凸版印刷は4月23日、次世代LPWA(低消費電力広域ネットワーク)規格であるZETAとAI(人工知能)を活用して錦鯉の養殖状況を可視化できる見守りサービスを開発し、5月7日から10月31日まで大日養鯉場の協力を受け、新潟県にある複数の養鯉場で実証実験を実施すると発表した。2022年度に関連サービスを含め、約10億円の売上を目指す。

  • 養殖施設向け見守りサービスのイメージ

    養殖施設向け見守りサービスのイメージ

人手による定期的な目視管理は錦鯉の品質や生産量安定のため欠かすことができないが、養鯉場の多くは養殖に適した環境である山間部などの遠隔地に点在しており、作業負担が課題になっている。

ZETAの特徴である中継器によるマルチホップ(メッシュアクセス)の活用により、LTE(携帯)電波が届かないエリアでも通信環境を延長できるため、山間部などの遠隔地に点在する養鯉場における養殖状況の可視化と常時管理が可能になったという。

新サービスは、錦鯉の養殖を行う山間部の池付近に各種センサ、カメラなどを組み合わせて設置し、水位、酸素量、給餌などの養殖管理に必要なデータの取得とその変化を検知することで、遠隔から育成状況、酸素不足などによる死亡や育成不良などのトラブル予知の把握を実現するという。

センサで検知した情報はクラウドまたはオンプレミス上に蓄積し、管理事務所など別の場所に設置したPCやスマートフォンなどで確認を可能としている。

また、LPWAの伝送速度は低速なため、サイズが大きい画像のようなデータは送信が困難なことから、同システムでは端末側でデータ加工を行うエッジ処理を実行し、遠隔管理に必要十分な範囲に機能を限定して不必要なデータをサーバへ上げずコストを抑える方法を採用した。

さらに、水位、酸素量、給餌などのデータと育成結果を紐づけて蓄積し、AIを活用し多様な育成パターンの学習を行う。これまで水産養殖の生産方法は、主に熟練生産者のノウハウやアナログな記録が頼りとなっていたが、最適な育成パターンをデータ化し可視化することで、生産プロセスの標準化を図り品質の安定を実現するという。

同社ではサービスの技術検証を進め、2019年秋からサービスの提供を予定しているほか、将来的にはIoTカメラ(ZETA版)とも連携し、養殖施設に加えて農業施設や公共施設管理などにも用途を拡張することで、ZETAとAIを活用した見守りサービスの開発を推進していく。

さらに、RFIDやBLEを活用したソリューションとの融合により、ヒト、モノ、機器、インフラなど多様なものを可視化し、遠隔や無人で管理するソリューションの提供による省人化や自動化を進め、少子高齢化による人手不足や働き方改革への貢献を目指す考えだ。