NTTデータ 技術革新統括本部 技術開発本部長 風間博之氏

NTTデータは、6月11日に東京都港区六本木の泉ガーデンタワーに、デジタルビジネスのデザインスタジオ「Fluid Experience Design Studio "AQUAIR"」を開設するとして、5月25日に開所式を実施した。

同スタジオは、顧客のデジタルビジネスの企画から実証実験・マーケティングまでを、シームレスに実現するための場所。

技術革新統括本部 技術開発本部長 風間博之氏は、同スタジオを設立した背景について、「企業は、デジタル化の推進に伴い、革新的なデジタルビジネスの実現が求められている。そこで、われわれは最先端のITを活用したアジャイルな環境で、各分野のスペシャリストと共に戦略やアイデアを具現化できるデザインスタジオを設立した」と説明した。

デザインスタジオでは、「企画」「プロトタイピング」「実証実験」「マーケティング」という4つのプロセスの下、活動が行われる。「企画」ではコンセプトの可視化を行い、「プロトタイピング」ではアイデアの具現化を行う。「実証実験」ではVRや仮設店舗が用いられ、「マーケティング」ではユーザー分析やマーケティング施策を行う。各ステップで、ユーザーの反応を分析し、反映していく。

  • 「AQUAIR」の活動の流れ

風間氏はデザインスタジオの特徴を3つ紹介した。1つ目の特徴は「最新技術によってアイデアを試すことが可能なこと」だ。同スタジオでは、Google Cloudが提供する技術を用いて、プロトタイピングが行える。

2つ目の特徴は「実証実験のための仮設店舗『Consumer GYM』」だ。「Consumer GYM」では、VRやリアル空間によるプロトタイピングと実証実験、ユーザーの行動・感覚の分析、マーケティングへの応用までを支援する。空間デザインは乃村工藝社が、マーケティングへの応用は博報堂が携わっている。

3つ目の特徴は「グローバルの情報を活用できること」だ。同スタジオは、海外のNTTデータグループのデザインスタジオ(10拠点)と連携しており、国を越えたプロジェクト結成が可能としている。

  • 「AQUAIR」の特徴

同スタジオは、企画、プロトタイピング、実証実験、マーケティングに取り組めるスペースをそれぞれ用意している。

  • 「AQUAIR」の内部

VRのプロとスペースと「Consumer GYM」では、アパレル店舗における「AIコーディネートミラー」の実証実験のデモが披露された。実証実験を行いながら、被験者が「AIコーディネートミラー」によって、行動がどのように変化するかという分析が行われた。分析はさまざまな手法を用いることができるが、デモでは脳波や眼球情報に基づく状態推定をリアルタイムで見せていた。脳活動を分析することで、被験者の「ワクワクする気持ち」「楽しい気持ち」を確認することができる。

  • VRを用いた実証実験の様子

  • 仮設店舗を用いた実証実験の様子

活動のプロセスに「仮設店舗を活用した実証実験」とあるように、同スタジオの主な利用者は流通業が想定されており、ユーザーと接点を持った企業が効果的だという。

同社内では30人程度の人材を同スタジオのために配備しているが、他社と連携することで、すべてのプロセスをサポートしていく。風間氏は、同スタジオのアドバンテージについて、「プロトタイプを作成したうえ、ユーザーの分析まで行えるスタジオはこれまでなかったと思う」と語った。