三井住友カードらが展開する決済ソリューションの「stera」。中小店舗から大手まで、小売から飲食、果ては鉄道などの公共交通機関まで、幅広く利用されるようになっています。

3月下旬には、この「stera」のさらなる新戦略が発表されました。その直前にはリテール向け展示会の「リテールテック JAPAN 2024」でも今後の目指す方向性が展示されていました。

新戦略発表会とリテールテックの展示から、三井住友カードが目指す「stera」の方向性について紐解いてみました。

  • stera tap

    スマホで「stera」が使える「stera tap」

スマホも決済端末に

「stera」はこれまで、据え置きタイプの決済端末を提供してきました。2020年7月にリリースして以降、当初5年後の目標としていた端末30万台の売上を、3年10カ月で達成したそうです。買い物取扱高も18兆円弱だったのが35兆円に達したとのことで、「stera」のトランザクションが貢献したことを同社の大西幸彦社長はアピールしていました。

  • stera terminal

    「stera」のスタンダード端末「stera terminal」。店員側に大画面、客側にはコンパクトな表示画面を備える2画面端末

  • 「stera」の位置付け

    「stera」は決済端末だけではなく、決済に関する様々なサービスを含むプラットフォームとして位置づけられています

ただ、「stera terminal」はそれなりのサイズ感があり、特に小規模店にとっては過剰とも言えるスペックでした。そこでこのスタンダード端末に対してもっと簡便な端末をリリースしました。それが「stera terminal mobile」です。

  • stera terminal mobile

    ハンディ端末の「stera terminal mobile」

  • 端末モックアップ

    こちらは端末のモックアップ

  • 「リテールテック JAPAN 2024」の展示

    「リテールテック JAPAN 2024」では、ケース内にデモ画面を表示した端末を展示していました

この「stera terminal mobile」は、据え置きのスタンダード端末「stera terminal」に対して、ハンディ型の、飲食店ならテーブル会計で使うと便利そうな端末です。欧米ではこうしたハンディ端末が一般的ですが、クレジットカードから電子マネー、QRコード決済までフルスペックで対応するので、これ一台でまかなってもいいですし、スタンダード端末の予備やサブとして使ってもよさそうです。

スタンダードと同様にAndroid OSを採用しており、アプリの拡張も可能。基本的にはスタンダードの小型版と考えられそうです。

さらに小規模な個人店クラスでもカバーできるように提供するのが「stera tap」です。これはマレーシアのSoft Spaceが提供する技術を採用したもので、Androidスマホを決済端末として使うというものです。

  • stera tap

    アプリをインストールするだけでAndroid端末を決済端末として利用できる「stera tap」

  • 「リテールテック JAPAN 2024」の「stera tap」の展示

    スマホでもタブレットでも、どちらも使えるようです(「リテールテック JAPAN 2024」での展示より)

「stera」に参加するGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)もSoft Spaceの技術を使ったサービスを用意していましたが、今回「stera」プラットフォーム向けにサービスが提供されることになりました。

一部クレジットカードのタッチ決済しか対応できないという点が課題ですが、クレジットカード自体が、とくに個店におけるQRコード決済に対して、「後塵を拝している」(大西社長)という危機感があるそうです。これに対して、「stera tap」ではAndroidスマホさえあればクレジットカードのタッチ決済に対応できるため、今まで躊躇していた個店にもクレジットカード導入を進めたい考えです。

他社の取り組みとしては、例えばフライトソリューションズが同様にAndroid端末をタッチ決済対応にする独自の「Tapion」サービスを提供しています。こちらは交通系ICやiDにも対応していて(QUICPayはパイロット運用)、より幅広い決済手段をサポートします。

そのため「stera tap」の機能自体の優位性はそれほどではないのですが、QRコード決済のMPM方式(店が掲示したQRコードを客が読み込む)だけに対応していた店舗でもクレジットカードを導入しやすくなる選択肢が増えた形です。これに関しては三井住友カード側にも、VisaとMastercardだけでなくJCBや電子マネーにも対応するぐらいの気概を見せてほしいところではあります。

