これを書いているのがちょうどオリンピック開会の翌日である、つまりちょうどではない。
もともと開会に賛否あった大会だが、直前になって「関わった奴は全員不幸になる」というホラー展開になってしまい、世界の有力選手をまとめて呪殺したいのでなければやめた方が良いのでは、という声はますます強くなっていた。
しかしいざ開会してみると、ツイッターには開会式を普通に楽しんだ人の声があふれていた。
だが、これは反対していた人が急に手の平を返したわけでも、睡蓮花の歌詞のように途中で作詞家が何者かに殺害され入れ替わったわけでもない。ただ、バッハの長尺演説に洗脳されたという説だけは否定できない。
おそらく、元からオリンピックを楽しみにしていた人はかなりいたのだろう。ただ、あまりにもそれを言い出しにくい空気だったため、蝉のように土中に潜伏していたと思われる。
それがやっと開会となり、ドラクエの音楽と共に土中から出てきたのではないだろうか。
ところで、ドラクエには「くさったしたい」というモンスターがいるのだが、どうして誰も止めなかったのだろうか。そして鳥山明に「腐った死体を描いてください」とオファーしたのか、それとも鳥山明が「くさったしたい」としか言いようがないものを描いてきたのでそうなったのか、気になるところである。
生クリームの塊「マリトッツォ」の「飛距離」
しばらく良くも悪くもオリンピックの話題は続きそうだが、最近そんな殺伐としたTLに突如生クリームの塊が現れることが増えてきた。
もうご存知の方も多いかと思うが、最近「マリトッツォ」というスイーツが静かなブームになっている。
実際、流行っているといってもタピオカに比べればかなり静かである。なぜなら我が村には全く届いていないからだ。
タピオカの時には、我が村ですら、村民の生殺与奪を掌握でおなじみのイオンに有名タピオカの店舗ができ、行列が出来ていたほどであった。
我が村に行列ができるというのは「村民の9割がそこにいる」と言っても過言ではない。それに対し「マリトッツォ」は我が村で流行っていないどころか「誰も知らない」可能性すらある。
不用意に我が村の子どもに「マリトッツォ食べた? 」などと声をかけたら、「児童に卑猥な言葉をかける中年女が出没」というLINEが保護者間に回ってしまうかもしれない。
つまり、タピオカに比べれば「飛距離がイマイチ」であり、その内我が村にも届くかもしれないが「届く前に終わる」ことも多く、逆に「我が村に届いたブームは本物」だと思っている。
そんなわけで私はこのまま「マリトッツォ」の実物を見ないまま死ぬ、もしくは「マリトッツォ」自体が先に死にそうだが、最近SNS上で良く見かけるのは事実である。
ブームとSNS、今や一心同体
「マリトッツォ」とは何かというと、簡単に言えばパン生地にクリームが挟まったシンプルなお菓子である。だがそのクリームの挟まり方が尋常ではないのだ。
イタリアのローマで古くから食べられていたもので、元は素朴な食べ物だった。おそらくどこにでもいるデブの「クリームをもっと増やせばいいのではないか?」という発想により、今の「パンがどれだけ謝っても口にクリームを詰め込まれ続ける拷問を受けている形」になったのではないかと思うが、そこは定かではない。
スイーツとしてはパン生地にクリームという極めて単純なものだが、殺してくれと懇願するパンの姿が映えるため、SNSを中心に徐々に広がりつつあるようだ。
また「何かが許容値以上の何かをぶち込まれている姿」自体が愉快なため、メンチカツに大量のポテトを挟んでみるなど、「マリトッツォ」形式で作られた創作料理を見かけることも増えてきた。
このように、もはやブームとSNSは切っても切り離せないものになっており、そのためには「映え」も不可欠なものになりつつある。また、流行りのものを食べた場合、流行りに乗った証拠としてとりあえず写真をSNSに載せてしまうものだ。
フォローしている人間が流行りに乗っているのを見ると、自分も乗らなければいけないような気がするし、乗ったらその人も写真をあげるだろうから、流行りはどんどん広がっていくのだ。
この「みんなが美味そうな物を食っているから俺も食う」というのは極めて健全なSNSの効果である。
しかし、最近は前に書いた100ワニ然り、その効果が「みんなが叩いているから俺も叩く」という不健全な方向に作用してしまっていることが多いような気がする。
どうせ「みんながやっているから」という自我のない動機で動くなら、人を叩くより、美味い物を食った方が良いのではないだろうか。
個人的に、「マリトッツォ」は美味そうなのだが「上手く食べられそうにない」という理由で躊躇してしまう。
世の中には、クレープを食えばケツからクリームを噴射させ、タピオカを飲ませればなぜかストロー差し口から液漏れする、「物を上手く食べられない人間」が存在し、そのタイプからすると「マリトッツォ」はあまりにも難易度が高く、「風呂場で全裸」以外、上手く食べられる術が思い浮かばない。
タピオカも「何かの卵みたいで気持ち悪い」と言う人がいたように、何が「映え」と感じるかは人それぞれだったりもする。