続いて「モテない」と嘆くチズルのためにモテ服を買いに行くと、由日子と園美はフェミニンな服を試着した彼女に「だまされて芸能界にデビューした子みたい」「わかる。すぐAVに流れそう」などと毒を放った。さらに由日子はそんなチズルに「女の子らしくってお似合いですよ」と言った店員に疑いの目を向け、宇宙人を脅して特殊能力で本音を語らせる。

店員はチズルに「超頭悪そうっすよね。『さっさとやって、さっさと捨てて』みたいな」「似合うよ。頭からっぽそうなてめえにはよお、これ以上なくお似合いだよ。これぞ『やり逃げしてください』ってファッションだよ」「いい年こいて『女の子』とか言ってんじゃねえよ。んなこと言ってるからやり逃げされんだよ」などと本音という体での毒を連発。

さらに、「ここまで言われたら逆に買う」と意地になったチズルに「いいねえ。その気合はなかなかじゃん。バカにされるリスク背負っても好きな服なら着るべきだ。わかったか」とまくしたててオチをつけた。

毎回のテーマは、好みのタイプ、合コン、デート、プロポーズなどの恋愛観から、出産、夫婦生活、仕事、料理などまで幅広いが、宇宙人の特殊能力によって彼女たちを取り巻く現実の厳しさや情けなさが浮き彫りにされていく。いずれも言葉は汚いし、ゲスで品がない姿も目立つなど、どう見ても子どもに見せられないレベルの作品だろう。しかし、それがきれいごとに収めがちな地上波ゴールデン・プライム帯のドラマでは得られない楽しさと共感につながっていた。

メインは「女性が男性の前では決して見せない本音をさらけ出す」というシーンだが、その逆もしかり。男性が女性の前では決して見せない本音が語られるシーンも多く、だからこそ宇宙人は「地球人は野蛮な下等生物」と言い切ることもあった。

興味深いのは、単に汚い言葉を並べているだけでなく、よく聞くと考えられた言葉遊びというニュアンスがあること。『ラブラブエイリアン』は「1話・24分間で2or3話を放送する」という短尺の作品だけに、核心への最短距離を狙うようなフレーズ選びの巧みさが感じられた。バラエティの『上田と女が吠える夜』で見せる女性タレントたちのエピソードトークも見事だが、キレとインパクト、瞬発力と痛快さでは当作が上回っているのではないか。

放送当時、知る人ぞ知る沼ドラマとなり、特に女性層から熱い支持を得たのは、そんな大胆かつ緻密な会話劇がウケたからだろう。

  • 『ラブラブエイリアン2』(C)岡村星/日本文芸社・フジテレビ

モデル女優4人の強烈なギャップ

そして女性層の熱い支持を得たもう1つの理由は、メイン4人のキャスティング。

当時、連ドラ初主演となった新木優子は『non-no』モデルかつゼクシィ8代目CMガールを務めたばかりで、森絵梨佳は雑誌・CMに引っ張りダコのほか「女性のなりたい顔No.1」に選出され、太田莉菜はモデルとしてファッション誌を渡り歩くほか『ホットロード』『海月姫』『テラフォーマーズ』などの映画話題作に出演、久松郁実は『CanCam』専属モデルのほかバラエティやグラビアでも活躍していた。

「ビジュアルのタイプが異なるモデル兼女優の4人が集結し、ふだんのイメージとは真逆の赤裸々な姿と毒を放つ」というギャップは強烈。園美は恋人が海外赴任中で寂しいフードコーディネーター、由日子は破壊力抜群の毒舌を持つ美容師、サツキは家事ができず酒好きでだらしない検事、チズルは合コン好きな歯科衛生士と、「性格や職業などがバラバラ」という絶妙なバランスで構成されていた。

絶妙と言えば、前述したファンタジーの設定も、宇宙人の造形も同様。原作漫画をリスペクトした制作サイドの脚本・演出が随所で光っていた。この4人で結成された“ラブラブシスターズ”のオープニング曲「あなたはエイリアン?」も脱力感であふれ、こうしたディテールにも全力投球したことが続編『ラブラブエイリアン2』につながったのかもしれない。

日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。