新型コロナウイルス感染拡大の影響により、テレビ収録や劇場でのライブが中止になるなど、お笑い芸人の間にも生活の変化が生まれている。お笑いコンビ・麒麟の川島明も、SNSやオンライン企画などで笑いを発信中だ。

現状や今後のお笑いへの向き合い方について電話インタビューすると、川島は「こんなに仕事がなくて家にいる日が続くのは、芸人になって初めて」と状況を明かしつつ、「『集まることはできません』『カメラマンもいないので、このフレームの中でやってください』と言われたとしても、それをハンデだと思わずに『この条件だったらどうするか』というお題を与えられたと捉えれば、やれることが見つかるかもしれない」と得意の“大喜利力”を発揮して、ポジティブに今と未来を見つめていることを告白した。

  • 麒麟の川島明 (C)吉本興業

■劇場のライブやひな壇に集まっていた日々が、当たり前ではなくなった

川島といえば、ハッシュタグで芸人仲間を“想像紹介”しているインスタグラムが大人気。ついに書籍化され、今月25日に『#麒麟川島のタグ大喜利』として発売されるが、川島にとって、外出自粛期間が書籍の仕上げ作業と重なった。「バーンとテレビの収録が飛んで、いきなり『休みです』という状況になって。それまではありがたいことに、どこかで毎日、お笑いをやらせてもらっていました。こんなに休んだこともないので、初めの1日、2日は『まあ、ええか』と思っていたけれど、だんだん『これ、いつまで続くんやろう』と不安にもなって。本を出すことは決まっていたので、本の仕上げ作業に、僕のお笑いへの思いすべてをぶつけました。だから当初より、ハッシュタグもめちゃめちゃ増えているんですよ」とお笑いへの情熱を改めて噛み締めた。

日が経つにつれ、不安に思うよりも「なにかやろう」と動き始めたという。「劇場でのライブや、ひな壇に20人くらいの人がいる番組ができていたのは、当たり前のことではないんだなと感じるようになって。芸人たちみんなそうだと思いますが、今は『今だからできること』を考える時期になっていると思います」。

吉本興業では自宅でコンテンツが楽しめる「#吉本自宅劇場」を展開しているが、川島もオンラインでできる企画など、さまざまな活動にトライしている。「インスタライブでみんなで大喜利をやったり、ゲリラ的に生配信をやったり。zoomで7人のお客さんと一緒に1時間、話したり。ライブだと練ったものをやる必要がありますが、お金をもらっていない配信ならば、『これ、まだ仕上がっていないけどどうかな?』と思っていたネタも試すことができる。またこんな機会なので、僕が描いた絵の原画を寄付するという企画もやらせていただいています」と前のめりの姿勢を吐露。「思った以上に、やれることが多いです」と意欲をみなぎらせる。

■大喜利力で乗り切る!「なにがあっても、お笑いは誰かの心を救う」

緊急事態宣言が解除されても、「新しい生活様式」を取り入れた場合には、お笑い業界も変化を求められることになる。川島は、“お題に沿った芸を披露する”大喜利の発想を利用して、前向きに捉えるようにしていると語る。「もちろん大変な方がたくさんいて、気軽なことは言えないと思います。『気楽な気持ちで』とも言いにくい時代です。でも僕は『大人数で集まることはできません』などいろいろな条件があったとしても、それをハンデと捉えずに、『お題だ』と思えばポジティブにやれることが見つかるのかなと。とにかく、その条件でやるしかない。『さあ、どうする?』というお題だと捉えたい」。

ポジティブな思いが芽生えたのは、なによりも自分自身が「人生で何回もお笑いに助けてもらった」と感じているからだ。「なにがあっても、お笑いは誰かの心を救う」と信じている。「コンビの仲が最悪だなと思っているときも、漫才がウケたら、(相方の田村裕と)手をつないで帰るくらいの気持ちになりましたから(笑)。今、配信などをやっていても、みんな笑いを求めてくれているなと感じる瞬間があります。笑い声は聞こえないのですが、コメントでたくさん反応をくれる。お客さんと“笑いの文通”をしているような気分になりますよ」。

■“バトン疲れ”への持論も

反応という意味では、自身のツイッターで「あ、バトンね…うん、回せたら回しとくわ…」と頭をかく子を描いた、ユーモアあふれる“バトン疲れ”に関するイラスト投稿も大きな反響を呼んだ。

川島は「僕自身もバトン回しとか、めっちゃ苦手で…。なかなかのプレッシャーじゃないですか」と苦笑い。「絵を描いていくとか、ギャグのお題を回していったり、いろいろなバトンがありますが、インスタで“身長を発表し合う”というバトン回しを見たときに、『あ、みんなちょっと疲れてきているな』と思って。でも『やめろ』と言葉でいうとキツい感じで受け取られてしまうし、『回せたら回そう』くらいの感じがいいんじゃないかと思って。『何事も頑張りすぎちゃいかん』と感じています。LINEのスタンプのように、このイラストを使ってもらえたらいいなと思います」。

オンラインでできることが増えたとしても、「やっぱり劇場は特別。とても大事」との思いも。「今は難しいですが、芸人みんな、エネルギーを溜めて、溜めて、電池でいったら、液漏れしている状態だと思います(笑)。爆発できるまで充電しておきます!」と再開の日を心待ちにしていた。

■川島明
1979年2月3日生まれ。京都府出身。NSC大阪校20期生。1999年、田村裕とともに漫才コンビ・麒麟を結成。漫才をはじめとし、さまざまなバラエティ番組でも活躍中。「IPPONグランプリ」や「ハッシュタグバトルツアー」でなどでも大喜利のセンスを発揮している。