ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンは、メディア向けの記者会見にて今後の日本における紙巻きたばこと加熱式たばこの戦略を紹介。加熱式たばこは健康に対する影響が紙巻きたばこより低いとして、積極的に移行を促していきます。たとえば、加熱式たばこ「glo」製品のラインナップ拡充、紙巻きたばこの人気ブランド「ラッキー・ストライク」のglo向けスティックなど、各種施策を展開してシェア拡大を目指します。
同社は、紙巻きたばこと非燃焼性たばこのラインナップでたばこ事業を展開していますが、ビジョンとして「より良い明日」を掲げ、事業全体での健康影響の低減に取り組んでいます。そのため、リスク軽減商品として位置づける非燃焼性たばこを強化していく戦略です。目標としては、グローバルで2025年に非燃焼性たばこの売り上げを50億ポンドに、2030年には非燃焼性たばこユーザーを5,000万人まで拡大することを目指しています。
「非燃焼性たばこ」とは火を使わないたばこ製品のこと。加熱式たばこの「glo」が代表格ですが、海外では電子たばこのベイパーが一般的で、さらに歯茎と唇の裏の間にニコチン入りパウチを挟んで摂取するオーラルたばこ製品「VELO」も国内で販売しています。
これらの非燃焼性たばこは、たばこ葉の燃焼時に発生するタールなどの有害性物質が発生せず、健康影響が低い――というのが同社の主張。紙巻きたばこで発生する有害性物質を100とした場合、非燃焼性たばこは10%以下となり、それだけ健康影響が低くなるとしています。なお、常習性のあるニコチンは含まれるため、影響はゼロではなく、現在もさまざまな研究による影響評価が行われています。
その中でブリティッシュ・アメリカン・タバコも、英国で500人の喫煙者に対して1年間にわたる影響調査研究を実施。6カ月分の結果が出ており、非燃焼性たばこに切り替えた人は、禁煙した人と同様の健康被害の低減が見られた――としています。
こうした研究結果を背景に、グローバルで非燃焼性たばこへの移行を強化していく方針ですが、日本は加熱式たばこの普及が進んでおり、グループ全体におけるgloの売り上げで約60%を日本が占めるという重要市場。グローバルでも加熱式たばこの売り上げが伸びているため、日本の売上比率は下がっているものの、それでも日本での売り上げ自体は伸びています。これをさらに強化して、グローバル戦略をリードしていく考えです。
日本のたばこ市場全体で見ても、2025年には紙巻きたばこ比率が半分を割り込み、非燃焼性たばこがシェア50%以上を確保すると予測。gloなどの製品強化によって、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンのシェア拡大を図っていくとしています。
9月20日には、日本のgloユーザーは300万人を突破。たばこ製品全体におけるシェアでだと6~7%程度ですが、紙巻きたばこからの移行をためらう人の課題を解決することで、移行を促します。
紙巻きたばこから移行しない理由としては、「デバイスの価格が高い」「満足感が足りない」「においが好きではない」などといった声が寄せられているそうです。
たとえばgloデバイスとしては、2016年の発売以来改良を重ね、新たな誘導加熱技術を導入したり、より高温での加熱を行ったりと、満足感が得られるように進化してきました。たばこスティックでも、太いものと細いものを選べるようにして、さらに紙巻きたばこ以上のバリエーションを投入して幅広い味のニーズに応えられるようにしています。
近年では戦略的にデバイスの価格を下げて、値段によって移行をためらっている人にも手に取ってもらえるようにしています。「グロー・ハイパー・プラス」は980円という価格で、たばこスティックの値段も紙巻きたばこより若干ですが安く、価格面でのハードルはかなり下がりました。
そうした中で新たに発売するのが、ラッキー・ストライクブランドのたばこスティック。「リッチ」と「ダーク」という2つの味わい用意します。ラッキー・ストライクのファンはメンソールを求めていないという判断で、レギュラーの味わいを2種類にしました。
紙巻きのラッキー・ストライクが好きなので加熱式たばこには移行しないという人に向けて、まずは手軽に試せるように、1箱12本入りで290円という価格を設定。現在は財務省への認可申請中ですが、承認されれば11月8日から販売を開始する予定です。デバイスと合わせても1,300円ほどで加熱式たばこが試せるという点をアピールします。
逆にメンソールを好む人に向けては、スティック内にジェル状のメンソールを挿入した「ジェルテクノロジー」によって、よりメンソール感を増やした「neo ワイド・メンソール」を用意。540円で10月18日から発売です。
9月から発売している新デバイス「グロー・プロ・スリム」は、細身のgloたばこスティックを利用する加熱式たばこ。デバイスの厚みが約1.6mmという薄さが特徴です。現行のgloデバイスは4種類で、豊富なラインナップと高いコストパフォーマンスでユーザーの移行を促進していきます。
オーラルたばこのVELOは、2020年に福岡県で試験販売を行い、現在は全国展開中。利用者からは、満足感の高さやにおい、煙などが出ない、ガム感覚で口に入れられるといった点で評価が高く、この半年ほどで販売数が2倍に増えているそうです。
もともと15個のニコチン入りパウチが入ったパッケージですが、これを5個にしながら100円という価格にした新パッケージも販売開始。こちらも認可申請中ですが、まずは試してもらうことで、紙巻きたばこからのゆるやかな移行も狙っていきます。
加熱式たばこで国内シェアトップはIQOSですが、新製品の「IQOS ILUMA」ではデバイスの価格が上がりました。ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンはそれに対抗する形でデバイスを安くし、たばこスティックの値段も下げることで、紙巻きからの移行を促して加熱式たばこのシェア拡大を目指していきます。なお、紙巻きたばこ自体について国内での販売を終了する計画はないものの、新規開発は最小限で「大幅に数は減る」(山中氏)としています。