ソニーグループは8月4日、2021年度第1四半期の連結業績を発表した。売上高は前年同期比15%増(2,939億円)の2兆2,568億円、営業利益は同26%(583億円)と大幅増の2,801億円となり、第1四半期の実績としていずれも過去最高を更新した。
デジタルカメラやテレビを含むエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野が増収となり、損益が大幅に改善したことなどが業績に貢献した。一方でゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は、PlayStation 5(PS5)の戦略的な価格設定による損失などが響き、同分野の営業利益にマイナスの影響をもたらしている。
なお、PS5のスタンダードエディションの損益分岐点について、同社は6月に到達するとの見通しを示していたが、ソニー副社長 兼 CFOの十時裕樹氏は今回の説明会の中で予定通り(損益分岐点に)到達したことを明らかにし、「全体のハードウェアの収益性は順調に進んでいる」とした。
同社の2021年度第1四半期の税引前利益は、同5%増(146億円)の2,832億円。純利益は同9%増(182億円)の2,118億円。
ラチェット&クランクなど新作ソフトが「想定越えの販売実績」
ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は、売上が前年同期比2%増(97億円)の6,158億円。営業利益は、前年同期から406億円の大幅減益となる833億円だった。2021年度通期の見通しは、4月の2020年度決算発表で示していたもの(売上高2兆9,000億円、営業利益3,250億円)から変更はない。
G&NS分野では、アドオンコンテンツを含む自社制作以外のゲームソフトウェア販売の減少があったものの、PS5発売によるハードウェア・周辺機器の売上増加による増収や為替の好影響を受け、売上は増収。
一方で、営業利益は自社制作以外のゲームソフトウェアの減収に加え、PS5の製造コストを下回る戦略的な価格設定による損失や、PlayStation 4(PS4)の販売台数減などにより、ハードウェアの損益が悪化。販売費や一般管理費の増加もあって大幅な減益となった。
なお、2021年度のPS5の販売台数目標については、4月の2020年度決算発表において説明していた「(PS4導入翌年度の販売実績である)1,480万台を上回る」という数字に変更はないという。
第1四半期のソフトウェア・ネットワークサービスの売上は、全世界で“巣ごもり需要”が大きかった前年同期比では、自社制作以外のソフト・アドオン売上の減少により15%下回ったものの、コロナ禍前の2019年度の同期間との比較では38%増加。「この2年間でゲーム市場の規模が大きく広がったと捉えている」(十時氏)。同様に、ユーザーの総ゲームプレイ時間は前年同期比32%減となったものの、コロナ禍前の2019年度比では18%増と、引き続き安定した伸長を見せているとする。
自社制作ソフトについては、『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』や『MLB The Show 21』をはじめとする、第1四半期に発売したすべてのタイトルが「想定を上回る販売実績」を挙げたという。なかでも『MLB The Show 21』は、PS以外のプラットフォームへの展開も始めており、好調な同タイトルのアドオンコンテンツ販売と合わせて、売上利益に大きく貢献した。
7月には、PCなど異なるプラットフォーム間でのゲームソフト移植技術を有するオランダのソフトウェア開発会社、Nixxes Software(ニクセス ソフトウェア)の買収も発表。PlayStation Studiosを技術面から横断的に支えていくという。ソニーは今後も新規IPの開発やマルチプラットフォームへの対応、アドオンコンテンツなどのサービス強化を目的に、戦略投資を積極的に進めていくとのこと。
ストリーミング売上好調の音楽分野。映画分野は減収も増益見込む
音楽分野の売上高は、ストリーミング売上の成長などがけん引し、全カテゴリで増収となり、前年同期比44%(778億円)と大幅増の2,549億円。営業利益は増収効果により、前年同期から197億円と大幅増の554億円となった。
