• CO2削減の取り組みは各社ではじまっている。写真はJR東日本による環境配慮型の燃料電池バス「JR竹芝 水素シャトルバス」

    CO2削減の取り組みは各社ではじまっている。写真はJR東日本による環境配慮型の燃料電池バス「JR竹芝 水素シャトルバス」。JR東京駅(丸の内南口)と竹芝地区内を無料で循環する

リモート接続ソリューション大手のTeamViewerが、二酸化炭素排出回避(carbon emission avoidance)についてグローバルで実施した調査結果を発表した。地球温暖化の原因とされるCO2の排出量削減については、各国でさまざまな取り組みがチャレンジされているが、この調査によって、同社のリモート接続ソリューションを利用することで、二酸化炭素換算(CO2e)にして年間約37メガトンを回避できることが明らかになったという。国連のあげるSDGsの目標達成に向けて、リモート接続ソリューションが重要な役割を果たすことを証明するものだと同社はいう。

リモート接続がCO2排出量削減につながるワケ

なぜ、リモート接続がCO2排出量削減に貢献するのか。それは、業務のために移動を伴わないからだ。オンライン会議はもちろん、製造業の現場などではメンテナンスやサポート、ロボットなどの制御などを遠隔地から行うことができる。エンジニアや営業マンが現地に赴く必要がないわけだ。

37メガトンというのは、

  • 自動車1,100万台(オランダの自動車登録数を超える数)が1年間で排出する排ガス量(平均)

  • 2019年1年間にミュンヘンで排出された二酸化炭素量の2倍

  • 満席のエアバスA380型機がシンガポールとニューヨークを7,000回ノンストップで飛行した場合に排出する二酸化炭素の量

  • 35億本の木(オーストラリアの森林全体と同等の数)が1年間に吸収する二酸化炭素量

に相当すると同社はいう。ちなみに、日本での回避量は0.9メガトンだ。

浮いた費用は還元することが大事

興味深いのは、一度TeamViewerを使って会議をすると、平均13キログラムを回避できることがわかっているらしいという点だ。

これはガソリン5.5リットル分で、東京から山梨を車で走行できる量に相当する。調査では一人当たり4トンを排出回避しているそうで、これは約300回分の会議に相当することになるが、実際には、出張や外回り営業など、さまざまな活動での合算となるのでなんともいえない。いずれにしても、在宅勤務やテレワークといった移動しない、あるいは短い距離の移動で日常的なあらゆる業務をこなすことで、地球に優しくなれるということがわかる。

デジタル化は、地球に優しい。だが、そうはいっても、地球に優しくなることの経済に対する影響も考える必要がある。出張などの経済波及効果は大きい。それがごっそりなくなってしまうことで、ある種のビジネスは立ち行かなくなってしまうだろう。

今回、この調査の説明と同社の取り組みに関するオンライン記者発表会を催したTeamViewerジャパン株式会社の小宮崇博氏(ビジネス開発部長)らは、移動を回避することで浮いた費用については、従業員にきちんと還元したり、新たなビジネスのための投資として使うことで、経済に貢献することも重要だとしていた。

デジタル化が企業の生き残りを左右する

風が吹けば桶屋が儲かる的なロジックで動いていた経済が、コロナ禍の影響で潮目が変わろうとしている。インバウンドが喪失してしまっているのに近い状況が続いているのはもちろん、来訪客が激減している観光地などでは、ワーケーションなどの提案で、ビジネスの場として人を呼び戻そうともしているようだ。

インターネットサービスプロバイダー大手のビッグローブは、大分・別府温泉と組んで、実証実験の参加企業の募集を開始している。参加企業には別府ならではの体験プログラムが提供されるほか、宿泊施設のWi-Fiやネットワーク課題の解決支援にも取り組むなど、「TRY ONSEN WORKATION」プログラムとして、別府温泉体験のための宿泊費や、ヘルスチェック費用を同社が負担し、事前と事後の効果検証を行うなどのプロジェクトをスタートさせる。

デジタル化によって世の中の多くの当たり前がアップデートされる。地球に優しくしていたら、この危機を乗り切れないと思っている経営者も少なくないのだろうが、デジタル化が企業の生き残りを左右するとともに、実は地球に優しくなる方法のひとつであるということも知っておいてほしい。