1995年に女優デビューし、今年30周年の節目を迎えた酒井美紀。現在、東京・TBS赤坂ACTシアターでロングラン上演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハーマイオニー・グレンジャー役を演じている酒井にインタビューし、自身の転機を振り返るとともに、仕事に対する思いを語ってもらった。
酒井は「もう30年も経っちゃったの? という感覚です。早かったです」と心境を述べ、「この仕事から離れたいと思ったことは一度もないです。演じることが好きで、ずっとやりたいという気持ちです」と演技への熱い情熱を語る。
続けて、年齢を重ねるにつれて舞台への愛着が深まっていると明かす。
「映像はシーンごとに撮りますが、舞台は最初から最後まで通しで演じ、長い期間、役に没頭しているという時間は、仕事でありながらとても楽しい時間です。すごく悩むし、どうしていいかわからないようなスランプ的なことが、どの作品もだいたい1回は起こりますが、それを突破していく感じも好きで、やっぱり私は演劇が好きだなって思います」
本番を重ねる中でアイデアが生まれることもあるそうで、どんどんアップデートしていく作業も好きだと語る。
「本番が始まってからも考え続け、何かアイデアが出てきたらそれを次に反映させて。特に『ハリー・ポッター』の舞台はロングランなので、常にアップデートしないといけない部分があり、それぞれの役者がずっと考えながら向き合っています」
キャリアの中で大きな転機となったのが、25~26歳の頃に経験したアメリカ留学だった。
留学以前の自身について、「お芝居を始めて10年くらい経っていましたが、全然自信がなくて、役に対してこうしてみたいという思いがあっても、演出家に何か言われるかなとか考えしまって、不安や怖いという感情が強かったので、小さく収まってしまっていました」と振り返る。
そして、留学先で参加した演劇ワークショップで、外国の演出家の姿勢に衝撃を受けたという。
「外国の演出家は、役者がやったことに対して、まず『イエス』なんです。日本の方が『ノー』と言うわけではないですが、外国の方は一度全部受け入れて、『いいね』と言ってくれた上で、『これ足してみたら?』と提案してくれる。そのディスカッションがとても楽しくて、自分の意見を言っていいんだなと思えました」
その経験が、自分自身を表現する勇気につながったと語る。
「以前は引っ込み思案で小さく収まっていたのが、殻を破って自分を出せるように。アメリカという誰も自分を知らない環境で、失敗してもいいやという感じで繰り返しチャレンジする時間を持てたことが大きかったと思います」
留学後も経験を重ね、「自分のアイデアをより出せるようになってきました」と言うも、「まだまだです」と成長意欲がとても強い。「舞台は特に刺激が多く、それぞれの役者さんの役との向き合い方なども同時に見ることができるので、私も頑張ろうと思うんです」と目を輝かせた。