映像メディアプラットフォームの増収には、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のパッケージメディアの貢献などによるアニメ事業の売上増加が貢献。有料会員制ストリーミングサービスからの収入増加など、音楽制作および音楽出版における増収もあったという。
2021年度通期見通しについては、売上高は前回4月の見通しから500億円増の1兆400億円、営業利益は280億円増の1,900億円へと上方修正した。
映画分野の売上高は2,047億円。テレビ番組制作におけるライセンス収入の減少があったものの、メディアネットワークや映画制作における増収などによって、前年同期比17%増(296億円)となった。営業利益は17億円減の254億円。
2021年度通期については、映画作品の劇場公開やテレビ番組作品の納入が期初想定から後ろ倒しになることなどを受け、4月の見通しから200億円減の1兆1,200億円に下方修正。営業利益については減収の影響はあるものの、ライセンス収入の増加を見込んで70億円上方修正し、900億円とした。
デジカメの販売増加。「プロ向けのシェアは伸びている」
AV機器やデジタルカメラなどを含むエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野の売上高は5,763億円。製品ミックスの改善や、販売台数増加によるテレビ、デジタルカメラ、オーディオ・ビデオの増収が貢献し、為替の好影響も受けて前年同期比59%(2,149億円)の大幅増となった。営業利益は718億円で、増収と為替の好影響を受け、806億円の大幅損益改善があったという。
同社のカメラ事業について十時氏は、「コロナ禍の影響で外出の機会が失われ、2020年度は厳しい状況が続いていた。現在はかなり状況が緩和され、2021年度に入ってからは大変堅調に推移している。今後もこの傾向が続くと期待している」とコメント。また、世界的なスポーツイベントの取材現場でソニーのミラーレスαシリーズのユーザーが見受けられるようになったことについて報道陣から問われると、「一般的としてではあるが、αのプロ向けのシェアは上がっていると認識している」と述べた。
全世界的な半導体不足の影響については、十時氏は「さまざまな手を打っている。PS5については、2021年度の目標を設定し、それに見合うチップの確保につとめており、供給自体についてはさほど心配してない。コンシューマ製品においては、戦略的に部品の在庫を持つなど工夫をし、生産・販売に支障をきたさないよう、今のところはコントロールできている」と述べ、今後も先手を打って対処していく考えを示した。
また、半導体大手のTSMCが熊本に製造工場を建設し、ソニーグループのイメージセンサー向け半導体を中心に生産する見通しと一部で報道されていることについて、十時氏はコメントを避けつつも「一般論として、ロジック半導体の供給については、国際競争力維持の観点からみても非常に重要だと考えている」とした。
2021年度通期では、テレビの販売台数減少が見込まれるものの、デジタルカメラの販売台数増加による増収などを折り込み、売上高を4月の予想から600億円上方修正した2兆3,200億円、営業利益も220億円上方修正した1,700億円と想定している。
イメージセンサーのI&SSは増収増益、コロナ影響から回復
デジカメ・モバイル用のイメージセンサーなど、イメージング&センシング・ソリューション分野(I&SS)分野の売上高は、前年同期比6%(119億円)の増収となる2,181億円。営業利益は増収効果により、43億円増の305億円となった。
モバイル機器向けイメージセンサーは販売数量が増加したものの、製品ミックスの悪化で減収に。しかし、COVID-19の影響からの回復によるデジタルカメラ向けイメージセンサーの販売数量増がそれをカバーするかたちで増収となった。
2021年度通期の見通しは、モバイル機器向けイメージセンサーの販売減を見込み、売上高は300億円下方修正した1兆1,000億円、営業利益1,400億円としている。
金融分野の売上高は4,144億円で、前年同期比6%(259億円)の減収。営業利益は120億円の大幅減益で240億円となった。
2021年度のソニーグループ通期業績見通しについては、売上高は4月時点とかわらず9兆7,000億円を見込む。また、営業利益は4月時点から500億円プラスの9,800億円、純利益は同400億円プラスの7,000億円を見込んでいる。