映画『花まんま』が、きょう25日に公開となった。同作は朱川湊人氏により、第133回直木賞を受賞した同名短編の実写化作。ある兄妹の不思議な体験を描いた物語で、表題の「花まんま」とは、子どものままごと遊びで作った“花のお弁当”を意味し、大切な人へ贈り届けるキーアイテムとなる。
今回、同作で加藤フミ子役を演じた有村架純にインタビュー。フミ子の熱血漢な兄(兄やん)・加藤俊樹役を演じた鈴木亮平の印象や、幼い頃から自分の中に他人の記憶があるフミ子という役どころをどのように捉えていたのかなどについて話を聞いた。
フミ子という人物に抱いた印象
――本日はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございます。最初に、脚本を読んだときの感想から教えていただけますか。
久しぶりにこういったヒューマンストーリーに出会ったなという感覚がありました。クスッと笑うこともできて、『花まんま』だから描ける世界観というのでしょうか。カラスと話せる太郎さん(※)のような人が登場したり、ファンタジー要素もあるのですが、なんの引っかかりもない。『花まんま』という世界観が完成されていたのがすごく印象的でした。
※フミ子の婚約者で、動物行動学の助教・中沢太郎(鈴鹿央士)は、カラスの研究に没頭するあまり、カラスと会話できるようになった。
――キャストコメントで、酒向芳さんが「これほど涙を流した本はこれまでにあったかな? →記憶を辿ってもなかった」、キムラ緑子さんが「泣き過ぎでは? と思うくらい泣きました(笑)」とおっしゃっているのを読んで、そんなに泣く映画ってどんなものだろうと思いながら、試写会に伺ったんです。
はい。
――もう大号泣でした。隣で観ていた男性の方もめちゃめちゃ泣いてて、全く面識はないけど、心の中で「これは泣いちゃいますよね……」と語りかけていました。
うふふ(笑)。
――自分には兄妹がいないので、共感の涙ではきっとなくて。それなのに、あんなにも泣けたのは、フミ子の強さに胸を打たれたところもあるのかなと。冷静に考えると、別の人の記憶があるってすごく怖いことだけど、フミ子はそれを受け入れているのがすごいなと思いました。
フミ子は幼い頃から、喜代美さんの記憶があるのは当たり前のことだと思って生きてきて、たぶん、この先もずっとその記憶と一緒に生きていくんだろうなということも想定した上で、生活を送ってて。なので、喜代美さんの存在に対する恐怖みたいなものも、あまり感じなかった。そこがフミ子のすごいところだなって。脚本を読みながら、何が起きても動じない強さを感じましたし、弱いところが1ミリも見えなかったので、強い意志を持って人生を歩んできたということが想像できるキャラクターだなと思っていました。
――強い意志を持っているからだと思うのですが、フミ子は何か思うことがあっても、スッと心の中にしまい込んでいるというか、胸の内をあまり言葉にしない人だなと。表情で語るシーンも大変印象的でした。
兄やんを思うことだったり、繁田家を思うことだったり、太郎さんを思うことだったり。きちんと組み立ててやらないと、さらっとしちゃうというか。それはちょっと怖かったので、特に雑にならないように意識していました。
好きな登場人物は?
――兄やん、フミ子はもちろん、登場人物それぞれの個性が光っていて、全員が魅力的でしたが、有村さんは誰がお好きでしたか?
私は太郎さんですかね。鈴鹿くん自身もすごく柔らかくて、トゲのない丸い人なんですけど、太郎さんもまさにそういうキャラクターで。でも、つかみどころがなくて。とても純度の高いキャラクターで、ある意味ではちょっと変な人でもあるんですけど(笑)。
――カラスと会話できますし(笑)。
はい(笑)。そういうちょっと個性的な感覚で、自分の世界観の中で生きているのが、とても魅力的だなと思います。