この「stera tap」の他のメリットとして、2.70%という決済手数料があります。これがPayPayだと決済手数料は1.98%(PayPayマイストアライトプラン未加入時)なので、それよりはまだ高い料率ですが、クレジットカードとしては抑えられています。さらに今年度中には「さらにもう一個踏み込んで、中小事業者向けの手数料率を引き下げる方向で考えたい」と大西社長。この料率次第では大きな動きになる可能性はあります。

「stera」は、小規模店向けの端末と決済手数料の2つを軸に小規模店に向けた施策を充実させ、店の規模を問わない「stera」の利用拡大を目指す戦略です。

さらに、新端末として「stera terminal unit」も投入します。これはどちらかというと組み込み向けという印象ですが、既存のPOSレジがあり、それに加えて別途「stera」を利用したいというニーズにも応えられます。

  • stera terminal unit

    「stera terminal unit」。既存POSレジに接続したり、キオスク端末に組み込んだり、複数の用途が想定されています

  • 「stera terminal unit」の展示

    こちらもデモ画面を表示してケース内展示されていました

こうした取り組みに加えて、「リテールテック JAPAN 2024」や新戦略発表会では様々なサービスの拡大も提案されていました。

例えば「カート型POSショピル」。これはスーパーなどでカートに商品を入れる際にスマホでバーコード読み取りを行い、最終的にその商品を購入するというものですが、買い物客のスマホを使うスマホレジとは異なり、「stera terminal mobile」や「stera tap」を使います。

  • カート型POSショピル

    ショッピングカートに端末を設置して商品を読み取りながらカゴに入れていくスマートカートは、イオンの「レジゴー」などいくつかあります。買い物客のスマホを使うタイプに対して、専用端末を使うのがこのカート型POSです

「カート型POSショピル」のポイントは、カゴに入れたあと、そのまま決済ができるという点。アプリの作り方次第ですが、「stera terminal mobile」であれば幅広い決済手段に、「stera tap」であればクレジットカードのタッチ決済でそのまま支払いができます。「stera tap」を利用する場合も、買い物客のスマホを使うわけではなく、店舗側がスマホを用意します。そのため客側で「あらかじめスマホにアプリをダウンロードして決済手段を登録する」という事前準備が不要な点が強み。「リテールテック JAPAN 2024」のデモではバーコードを読み込んだ商品に対して、お勧めの商品を提案するといった機能も盛り込まれていました。

  • 購入商品に対してお勧めを提案する機能のデモ

    購入商品に対してお勧めを提案する機能も備えていました。「リテールテック JAPAN 2024」のデモより

スーパーの有人レジは人手(賃金)不足もあって新規採用が難しくなっているそうで、こういったレジの効率化/DX化が求められています。そうしたニーズに応えるものとしてサービスを展開したい考えです。

同様の取り組みには、イオンリテールが先に名前を挙げた「レジゴー」を展開しており、今回の「リテールテック JAPAN 2024」では同社が初出展して紹介していました。ただし「レジゴー」は決済端末ではないので、最終的な決済が行えません。そういった点が「カート型POSショピル」の優位点となります。

  • 「リテールテック JAPAN」の「レジゴー」の展示

    「リテールテック JAPAN」に初出展となるイオンは「レジゴー」を展示していました。イオン各店ですでに実用化されています

こうしたスマホレジの共通の課題が窃盗対策。要は万引き対策ですが、万引きの手口には「いったん読み込んだ上でキャンセルしてそのままカゴに入れっぱなしにする」というものもあるそうです。これに関しては、端末に退店QRコードを表示して店員が読み取るとキャンセル数が表示され、カゴの中身と照合できる……といった工夫を盛り込んでいるそうです。

もう1つ、「オフィスグリコ」のようにオフィスでお菓子などを販売するシステムをキャッシュレス化するソリューションも用意。24時間稼働する工場などで軽食やお菓子を販売したいなどといったニーズがあり、気軽にキャッシュレスで購入できるソリューションを開発したそうです。

