にお遊戯をやっている奴に成長するのである。

おそらくAIもまだ「いろいろやらせて可能性を探る段階」だろう。人間の場合いろいろやらせて「可能性がない」という結論に達することもあるが、AIには大きな可能性がある。

その可能性の一つとして注目されているのが「死者復活」である。

ザオリクを覚えたりゾンビパウダーを生成したりするAIではなく

一見AI技術とは真逆の黒魔術的発想だが、故人の生前の写真や音声データから画面内に故人のAIを生成する技術のことである。

まるで本人がしゃべっているかのような動画ができ、学習することで本人そっくりの口調で会話をすることもできるらしい。

  • 猫は長生きすると猫又になってくれるので大丈夫です

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すでに中国ではビジネス化されているらしく、最近もニュースになっていた。それによれば、約8万円で故人のAIを作成してもらえるそうだ。

会話できる遺影として、遺族の慰めになっているようでそれは結構だが、一方で「死者への冒涜である」という批判もある。

何せ本人は没しているので、その心の内は知りようがなく「死者への冒涜だ」という意見も、生者が勝手に死者の気持ちを代弁しているブーメランではあるのだが、死者が嫌がっていないとも言い切れない。

それに現生者もいつか必ず死者になる。自分が死者になった時、AI化され、思ってもないことを自分が言ったかのようにされるのは嫌だと思っている人もいるだろう。

それに元データは、生前の画像や音声などアウトプットされたものだけであり、当然だが「内面」がコピーされるわけではない。

心の内では親をメチャクチャ憎んでいた故人が、AI復活させられ、遺族の「調教」により本人の声で「パパとママのためなら死ねる」などと言わされているのはグロい。

つまりこれからは遺言に「AI化するな」と書く時代ということだ。

またはデータとなる、画像や音声を一切残さず死ぬ、という手もあるが、その結果唯一残っていた中学生時代の卒アルから、人生で一番垢ぬけてなかった時のAIが生成され、それがゆっくりボイスで喋るモンスターが錬成される恐れがある。

死後の準備は自分でやる時代なので、いっそ生前に本人が満足するAIを作っておくという手もあるが、本人に任せると「俺はこんなキモい声してない」などの注文がはいり、最終的に遺族には石原さとみや福山雅治のAIが渡されるだけになる可能性もある。

しかし「葬式」や「墓」も残された者が心の整理をつけ、手を合わせるためのものであり、故人のためではないとも言われる。

死者AIも故人がどう思うかは知らないが、今生きている人間の慰めになっているならそれでいいだろう、という意見も多い。

ウソをウソと見抜けないことが当然の時代がきてしまう

ただ、遺族が故人のAIを内輪で利用するのは良いが、美空ひばりのAIに賛否があったように、亡くなった有名人などのAIを制作し、公の場で喋らせるなどの行為が横行するのはいかがものかという声も強い。

また生成AIを見て、本人が本当にそう言った、と勘違いする人も出てきてしまうだろう。

さすがに「早いもので人生490年!」と言わされている織田信長AIを見て、本物がそう言っていると誤認する人はいないだろうが、「死者が生前残したビデオレター」と称して、AIを見せられたら信じてしまう人もいるはずだ。

そういう意味では、死者より生者の生成AIの方が危険である。

現在、ホリエモンや前澤友作などの画像を勝手に使用し「あの友作がお勧めした」と銘打つ詐欺広告が問題になっている。

そのうちAIを使用し、あたかも本当に友作が「この商品を買わない奴は来世ゾウリムシ」と言っているような詐欺動画が作られる可能性は十分にある。というか、もうあるのかもしれない。

「あの〇〇が勧めた」という、インフルエンサー広告は今も多いが、いつかその下に「※生成AI不使用」という、化学調味料不使用みたいな文言がつくようになるのかもしれない。