ガートナー ジャパンは4月11日、国内企業のブロックチェーンに関する意識調査の結果を発表した。調査は、国内の特にITインフラストラクチャに関わるマネージャー向けのアンケートを通して、日本におけるさまざまなITのニーズや課題を分析することを目的に実施。有効回答数は515件で、全国の従業員数500人以上の企業を対象とし、回答者はITインフラストラクチャ領域において、製品やソリューション、サービスの導入の選定に際し、決裁権がある/関与している、もしくはITインフラストラクチャの戦略に関与している役職を想定している。

ブロックチェーンは、社会を変革する可能性を持つテクノロジーだが、ビジネス向けブロックチェーンを取り巻く現在の環境は混沌としており、当初の期待ほどには取り組みが進んでおらず、同社が2018年に10月に発表した「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年」において、ブロックチェーンは「過度な期待」のピーク期を越え、幻滅期へと坂を下りつつあると指摘。

  • ブロックチェーンは「過度な期待」のピーク期から幻滅期へ

    ブロックチェーンは「過度な期待」のピーク期から幻滅期へ

ガートナーのアナリストでバイス プレジデントの鈴木雅喜氏は「ビジネス向けブロックチェーンの活用に際し、企業の目の前には技術的な課題とビジネスへの応用に伴う課題の両方が残っています。一方で、ブロックチェーンに関する大きな成功事例や、ブロックチェーンの特性をビジネスに生かす成功の方程式はいまだ明らかになっていません。ブロックチェーンの普及には今しばらく時間がかかる見込みです。ブロックチェーンを担当するリーダーとチームは、技術の正確な理解に努めながらも、経営層に対しては、ビジネス上のインパクトとリスク、将来への期待などに焦点を当てた分かりやすい説明をすべきです」と述べている。

同社が2019年2月に実施した最新のユーザー調査の結果、「ブロックチェーンを理解している」経営層の割合はわずか16.7%であり、2018年2月の27.8%から大きく減少したことが判明し、これは変化し続けるブロックチェーン技術の動きに経営層が追い付けずにいることを意味しているという。

一方、同じ調査において企業の65%がブロックチェーンの将来に大きな期待を寄せている現状が明らかになり、回答者の多くがブロックチェーンはいずれインターネットの出現に匹敵するインパクトをもたらす、あるいはUberやAirbnbが市場を席巻したようにビジネスを変革すると推測。

この結果は、インターネットが情報の流通を押し広げたのと同じく、ブロックチェーンが信頼性のある取引を可能とするネットワークをインターネット上で形成し、自律的に動作するサービスが世界中に拡大していく可能性を示唆しているという。

  • 今後10年間にブロックチェーンが社会やビジネスに与える影響

    今後10年間にブロックチェーンが社会やビジネスに与える影響

鈴木氏は「ビジネス向けブロックチェーンの活用がなかなか進まない中でも、本テクノロジへの積極的な取り組みを続けている企業は存在します。彼らがそうした活動を継続しているのは、ブロックチェーンは将来の世界を変え得るインパクトを持ち、新たな市場で主導権を握る滅多にない機会をもたらす可能性を理解しているためです」とコメントしている。