アイドルグループ・SixTONESの松村北斗と、女優の森七菜がW主演を務める映画『ライアー×ライアー』が現在公開されている。金田一蓮十郎氏による同名コミックの実写化となる同作は、三角関係のラブコメディ。潔癖症の地味系女子大生・湊(森)が、普段と違うギャルメイクで街に出たところ、両親の再婚で義理の弟になった同い年でイケメンの透(松村)と出会い、とっさに別人の“女子高生・みな”と名乗る。それを信じた透はJK姿の湊=“みな”に一目惚れし、猛アプローチをかけてくる。

初の実写映画主演でヒロインとなる森は、アニメ映画『天気の子』(19年)のヒロインに抜擢され注目を浴びると、映画『ラストレター』(20年)、NHK連続テレビ小説『エール』(20年)、ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)など立て続けに話題となり、今もっとも旬の若手女優。今作では女子大生の”湊"と、ギャルJKの"みな"、まるで1人2役のような演技にも挑戦した森にインタビューした。

  • 映画『ライアー×ライアー』に出演する森七菜

    森七菜 撮影:泉山美代子

■W主演の松村北斗は「この人のことが、わからない!」

――今回『ライアー×ライアー』出演を聞いた時の感想をお聞かせください。

元々原作が好きだったので、まさか私が演じることになるとは思いませんでした。当時は中学生 でしたが、どこか特別に感じていた作品だったので、その特別感が証明されて嬉しかったです。

――W主演となった松村さんの印象はいかがでしたか?

初めてお会いしたときに、すごく威厳のある方だなと思いました。それでいて、透になった時には“デレ”の部分もまるで本当の気持ちかのように演技されて、アドリブもすごく出てくるから、「この人のことが、わからない!」と不思議な気持ちになってしまって(笑)。尊敬が大きかったです。きっといろんな顔を持たれているのだと思うと、松村さんが透を演じたことに納得というか、「松村さんじゃないとだめなんだ」という気持ちになりました。

――現場では仲良くなれましたか?

お芝居を中心に打ち解けた感覚はあります。シーンを重ねていくにつれ「こういう切り返しをしても大丈夫なんだ」という信頼が生まれて、ふだんカメラの回ってないときにもお芝居の話ができました。

実は、初めてお会いしたのは『ミュージックステーション』なんです。衣装で「ファーコートを着ている人がいるな」というのが第一印象でした(笑)。どちらの姿も見たことがあるからこそ、本当に尊敬できると思いました。どちらにも芯を置いてらっしゃる方だったので、何でも相談させてもらいました。

――実写映画としては初主演になりますが、これまでと違う意識などはありましたか?

「観ているお客さんと一緒に旅するのは私なんだ」と思ったから、まずお客さんに愛してもらえるキャラクターでいるということが1つの目標でした。でも原作の湊が愛おしいキャラクターだから、そこを忠実に演じていけば大丈夫だという気持ちで、原作を信じて演じました。

――『青くて痛くて脆い』撮影や、今回の『ライアー×ライアー』撮影でも晴れを呼ぶ“天気の子”っぷりを発揮されてたそうですね。

でも実は、渋谷のシーンは、2回目の撮影なんです。1回目はせっかく3時に起きたのに、雨が降ってしまって……。「天気の子」として、恥ずかしかったです。でもことあるごとに私が「天気の子」と言うので、松村さんに「それもう1年前だぞ! いつまで引っ張るんだ」と怒られました(笑)。効力が切れたのか、天気に振り回された撮影になりました。

■「もう落ちてもいいや」からの逆転劇

――森さんは「オーディションに強い」と話題にもなりまして、何かコツみたいなものはあるんでしょうか? 「こういうところが良かったよ」と言われるようなことはありましたか?

