Apple ProRAW(プロ・ロー)とは、iOS 14.3で導入されたAppleの新しい画像フォーマットです。特定のiPhoneのみサポートされ、2021年3月時点ではiPhone 12 Pro/Pro Maxの2モデルで利用できます。『設定』→「カメラ」→「フォーマット」の順に画面を開き、「Apple ProRAW」スイッチをオンにすると、カメラアプリに「RAW」ボタンが現れ撮影に使うかどうか切り替えできるようになります。
このApple ProRAWは、デジタルカメラにおけるRAWフォーマットの一種です。ふだん我々が写真として目にする写真(JPEGやHEIF)は、色や明るさなどを調整した"現像済"の状態ですが、RAWフォーマットはイメージセンサに届いたまま、文字どおり"生"の状態です。
iPhone 12シリーズの場合、複数枚のイメージを撮り解析/合成したうえで1枚の写真を作り出すため、イメージセンサーで取得したデータそのままという意味の"生"ではありませんが、現像前という意味ではRAWといえます。
RAWフォーマットは未加工のぶんデータ量が膨大で、約1200万画素のカメラを搭載しているiPhone 12 Pro/Pro Maxでは、Apple ProRAWで撮影した写真は1枚25メガバイト前後に達します。たとえば、HEIFで保存した写真は1枚1〜4メガバイト程度ですから、かなりの差があります。
HEIFやJPEGといった写真フォーマットは非可逆圧縮で、人間の目には映らない/感じ取れない色や階調に関する情報は削ぎ落とされてしまい、元の状態には戻せません。実際、HEIF/JPEGで保存した写真とApple ProRAWの写真を見比べると、陰影や色の階調変化に微妙な違いを感じ取れます。
その点Apple ProRawはオリジナルそのもの、HEIF/JPEGでは失われてしまった画像情報を引き出せます。この"原典を持つ"ことこそが、Apple ProRAWで撮るメリットといえるでしょう。