WHIMの性質と起源の解明は、天体物理学における残された謎の1つとなっている。遠方宇宙(過去の宇宙)において、銀河間ガスが加熱され、WHIMへと変化し出した領域を垣間見ることができれば、低温の銀河間ガスから現在の宇宙のような沸騰した銀河間ガスへと変化するメカニズムを明らかにできる可能性があるという。

銀河間ガスが沸騰するメカニズムにはいくつかの可能性があるが、研究チームでは、(1)重力崩壊の際に互いにガスが衝突して加熱される、もしくは(2)原始銀河団内の大質量ブラックホールから巨大な電波ジェットがエネルギーを送り込んでいる、の2点のどちらかではないかと考えているとした。

また、今回のCOSTCO-Iのような天体の発見は、原始銀河団の進化を解明する上でも大きな意義があるとする。これまで、原始銀河団の探索は、銀河かガスが豊富に存在する場所を指標として行われてきたが、同原始銀河団はこうした既存の手法では発見できない天体ということになる。

すばる望遠鏡の"新兵器"として、Kavli IPMUの天文学者も開発に大きく関わる「超広視野多天体分光器」(PFS)を用いたサーベイによって、同原始銀河団のような天体がさらに見つかれば、そうした天体の進化の統計的な解明にもつながることが期待されるとする。

銀河間ガスは、銀河における星形成の材料を供給するガスの貯蔵庫といえるが、高温ガスと低温ガスでは、銀河への流入のしやすさが異なる。遠方宇宙において、WHIMの成長を直接研究することができれば、銀河の形成・進化を維持するガスのライフサイクルについて、首尾一貫した描像を得られるようになるだろうとした。

また、すばる望遠鏡で開発中のPFSでの観測であれば、今回の研究の40倍以上もの大きさの領域の観測可能となる。それが実現できれば、何百もの原始銀河団におけるガスの性質が明らかとなるだろうとしている。