コロナにより一番打撃を受けた業界は何か、というと、飲食、旅行、イベントなど、人が集まったり、移動が必要だったりする業界が筆頭として挙がってくる。

当初デスゲーム業界も脱出不可なクローズドサークルに人が複数人集められる特性から大きな影響を受けると懸念されたが、そもそもコロナより確実な方法で人が減るアトラクションであり、さらに舞台を密室ではなく「無人島」などにしてソーシャルディスタンスを確保したことが功を奏し、そこまでの売上減にはならなかったようだ。

現在、飲食や旅行業界はコロナ前の勢いを徐々に取り戻しつつあるようだが、一方でコロナの間に消費者の意識が変わってしまい、集客を取り戻せない業界もあるようだ。

それが「映画館」である。

映画館は、今はもう懐かしい「三密」をほぼパーフェクトに満たした施設として、コロナ全盛期に休館を余儀なくされたところも多かった。

そして映画館やライブ、観劇など行けないことから、消費者は「配信」を利用するようになり、各社もそこに力を入れるようになったのだ。

その結果「わざわざ行かなくても配信でよくね勢」が急増したのである。

ライブなどのリアルイベント系であれば「幻覚でなければ本人がそこにいる」など、配信との違いは大きい。

だが、映画の場合、画面がでかい、音が違う、油断するとケツから床に落下するスリリングな椅子などの違いはあるが、基本的に内容は同じである。

もちろん、映画もライブと同じで、映画館で見ることに意義があるという映画ファンも多いだろう。

しかしコロナが去った後、よほど見たい映画でなければ「配信されてから見ればいい」と思ってしまったライトユーザーが映画館に戻ってこなくても不思議ではない。

その影響もあってか、TOHOシネマズがついに料金を「2,000円」にすると発表し、大きな話題となった。

コロナとそれに伴う時代変化の中、映画館という文化を維持しようと思ったら、客単価の値上げは仕方ないのではとの声がある一方で、コロナ以前にTOHO側が集客努力を怠っていたせいだという声もある。

集客努力と言っても、シネコン側はその時の新作映画を上映するだけなので、映画の内容で集客するというのも難しい。1シアターだけ永遠に『エマニエル夫人』を流すという挑戦もありかもしれないが、それはそれで文句が出そうな気がする。

ならば、客が快適に映画を見られるよう環境を整え、サービスを充実させる必要がある。

しかし、TOHOシネマズは物販や飲食などの売店の手際が悪く、「値上げをするのはこういうところをちゃんとしてからにしろ」という怒りの声も多かったようだ。

確かにシネコンの売店は「映画開始3分前で列が微動だにしていない」など、アクション映画よりスリリングな展開かつ、3時間のオシャレ映画のようにグダグダになっている場合が多いが、TOHOシネマズの売店は特に手際が悪いという声も多く、20分かけて8組もさばけていないという報告も上がっている。

先頭の客が財布の中身を全部床にぶちまけたか「ポップコーン生で」と言って譲らないなどの事故なしでこの状況なら、マニュアルがかなり死んでおり、値上げの前に改善すべきことがあるだろうと言われるのは仕方ない。

だが「あそこの売店はチュロスが秒で出る」という理由で、いつもは映画にいかない勢が来るとは限らないので、映画館が苦境であることは変わらず、今後他の映画館も値上げが来るのではと言われている。

(編集注:本稿執筆後の5月12日、TOHOシネマズに続き、東映およびグループ会社ティ・ジョイ系列映画館の鑑賞料金値上げが発表されました。応援上映の聖地・新宿バルト9など14劇場が対象です)

基本料金値上げで注目高まる割引サービス

  • 単に「餅」と言われてどっちを思い浮かべるかはかなり個人差がありそうです

また、TOHOシネマズが値上げしたことで、お得な料金割引サービスをしている映画館が集客を伸ばすのではと言われている。

ちなみに俺たちのイオンシネマでは特定のクレカを発行すると「常に映画1,000円」という破格のサービスがあるが、さらに映キチ邦子さんにお勧めなのが、イオンの株主優待のオーナーズカードである。

これを使えば映画が同行者含め1,000円なのはもちろん、カード1枚につき一つドリンクかポップコーンをもらえる優待ぶりだ。

イオンの回し者のようになっているが、我が村でイオンを敵に回すと一瞬でたいまつを持った村民に囲まれるので、隙あらばイオンに媚びを売っておきたいのだ。

他にも会員割引やWEB予約で割引などをしている映画館は多い。TOHOシネマズでも、シネマイレージカードという会員システムがあるので、諾々と2,000円払うのではなく、それを利用していった方がよいだろう。

ちなみに、2,000円になることで映画館は「2,000円払ってでも映画館で観たい」という精鋭揃いになり、上映中にスマホをいじったり、ずっと「これどーゆーこと?」と言っている女にその場でググって解説する男などの迷惑客がいなくなるのではという意見もあったが、それに対し「俺様は2,000円も払っている」という意識から傍若無人になってしまうのではという意見もあったようだ。

何かと学級会の議題に挙がりがちな映画館の環境が、2,000円になることでどう変化するかも注目が集まっている。

逆に言えば、我々のような5分でもスマホをいじれないと泡を吹いて死ぬ勢は、スマホをいじったり食ったりしても誰にも文句を言われない、むしろ誰にも止めてもらえない自宅での配信視聴を選びがちということだ。

また映画館には「トイレ問題」もある。

上映中にトイレに行くのは気が引けるし、行っている間に、ヒロインが死んで地球が爆発している可能性もある。だが、我慢していると地球の爆発より己の膀胱や肛門の爆発の方が気になって集中できない。

いつでも一時停止し、トイレで肛門を爆発させられるのも配信の大きな利点だ。

「映画館のトイレ問題」に関しては最近「餅を食うと尿意がこない」という情報が拡散され、根拠はないが「確かに大丈夫だった」という体験談も多く出ている。

もしかしたら売店で餅を売ることが映画館の客離れを防ぐ一手になるのではないか。

しかし「餅購入の列が全く進まないまま上映開始」ではやはり無意味である。