鹿児島県薩摩川内市で開催された「アウト オブ キッザニア」に、KDDIが未来の災害復旧の仕事を知るプログラムを提供した。5Gの活用を想定し、こどもたちが楽しみながら、人が立ち入れない災害現場における安全・迅速な復旧作業のために、無人建機の遠隔操作をして仕事を体験するというものだ。

  • アウト オブ キッザニアで行われた、KDDIによる未来の災害復旧シミュレーション。こどもたちの後ろ姿が頼もしい

疑似5Gでショベルカーを遠隔操作

「アウト オブ キッザニア」は、東京と兵庫県にあるキッザニア施設の、いわば出前版だ。本家キッザニアがない地域にバリエーションに富んだ体験プログラムを提供するとともに、田植えや牡蠣の養殖の体験など施設の中では難しい仕事体験を提供するためにイベント的なスタイルで開催される。過去においては千葉県・柏市を皮切りにスタートし、薩摩川内市のイベントは7都市目となる。

KDDIは2018年に大林組、日本電気とともに、ホンモノの建設機械を遠隔操作によって連携させる実証試験に成功していたが、今回は、5Gという未来の電波によって遠隔操作で災害の復旧作業を体験できるようにした。災害復旧室を再現したコンソールで疑似5G通信による映像を見ながら、1,000キロ近く離れた位置にある無人ショベルカーを遠隔操作し、ジオラマで再現された土砂崩れで道路をふさいでいる岩を移動させるというものだ。

毎日7回のセッションに各回4人がチャレンジできるようにしたが、プログラムはほぼ満員御礼でANAのCA体験とともに人気のコースとなっていた。

  • 土砂が道を塞いでいて、移動基地局が入れない……というジオラマ

真剣に復旧作業を行うこどもたち

5Gで重機をリモコンといっても、重機そのものはジオラマに置かれたミニチュアだし、重機の機体ににカメラがついていないので俯瞰カメラで映された映像を見ながらのコントロールとなる。電波も5Gではなく、一般的なラジコンに使われているもので、性能としては5G電波にはとてもかなわないという。

それでも操縦する子どもたちの目は真剣だ。ジョイスティックを握る手に汗がにじむ様子が伝わってくる。シナリオとしては、災害が起こった地域に、KDDIの移動基地局が向かうものの、そこに至る道路に落石があり行く手をはばまれている。その落石を東京のコントロールセンターから5G電波を使って高精細の画像を見ながら重機をリモートコントロールし、落石を道路から排除するというものだ。リモコン操作を誤って移動基地局のトラックを倒してしまうハプニングもあったりで会場の笑いをさそっていた。

  • ショベルカーを動かすその目は真剣そのものだ

未来の世界は5Gが「当たり前」にある

キッザニアを擁するKCJグループはKDDIと資本提携し子会社となっていて、さまざまな課題を抱える地域を振興するために尽力している。

キッザニアの学びの要素としては、社会性、ホスピタリティ、行動力、協調性を育み、想像力、チャレンジ精神、自己管理、食育をかなえるという目標がある。今回の薩摩川内市でも、ミカン農家の仕事などを組み込むなどで地域と密接に連動したプログラムが組まれていた。

KDDIのパーソナル事業本部auスマートパス推進部 大野高宏氏は、“エデュテイメント”はエンタテイメントと教育の間にある存在であり、通信とライフデザインの融合をめざす同社にとってきわめて重要な要素だという。

また、5G通信は距離を超える体験をもたらすとし、今の小学生が大人になる2030年頃は、どんな世界になっているのかワクワクすると語る。東京から鹿児島の重機を動かす体験では、4Gでは解像度が低くて見づらく、遅延もあったが5Gではそれが飛躍的に改善されるという。

参加した子どもたちは、KDDIといってもピンとこないが、auといえば知っていると応える。そしてスマホのことは知っているが5Gといっても何のことだかチンプンカンプン。そういう子どもたちにとって、新しい通信テクノロジーがもたらす未来の世界は、すごいことでもなんでもなく、きっと当たり前のこととして体感され、彼らはそうでなくては通信じゃないし、そうでなければ意味がないという気持ちをもったままで大人になっていくのだろう。それが未来というものだ。

  • KDDI大野氏(つんちゃんの隣)と関係者。薩摩川内市のゆるキャラ西郷つんちゃんといっしょに

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)