2020年の車載パワー半導体市場は前年比16%減の予想

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自動車の需要が低迷した上に、自動車産業の生産中断や生産削減という問題が重なったことが自動車用パワー半導体の販売に大きな打撃を与えている。ハイテク産業市場動向調査会社である英Omdiaは、2020年の車載パワー半導体市場は2019年の108億ドルから91億ドルへ16%下落する見込みであると発表した。

Omdiaの電力、自動車、産業用半導体担当アナリストであるKevin Anderson氏は、「2020年は、本来は自動車用パワー半導体市場が回復する年になるはずだった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、中国はじめ世界中のほとんどの自動車組立工場が数週間停止した。同時に、ディーラーも営業を止めざるを得なかった。世界中の多くの地域で人々が職を失ったり賃金が引き下げられ、さらに在宅勤務の世界的な推進により新車の需要も減少してしまった。再稼働した自動車工場でも、コンポーネント不足と、ソーシャルディスタンスの維持のために生産ラインの従業員数を減少させざるを得ず、すべての工場がフル稼働しているわけではない」と話している。その結果、2020年の新車製造台数は7000万台に達せず、2019年と比べて20%以上減少すると予想している。

パワーディスクリート、パワーモジュール、およびパワーICで構成されるパワー半導体デバイスは、自動車のエレクトロニクスシステム全体に広く使用されていることもあり、近年の自動車用パワー半導体市場は、年間1桁台の成長率を維持し続けてきた。

  • Omdia

    世界車載パワー半導体市場売上高の過去の推移と今後の予測:パワーIC(桃色)、パワーディスクリート(空色)、パワーモジュール(青色)ごとに色分けしている (出所:Omdia)

2019年にマイナス成長に転じた車載パワー半導体

しかし、2019年はその流れがマイナスに転じた。年間を通しての米中貿易摩擦や自動車関税の交渉と相まって、いくつかの地域経済の悪化により、自動車の製造台数が減り、自動車用パワー半導体市場も前年比1%減となってしまったのだ。さらに、2020年も前述のような問題により、自動車向けのディスクリートパワー半導体とパワーICは、前年比17%減という大幅な下落に見舞われるとOmdiaは予想している。

しかし、2019年のパワーモジュールの売上高は、電気自動車(EV)とハイブリッドEV(HEV)の生産量の増加の恩恵を受けて前年比7%増と伸びており、2020年の予測でも、同8%減にとどまる見込みである。

自動車各分野の売上見通しはまちまち

急成長する先進運転支援システム(ADAS)モジュール市場の売上高は、2019年に像12%増となったが、2020年は同3%減と落ち込むとOmdiaは予想している。また、パワートレインシステムは、2019年は同1%増、2020年は同13%減と予測している。自動車市場のHEV/EVへの転換により、より価値の高いパワーモジュールの売り上げは今後増加していくと予想される。また、その他のドメイン(ボディ、シャーシ、安全性、インフォテインメントなど)については、2019年は同1桁台半ばで成長したものの、2020年は同20%前後の減少と予想している。

2021年は前年比20%半ばの成長を期待

主要な世界経済がポストコロナを模索しているため、車載パワー半導体市場も2020年の後半には販売が徐々に増加すると予想される。そのためOmdiaでも新型コロナウイルスの第2波という深刻な問題を回避でき、ワクチンまたは有効な治療法が早期に開発できた場合、2021年には自動車販売の回復が予想されるとしており、その結果、2021年には車載パワー半導体の売り上げは前年比20%半ば近くの成長が期待できると予想しており、2019-2025年の長期年間平均成長率(CAGR)も7%に戻るとしている。