コツは、まったくわからないです(笑)。でも、数百名規模のオーディションに受かった時に言っていただいたことは、印象に残っています。そのオーディションでは「手をパン! と叩いたら一気に笑ってください、次に叩いたら泣いてください」と言われて、私は「もう無理だ!」と思ってしまったんです。「もう落ちてもいいや、受かっても私にはできない役なんだ」と開き直ってその場にいたら、そのオーディションに受かって。あとから聞いたら「『ああいう子、クラスにいるよね』という話になったんだよ」と(笑)。「大丈夫、なんとかなる」と思うことが私らしさなので、自分を出したことによって、選ばれることもあるんだ、大事だなと思いました。

――そういう「森さんらしさ」がオーディションでも見られているんですね。一方で今回はギャル姿にもなりましたが、ご自身で見てみていかがでしたか?

鏡を見るたびに、いつも「誰、これ?」とびっくりしていました。別人になったようでしたし、自分を騙せるほど変われたことが嬉しかったです。実写化するにあたって「透がみなに気づかない」という設定が、1番大きなハードルだと思っていたので、色々工夫はしましたが、脚も出すし、爪も長いし、すごく大変でした。プライベートではずっと校則を守っていて、スカートも膝丈だったし、家族は新鮮に思うだろうなあ(笑)。自分でメイクをしたこともないので、「いつからメイクをしようかな」とか、大人になることが楽しみです。

――普段の生活で、自分の姿にギャップを感じるようなことはありましたか?

今まで大分に戻ったら高校生、東京に来たら大人という生活を送ってきて、そこのギャップに苦しいと感じたこともありました。大分で大人っぽくしたら、素直に高校生活を楽しめないし、どっちつかずで難しかったんです。でもだんだん、楽しむときは楽しむ、お仕事はお仕事、と切り替えることが得意になったし、それが今回活かされた部分もありました。これからもずっと“女の子”と“女性”を行き来するような大人になりたいので、そこの基盤が作れたことにはすごく感謝しています。

■意外な恋に憧れ…!?

――今までに演じられた役の中で、「こういう恋愛に憧れるな」と思ったのはどんな相手でしたか?

朝ドラ『エール』の岡部(大)さんです。私が演じた梅は、(岡部が演じる)五郎さんが修行をして1人前になるまで、7~8年待っていたので、すごいなと思いました。その人がやりたい仕事を応援してずっと待っていられるなんて、素敵な関係で憧れます。

――岡部さんというよりも関係性に憧れがあるということですか?

岡部さんも好きですよ!(笑) でも、関係性に憧れました。

――この1年で色々な作品に出られるようになり、何か変化などはありましたか?

朝ドラに出たときに、祖父がくれた手紙に「梅ちゃんへ」と書かれていたんです。「見てくれてるんだな」「役が定着している作品があって嬉しいな」と思いました。でも手紙に「歌を書いておくので、作曲してください」と書いてあって、「梅は作詞する人なの!」とつっこみつつ、曲を考えてます(笑)。

――森さんとのコラボ曲が…!?

できるかもしれないです。ただ、詩がちょっと古文のような感じなので、発売は難しいかもしれません。今の人には刺さりにくいかも(笑)。

――では、最後にメッセージをいただけたら。

こんな世の中で自由にできないこともあるんですが、いつかこういう我慢が報われることを信じています。そこに向かって頑張ることでどこかに見てる人がいると思うので、一緒に頑張りましょう!

■森七菜
2001年8月31日生まれ、大分県出身。行定勲監督によるWebCMで芸能活動を開始し、映画『心が叫びたがってるんだ。』(17年)で映画初出演。ドラマ『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(18年)、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(19年)などに出演後、19年に公開されたアニメ映画『天気の子』のヒロインに抜擢され注目を浴びる。その他にも『東京喰種トーキョグール【S】』『最初の晩餐』『地獄少女』(19年)、『ラストレター』(20年)などに出演。近作に、NHK連続テレビ小説『エール』(20年)、ドラマ『この恋あたためますか』(20年)、映画『青くて痛くて脆い』『461個のおべんとう』(20年)がある。