企業向けAIサービスを展開するAppier。本社を設立した2012年から、わずか5年で米フォーチュン誌の「AI革命をリードする50社」に選出された。まさに破竹の勢いで成長を続けている同社だが、飛躍の秘密はどこにあるのだろうか。今回、Appier 製品マネジメント担当部長であるマジック・ツー氏に話を伺う機会があったので、本稿では成長を支えるAIサービスの概要や、AI導入企業に対する同氏の考えを紹介する。

企業にとって価値の高いユーザーをクロスデバイスで見つけ出す

同社ではCrossX AIエンジンとクロスデバイスデータベースという土台のうえに、「マーケティングインテリジェンス」「データインテリジェンス」という2タイプのAIサービスを提供している。まずは、これらのサービス概要について聞いてみた。

  • AppierのAI製品群

    AppierのAI製品群

「マーケティングインテリジェンス」は、CrossX techと呼ばれる技術によって複数デバイスを横断してユーザーを特定し、ターゲティングを行えるサービス。Aというスマートフォン(スマホ)、Bというタブレット、Cというパソコンを使っている人物が同一であることを導き出し、ABCの端末それぞれに対してその人物に向けた広告を配信することが可能だ。また、インターネット上での振る舞いを分析するディープファネル最適化機能によって、価値の高いユーザーを見つけ出すことができるという。

Appier 製品マネジメント担当部長であるマジック・ツー氏

Appier 製品マネジメント担当部長であるマジック・ツー氏

マジック氏は「たとえば、スマホアプリを提供している企業にとって大切なのは、アプリインストール後の利用頻度や課金です。ディープファネル最適化では、どのようなユーザーであれば、アプリを頻繁に使ってくれるのか、または課金してくれるのか、といったインストール後の価値を最大化する顧客属性を予測することができます」と、例を挙げて解説する。

アプリ提供企業の場合、価値の高いユーザーとは、「アプリをインストールしてくれる人」ではなく「インストールしたアプリに課金してくれる人」であり、同社のAIを使うことで、そのターゲティングが可能になるのだという。

「また、フラウドの検出機能によって、広告に対する不正なクリックを判断することも可能です。近年、広告主からお金を取るために、不正なトラフィックが発生するケースも少なくありません。これらのクリックは無効であると判断する必要があるのです」とマジック氏。

理想的なユーザー群をセグメント化して個別体験を提供

もう1つのAIサービスである「データインテリジェンス」では、Aixonというサービスを提供している。これは、ユーザーの将来的な振る舞い予測や類似ユーザーのセグメンテーションを実行できるプラットフォームだ。

「Aixonではまず、オーディエンスの振る舞いから、コンバージョン率の高い1人を導き出します。そのうえで、類似ユーザーの発見と細かいセグメンテーションを実施。コンバージョン率の高いユーザー群に対して、よりパーソナライズされた体験を提供できるようになります」

Aixonを使えば、商品を購入してくれる可能性の高いユーザーを大量に見つけ出せるだけでなく、そのユーザー群を細かくセグメント化することで、個別の広告配信などを行うことができる。たとえば、金融機関ではユーザーの理解を深めることで、個別に商品パッケージをつくることもできるだろう。また、ECや小売では30~40のレコメンデーションを、セグメントごとに日々提供することも可能だという。

類似ユーザーの発見やセグメント化によって確度の高いリーチが可能なAixon。今後はどのような進化を遂げていくのだろうか。

「より長期的にユーザーがもたらす価値を測れるようにしたいと考えています。1週間や2週間だけでなく、数カ月先までの価値を判断できるようになるかもしれません。たとえば、1週間以内のコンバージョン率が90%という人でも、一度購入したら離脱してしまう可能性があります。それよりも、10%程度のユーザーが毎週来てくれほうが、長期的に見ると企業に提供する生涯価値が高くなりますよね。そのように、短期的に見るだけではわからない長期的な価値を見つけられるようにしていきたいと考えています」と、マジック氏はAixonの未来像を描く。