2018年6月26日(米国時間)付で、TPGキャピタルによるIntelからの買収が完了し、新たなスタートを切った組み込みOS大手のWind River Systems(ウインドリバー・システムズ)。独立したソフトウェア企業となった同社はどこに向かうのか。同社は7月11日、都内で説明会を開き、CSO(Chief Strategy Officer:最高戦略責任者)のギャレット・ノイズ(Gareth Noyes)氏が、同社がこれから目指すべき方向性を語った。

変わらないウインドリバーと変化する市場

同氏は、「TPGの買収が完了したことで、我々は独立したIoTのソフトウェア会社となった。TPGは我々の成長を支援してくれる存在であり、力強く思っている」とTPGは、ウインドリバーの支援者という位置づけで、ビジネスへの向き合い方自体に大きな変更がないことを強調した。実際に、CEOであるJim Douglas氏は、買収前から同職に就いており、ギャレット氏自身も約20年にわたって同社に勤務するなど、体制自体の大きな変更もなく、これまでやってきたビジネスを実直に拡大していく、という流れが出来上がっている。

しかし、その一方で市場環境には変化が訪れている。IoTの普及である。「医療機器や発電プラント、産業機器など、絶対に障害を起こせないクリティカルインフラ分野のビジネスは、これまでは固定的な単一の目的を持ったシステムが個々別々に稼働しており、サプライチェーンもそれに基づいた構成となっていた。ビジネスのモデルも、機器ベンダやシステムを構築し、それを顧客に提供する、というものが大半であったが、IoTの普及により、拡張性のあるシステム構築が求められるようになってきており、これまでの延長線上では対応が難しく、新たなシステムの構築方法、インフラの作り方そのものが求められるようになってきた」(同)という状況であり、産業分野でもIT分野で導入が進んでいるSoftware Defined xx(SDx)の考え方の下、開発を行う必要性が生じていることを強調。ウインドリバーとしても、将来に向けた重点ポイントとして、SDxを考えているとする。

  • ウインドリバーがクリティカルインフラと呼ぶ産業分野

    ウインドリバーがクリティカルインフラと呼ぶ産業分野。一瞬でも止まることが許されない、もしくは安全性が担保されなければいけない、といった分野がずらりとならぶ (資料提供:ウインドリバー。本レポートのすべての図は同社提供のものとなる)

そうした変化が実現されるにはある程度の期間と段階が必要となる。現時点を同社はデバイス-デバイス、デバイス-クラウドといった何かと何かがつながる段階で、それを「HORIZON 0」のステップと表現。そしてこれからのステップが、インテリジェンスをクラウドに置くのか、エッジに置くのか、といったユーザーが必要とする場所にインテリジェンスを搭載できるという段階の「HORIZON 1」。これが実現できて初めて、ハードウェアとソフトウェアを切り離し、柔軟性のあるアーキテクチャであるSDxの構築ができるようになる「HORIZON 2」へと到達することができる。その後、SDxの世界に人工知能(AI)を加えることで、それが今見えている最終段階の「HORIZON 3」となる。「我々がSDxの活用に向けて現在注力しているのが、パフォーマンスと安全性の両方が必要とされているクリティカルインフラ領域」(同)だという。

  • 産業分野でSoftware Definedの考え方が浸透していくためには3段階のステップを踏んでいく必要がある

    産業分野でSoftware Definedの考え方が浸透していくためには3段階のステップを踏んでいく必要があるというのが同社の主張

また、AIによる自動化も、将来的には自律化へと発展する。産業ロボット1つとっても、現在の産業ロボットは1つのタスクに最適化することでパフォーマンスを出している。しかし、近年のトレンドは、囲いなどをしない状態で、人間とロボットがともに作業できる協働ロボットの活用であり、そのためには安全性を担保する必要がある。そして、この取り組みが進んでいけば、ロボットが単体で独立して考え、自律的に複数の行動をこなす完全自律化へと発展していくこととなる。その時、ソフトウェアに必要となるのはロボットのコントロール(制御)をどうするのか、ではなく、運用の管理をどのようにするかといった考えであり、そのためにウインドリバーは以下にあげる5つの技術をキーテクノロジーとして開発投資を行なっているとする。

  1. System Partitioning
  2. Workload Consolidation
  3. IT Scalability / OT Integrity
  4. Machine Learing
  5. Fluid Computing