宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月23日、10月14日~15日にかけて行なった小惑星リュウグウへのタッチダウンに向けた2回目のリハーサル「TD1-R1-A」の結果と、10月23日~25日にかけて進めている3回目のリハーサル「TD1-R3」の内容についての説明会を開催。2回目のリハーサルで、小惑星表面まであと22.3mのところまで降下したことを明らかにした。

予定通りの運用ができた2回目のリハーサル

2回目のリハーサルは、高度40m以下まで降下し、航法誘導の精度を確認すること、ならびに搭載しているレーザレンジファインダ(LRF)の特性を確認することを主な目的として行なわれたもの。9月に実施された1回目のリハーサルで行なう予定であったが、LIDARのモード切り替えが上手くいかず50m以下での確認ができていなかったために改めて実施された。

リハーサルの結果としては、ほぼ予定通りに運用できたとのことで、LIDARから高度25m付近でLRFへとスムーズに引き継いで計測できていることが確認されたほか、LRFが正常に計測できていることが確認されたという。

  • TD1-R1-Aの流れ
  • LIDARからLRFへの計測値の引継ぎ
  • TD1-R1-Aの流れとLIDARからLRFへの計測値の引継ぎの様子 (C) JAXA

また、22.3mまで降下した際の小惑星地表に対しての誘導精度は10.8mで、最初に想定していた半径50mの領域に降下、というものに対しては、高い精度を達成しているが、実際の降下ポイントであるL08-Bは直径20mのエリアであり、今回の精度でもまだ危険性があるとのことで、ターゲットマーカーを活用して、さらなる高精度な誘導を実現することを目指すとしている。

  • 高度約47mでの機影

    光学カメラ(ONC-W1)を用いて高度約47m付近で撮影されたはやぶさ2の機影。赤丸部分がタッチダウンポイントの「L08-B」。機影は、太陽電池パドルの端から端までで約6mとのこと (C) JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研

3回目のリハーサルではターゲットマーカーを投下

10月23日より開始された3回目のリハーサルは、2回目の結果を踏まえ、新たにLRFによる計測値を実際にはやぶさ2の制御へとフィードバックする形で行なわれる。また、条件が良いと判断されれば、ターゲットマーカーを1つ投下し、その追跡試験も実施する予定だという。

  • TD1-R3の流れ
  • 低高度シーケンス
  • TD1-R3の流れと、低高度でのはやぶさ2の行動予定 (C) JAXA

ターゲットマーカーそのものは直径10cmほどのボール状のもので、A/B/C/D/Eの5つをはやぶさ2は搭載している。今回は、機体の構造上、切り離さないとインパクタを降ろすさいに邪魔になってしまうBが投下される予定となっている。また、ターゲットマーカーには、JAXAが2013年に実施した名前・メッセージ募集キャンペーン「星の王子さまに会いにいきませんかミリオンキャンペーン2」に応募した応募者の名前やメッセージなどが搭載されており、それらが無事に小惑星に送り届けられたということになる。

  • ターゲットマーカー

    はやぶさ2に搭載されている5つのターゲットマーカー (C) JAXA

また、今回のリハーサルの目標予定高度は20m付近で、実際にターゲットマーカーを投下する際には、さらに2~3mほど降下する予定で、上手くいくかどうかは、LRFによる制御ができるかどうかといったところで、データの質に寄るところが大きいという。

なお、9月に投下した小型ローバー「MINERVA-II」のうち、MINERVA-II-1Bは小惑星表面への降下後、電力が不足した状態となり、太陽との位置が変わるまでデータが送られてこない状態とのことだが、MINERVA-II-1Aの方は太陽電池面積が大きいこともあり、現在も元気に小惑星表面を跳んでいるとのことで、画像も100枚以上取得するなど成果を挙げ、はやぶさ2のタッチダウンに向けた知見として提供されているという。また、光学カメラや赤外線などを活用したリモートセンシングで得られたデータの解析も進んでおり、10月21日から26日(米国時間)にかけて米国にて開催されている米国天文学会のカンファレンス「Division for Planetary Sciences (DPS) of the American Astronomical Society(AAS)」にて、こうした観測から得られた成果について、13件のポスター発表と9件の口頭発表が行なわれる予定となっており、日本側でも新たな事項についての発表を行なう予定だとしている。