TSMCが、すでに発表済みの5nmプロセスに続いて、その改良版となる5nm+プロセスを用いた量産を2021年上半期より台湾中南にあるFab18で開始すると、台湾や韓国の複数のメディアが5月8日付けで報じた。5nm+は、従来の5nm比で演算速度が7%向上し、電力消費を15%抑えられるとするほか、同じEDAツールや第三者のIPコアを使用できるため、5nmより高性能な製品に低コストで移行できるという。

5nmプロセスはすでにFab18にて試験生産を始めており、2020年第2四半期までに量産が開始される計画である。一方の5nm+は2020年第1四半期に試験生産を開始し、2021年上半期に量産予定と、5nmよりほぼ1年ずれたスケジュールとなっている。

7nmプロセス以降の微細化に向けた巨額の設備投資ができるファウンドリはTSMCとSamsungの2社に絞られてきた。王者ともいえるTSMCの唯一の対抗馬となったSamsungは、2030年に世界一のファウンドリとなることを目指して13兆円規模の投資をすることを明らかにしているが、TSMCも、5nm+の投入により、Samsungに対して技術的優位性をアピールすることで、5G、人工知能(AI)、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、先進運転支援システム(ADAS)、自動運転車などの先端分野からの受注を先んじて受注する狙いがあるものと台湾メディアは伝えている。

なお、TSMCは、今後の微細化のカギをにぎるEUVリソグラフィの光源出力を現在の280Wから年内に300W、2020年には350Wへと引き上げる計画で、これによりウェハ露光時間の短縮をはかり、生産性を高めることを見込んでいる。

技術ノード
(微細化の指標)
プロセス名 露光技術 量産時期 量産工場
7nm N7 ArF液浸 2018年上半期 Fab15
7nm+ N7+ ArF液浸+EUV 2019年上半期 Fab15
6nm N6 ArF液浸+EUV 2020年 Fab15
5nm N5 ArF液浸+EUV 2020年上半期 Fab18
5nm+ N5+ ArF液浸+EUV 2021年上半期 Fab18
TSMCの今後のプロセス移行スケジュール