米Amazonは9月28日(米国時間)、オンラインで発表会を開催し、同社初のロボット「Astro」や壁掛け可能な「Echo Show 15」など、多彩な製品・サービスを披露しました。現時点で、日本ではEcho Show 15のみ発売予定で、他の製品は発売未定となっています。バラエティに富んだ内容でしたが、ここでは筆者が注目した上位3つの発表を中心に紹介します。

  • さまざまな製品・サービスが紹介されたAmazonの発表会

第1位 走り回って踊って見守る家庭用ロボット「Astro」

注目度ナンバー1は、何といっても「Astro」です。発表会の最後に登場し、それまでの発表全部を蹴散らす勢いだったこのロボット。2つの大きな車輪(後輪にも1つの車輪)を備え、顔となる部分にディスプレイを搭載した愛嬌のあるボディ。画面には両目を模したイラストが表示され、表情を作ってくれます。

  • 自律走行する家庭用見守りロボット「Astro」

  • ウインクや笑顔など、目のイラストで表情も多彩

Astroは室内を縦横無尽に自律走行可能です。ニューラルネットワークを活用したディープラーニングによって室内をマッピングしており、「SLAM(Simultaneous localization and mapping)」と呼ばれるアルゴリズムによって自分の位置を把握し、人や動物の移動など、常に変化する室内でも自律走行を可能にしているそうです。

  • 室内をマッピングして認識

  • 障害物を避けながら縦横無尽に走行する

障害物を避けて走行し、階段から落ちることもありません。人や動物の不規則な動きでも認識して急停止したり、特定の人を認識して追従し、リマインダーを表示したり電話をかけたりすることも可能。背中には缶ホルダーも備え、指定の人に届ける、といった動作もできるそうです。

  • 人を避けたり追尾したり、自律的に走行

  • ビデオ通話など、Alexaの機能もサポート

これらはAstro上で処理されるそうで、それによって素早い処理が可能になっています。家の中の形状を認識したあとは、指定したエリアを進入禁止にすることもできますし、手動でマイクやカメラをオフにしてプライバシーを保護することもできます。

カメラは頭頂部にあり、文字通りの潜望鏡型で物理的にせり出してきます。これによって障害物を避けての撮影が可能です。カメラによって外出時に室内を監視することもできます。Astro自身は、設定すれば外出中に室内を見守り続け、認識できない人物を発見したり、ガラスの割れる音などを認識したりするとアラートを通知する、といったこともしてくれます。

  • カメラは頭頂部にあり、必要なときにせり出す

  • カメラはかなり高い位置まで伸びていく

「世界初のAlexa搭載家庭用ロボット」と位置づけられ、Astroに対して話しかけることで、Alexaの機能を利用できます。音楽の再生、照明などのスマートホーム製品のコントロールなども可能です。カメラを使った撮影、マイクを使ってのビデオ通話もサポートしています。ちなみに、発表会のデモでは「Astro」と呼びかけて音声操作をしていました。

既存のスマートディスプレイ「Echo Show 10」では、回転するディスプレイを備えて室内を監視できましたが、これをさらに拡張したのが今回のAstro。AIによる自律動作もサポートしたロボットとなりました。同社では「5~10年で、家庭内に最低1台のロボットが存在するようになる」と主張し、そのロボットとしてAstroをアピールします。

価格は米国で1,499.99ドルですが、まずは「Day 1 Edition」として999.99ドルで販売します。機能的にまだ万全ではないということかもしれません。米国で提供する監視サービス「Ring Protect Pro」の6カ月間利用権が付属し、まずは招待制での販売を行います。2021年後半の提供予定です。

日本と米国の住宅環境の違い、米国で提供する見守りサービスの存在など、いろいろハードルはありそうで、日本で販売するとしても、登場はまだ先になりそうです。

第2位 壁掛けできる「Echo Show 15」

Echo Show 15は、タッチ対応15.6型フルHDの大型ディスプレイを搭載したEcho Show製品の最新モデルです。従来の据え置き型とは異なり、壁掛けや別売の専用スタンドでの設置に対応。縦・横どちらでも利用できるスマートディスプレイとなります。

  • 日本でも発売する「Echo Show 15」

本体サイズは402×35×252mm(幅×奥行き×高さ/横向き時)、約2.2kgのボディに、5メガピクセルのカメラ、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠でデュアルバンド(2.4/5GHz)対応の無線LANを搭載。Wi-Fi 6には残念ながら対応していません。スピーカーには40mmのフルレンジドライバー×2を搭載しています。

  • 縦横どちらでも設置可能

これまでディスプレイ搭載のEcho Showシリーズは5.5型、8型、10.1型がラインナップされていましたが、その中でも最大。カメラやスピーカーのスペックはEcho Show 10には及びませんが、大画面で壁掛け、縦向きでの利用ができる点は特徴です。大画面なので、ストリーミング動画の再生にも威力を発揮します。

もちろんAlexaを搭載しており、音声による各種制御が可能になっています。大画面を生かしたホーム画面は、写真やカレンダー、ToDoリストなどが一覧表示されます。カレンダーやメモを家族全員で編集すれば、家族全員と情報共有ができ、画面から対応スマート家電のコントロールも可能。

  • 家族のスケジュールや家族宛のメッセージを表示しておけば、家族の情報のハブとして使える

カメラが人物を認識すると、「ビジュアルID」を登録した人であればその人にカスタマイズしたホーム画面を表示してくれます。個別のノートやカレンダーを表示したり、再生中だった音楽を再開したりできます。

こうした機能を実現するために、新たに開発されたプロセッサであるAZ2を搭載。従来よりデバイス上でのコンピュータービジョンと音声処理を強化しました。処理性能(TOPS)は前モデルに比べて22倍になっているそうです。

これを利用してAlexaの学習機能も強化。Alexaは、その人の質問などから個人の嗜好を学習して提案する機能を搭載しています。

さらに周囲の音を認識する機能で、「カスタムサウンド検出(Custom Sound Detection)」機能を搭載。例えば冷蔵庫を長時間開けっぱなしにしたときに鳴る警報を学習させると、同じ音を検知したAlexaが通知をしてくれる、といった具合です。これを応用すれば、既存のドアベルの音を学習させて、音が鳴ったらAlexaで通知をする、などといった設定も可能かもしれません。

  • Echo Show 15の各種スペック

米国での発売は2021年後半で249.99ドル。日本での発売日は明らかにされていませんが、Amazon.co.jp上でメールアドレスを登録すると最新情報を通知してくれます。価格は29,980円。別売の専用スタンドも発売予定ですが、こちらの価格は未定。

家族が集まる部屋の中心に設置してもいいですし、1人でも大画面を生かして寝室などのサブディスプレイとしても活用しても良さそうです。