ひとり一台どころか、複数台持ち歩く人もめずらしくないほど、子どもから大人まで普及している携帯電話。通話によるコミュニケーションの道具として、完全に固定電話に取って代わった格好だ。だが、実際には、多くの家庭のリビングに、依然として固定電話は置かれている。しかも、電話が鳴ったときにすぐに受話器を取れるように、部屋の中でも一番目立つ場所に。でも、携帯電話の目覚ましい進化に対して、固定電話は旧態依然としたものが多い。消費者は、機能面、デザイン面において、現状の固定電話に満足しているのだろうか?

本棚のすきまのスペースにも収まるコンパクトさ

そこに目を付け、2009年9月にシャープから発売されたのが、インテリアホン「JD-7C1」。タッチパネル付きカラー液晶を搭載することにより「フォト電話帳」などの直感的な操作を実現し、電話機として使用しないときにはデジタルフォトフレームや時計、カレンダーとして使え、さらに、FAX受信機能までを備えながらも、シンプルなデザインとした同モデルは、新たなカテゴリーの固定電話として好意的に市場に迎え入れられた。その第二弾として、2010年4月に登場したのが、「JD-4C1」である。

カレンダー表示、キッチンタイマー表示、時計表示(すべてデモ画面)

JD-4C1は、JD-7C1で好評を博したデジタルフォトフレームとしても使えるタッチパネル付きカラー液晶と、コードレス電話機とを一体化させたモデル。本体の奥行を約2割減させるなど、さらなるコンパクト化を実現した。カラーバリエーションでは、従来の2色展開から、ホワイト、ブラウン、レッドとラインアップを拡充。インテリアの好みに合わせた選択が可能となった。また、機能面においては、従来のフォト電話帳、時計、カレンダーなどに加え、キッチンタイマーや、誕生日や記念日までの日数をカウントダウンする機能を新たに採用している。

「買い換えたい」気持ちを生むデザイン

「パソコンも携帯電話も使いこなす30代~40代のファミリー層を想定し開発しましたが、お孫さんの写真をデジタルフォトフレームで見たい、というご年配の方にも受け入れられています」と話すのは、インテリアホンの企画に携わった西宮健司さん(パーソナルソリューション事業推進本部・NB商品開発部・副参事)。

「JD-7C1」から、子機のボタンも変更している。特に、十字キーが押しやすくなった

幅広い年代に受け入れられている秘訣に、優れたユーザーインタフェースが挙げられるという。「タッチパネルによる直感的な操作を実現したことが評価されていると思います。また、画面上の操作においては、今使用するボタンのみを表示し、できるだけ二択から選べるようにするなど、複雑さをなくし、シンプルにするように心がけました」とデザインを担当した一色純さん(パーソナルソリューション事業推進本部・デザインセンター)。一色さんは、固定電話でデザイン性にフォーカスを当てた「JD-S10CL」を手がけた人物でもある。

曲線を多用した裏面。コードの処理の仕方もきれい

フォト電話帳の画面で表示される写真は、「JD-4C1ではJD-7C1より液晶が小さくなったので、画面に表示する写真を1枚減らし、間隔を調整することで写真のサイズはそのままにしました」(一色さん)。本体のコンパクト化を図りつつも、操作性はむしろ向上。また、写真の大きさを維持するなど、視認性を確保したことで、高齢の方でもストレスにならないように工夫されている。デザインとは、単なる見た目の問題だけではないのだ。

もちろん、見た目についても抜かりはない。特に、横長の本体に、子機が収まったときのプロポーションには熟慮したという。また、表面だけでなく、裏面のフォルムにも気が配られており、スクウェアでシャープな印象を与える表面とは対照的に、やわらかなウェーブを描く裏面の有機的なラインもまた美しい。

そして、もうひとつ、"角度"にはこだわったとか。一色さんは言う。「かなりの時間をかけて、タッチパネルの面の最適な角度を見つけました。一般的なデジタルフォトフレームは、垂直面に対して約18~19度傾いているんですが、JD-7C1では、デジタルフォトフレームに比べて頻繁に画面をタッチする必要があるので、21度に設定しました。

垂直面に対しての角度は25度。あえて主張しない、こだわりのポイント

さらにJD-4C1では、画面が小さくなったこと、子機と本体が一体となっていることなどを考えて、さらに寝かせて25度に決定しました。わずかな差に感じるかもしれませんが、使い勝手に大きく影響します」。

JD-4C1の発売から約5か月。「従来は、固定電話が壊れたから新しいものを買う、という必然性から購入というパターンが多かったのですが、インテリアホンの購入理由には、『デザインが気に入ったので、新しく買い替えたい』といった、もっと積極的な意見が多いです」(西宮さん)と寄せられたユーザーからの声には手ごたえを感じているそう。

携帯電話全盛の時代に間隙をぬって登場したインテリアホン。今後は、他社メーカーの参入も予想されるが、どのような市場に育っていくのか、先駆者のシャープの動きに注目していきたい。