  • 無人販売ソリューションの展示

    オフィスグリコライクな無人販売ソリューション。QRコードを読み込み、Webサイト経由で商品を選択

  • オンライン決済で幅広い決済手段に対応できる

    支払いはオンライン決済になるので幅広い決済手段に対応できます

このソリューションを利用する場合、オフィスの一角にお菓子や軽食を並べ、QRコードを掲示しておきます。購入する従業員がQRコードを読み込むとブラウザで販売サイトに飛ぶので、商品を選んで支払いを行い、あとはその商品を持ち帰る……という形になります。小銭を料金箱に入れてそのまま持ち出すという方法の手軽さには勝てませんが、現金がなくても買える点、会社側も管理がしやすい点などがメリットです。オフィスグリコとは異なり、商品の管理は自ら行わなければならないので、このあたりはニーズに応じて選択できるという感じでしょうか。

工場なら夜食用にカップラーメンや軽食を多めに、オフィスならお菓子を中心に、といった自由な選択できるわけです。オンライン決済に対応していれば多くの決済手段が選択できるというのもメリットでしょう。「リテールテック」では「恐らく春には提供できる」とのことでしたので、間もなくの提供開始となりそうです。

このソリューションではシステム利用料と決済手数料が収益源となりますが、「システム利用料はだいぶ安くできるのではないか」というコメントもありました。基本的には性善説にもとづいた仕組みではあります。

そしてこの仕組みを応用したのが、店頭のオーダーキオスク端末です。食堂やレストランを想定したソリューションで、注文自体は通常のキオスク端末と同様に進めていき、注文を確定するとQRコードが表示されるので、それをQRコードで読み込んで利用者のスマホで決済をするというものになります。

  • キオスク端末を利用するソリューション

    キオスク端末と組み合わせて店頭のオーダーが可能に

  • 支払い画面

    画面に表示されるQRコードを読み取り、同様にオンライン決済で支払いを行います

  • フードコートでの展開

    フードコートのモバイルオーダー的な使い方もできるとしています

決済の仕組み自体は同じソリューションで、利用者側にどのような端末で見せるかは店舗次第。タブレット端末やスマホでも同じことをできるという点がメリットです。決済が終わると受付番号が発行され、厨房などへの注文の通知もできますし、料理の完成を知らせる呼び出しディスプレイに受付番号を表示するといった使い方もできるそうです。

こうしたソリューションに加えて、前述の組み込み利用も可能な「stera terminal unit」も加えれば、「stera」をほとんどの業務業態で利用可能になりそうです。

  • 「stera terminal unit」を組み込み端末として使った例

    「stera terminal unit」を組み込み端末として使った例

こうした取り組みを実現するためにソリューションとして「stera smart one」サービスも用意。決済端末を含む決済システムや導入に必要な機能を提供するというものです。

  • 「stera smart one」の概要1

    これまで複数のサービスを利用するには個別に契約、開発が必要で、複雑な設計が必要になっていました

  • 「stera smart one」の概要2

    これを「stera」のプラットフォームによってオールインワンで提供するのが「stera smart one」です

「オフィス内で軽食を無人販売したい」「店頭のオーダーキオスク端末を導入したい」「ショッピングカートで決済までできるスマホレジを導入したい」などといったニーズに対して、それに応える「stera」を含めたソリューションを提供するというのが「stera smart one」です。

  • 「stera smart one」のユースケース

    想定されているユースケースとしては、モバイルオーダーやキオスク端末、無人販売、コインランドリーや駐車場での組み込み利用などが挙げられています

この全方位戦略が「stera」です。大西社長は「2030年までに『stera』端末100万台を達成したい」と目標を掲げます。そのうち、中小事業者では50万台の導入を目指す考えで、大手一辺倒ではなく「stera」を広げたい考えです。

大手チェーンに導入されれば多くの店舗に導入されることになりますし、大規模店だと1店に導入される複数の端末が導入されることになります。それに対して、中小事業者では1事業者で1台というケースもあるので、中小事業者をターゲットに50万台というのはなかなか大きな目標です。日本のキャッシュレス比率がいよいよ40%に達しようというなか、中小事業者のキャッシュレス対応をさらに加速させることができるのか。同社の取り組みに注目です。

  • 三井住友カードの大西幸彦社長

    三井住友カードの大西幸彦社長