一瞬の、静寂。
巨像から噴き出した液体が自分の顔に降りかかるのを避けもせず、
私はただ、そこにいた。
緊張からの解放。
突き立てた剣が正義なのか悪なのかは、まだ、わからない。

  • 巨像の頭部から吹き出す、大量の液体。赤黒いその液体は、巨像の血液なのか、それとも……

……と、中二病患者チックな出だしのレビュー原稿で失礼しました。でも、こう書かざるを得なかったんです。

今回のレビューは、2月8日に発売されたばかりの、PS4『ワンダと巨像』です。元となったタイトルは、2005年に発売されたPS2版。後にPS3でリマスター版が発売され、2018年発売の本作は待望のフルリメイクとなります。主にグラフィックが強化され、キーアサイン、カメラワーク、ボタンの配置などが変更されていますが、ゲーム内容的なところは一切変わっていません。

それだけPS2版から完成度が高く、長期間にわたって ファンから愛され続けているタイトルだということがわかります。

少女の笑顔を、もう一度。それがワンダの願い

ストーリーは、主人公であるワンダが愛馬に乗り、ある神殿にたどり着くところから始まります。彼が運んでいたのは、一人の少女。しかし、その顔に生気はありません。

  • 祭壇の上に横たわり、その姿は眠りについているかのよう。少女のため、ワンダは闘う

「少女の魂を取り戻すためには、16体の巨像を倒す必要がある」

少女の笑顔を取り戻したい。
ただ、その一心で16体の巨像に挑む主人公、ワンダ。

巨像とは何なのか。
どこにいるのか。
どのくらい大きいのか。
どうすれば倒せるのか。

まったく情報のないまま、ワンダは愛馬に跨がり、フィールドを駆け巡ります。

  • 巨像を探して、広大なフィールドを駆け巡るワンダ

ゲーム内容も超シンプル。「巨像を倒す」のみ。

ストーリーがシンプルなら、ゲーム自体の内容もシンプルです。

一般的なアクションRPGとは異なり、倒すべき16体の巨像以外に敵は一切出てきませんし、レベルという概念もありません。

コントローラー上での操作は、比較的シンプル。ですが、難易度はお世辞にも「簡単」とは言えません。

巨像を倒すまでのプロセスは、以下の通りです。


<巨像を倒すまで>
・剣をかざして、巨像の方向を知る
・巨像の方向へ移動し、遭遇
・剣をかざして、巨像の弱点を探る
・巨像の弱点を攻撃して、体力をゼロにする


乱暴に説明するなら、これを16体分繰り返すのがこのゲームの目的です。

最初の巨像は、基礎の基礎。巨像の上に登ろうにも、ズシズシと歩いているために近寄れません。ですが左ふくらはぎに弱点を見つけて、これを弓で攻撃。すると巨人が片膝をつくので、その隙に脚の毛を掴んで巨像の身体をよじ登り、もう一つの弱点である頭を目指します。

  • 足の裏に弱点がある巨像。弓で足の裏を撃ち、片膝をついている隙に脚の毛にしがみついた

ただし、巨像は全身に毛が生えているわけではないので、毛の生えているところを探し、弱点までの到達ルートを探ります。ずっと体にしがみついていると握力が限界を迎えて落ちてしまうので、握力があるうちに足場がある場所を探し、指を休ませてやる必要もあります。

  • 巨像の体毛に掴まりながら、弱点を探す。巨像が大きく動くと振り落とされてしまうので、巨像の動きに合わせて体毛を掴む

巨像ごとに「巨像の動きを止める方法」「巨像の足下から弱点へ向かうルート探し」「巨像の弱点場所探し」が異なり、これを探すことこそが、このゲームの攻略要素となります。

  • 弱点を見つけたところ。ワンダは手にした剣で、弱点を深く突き刺します

何度か弱点を攻撃すると、左上に出ている水色のゲージが減っていきます。 そして、最後の一撃を突き立てた時……、

静寂が訪れます。

BGMも、効果音も、何もない、無音の瞬間。
これが、『ワンダと巨像』を象徴する演出なのです。

巨像のうちいくつかは、人型をしています。
その人型の頭部に剣を突き刺すと、血液のような液体を噴き出して倒れていく。
少女のため、正義のためとは思いながらの行動ではありますが、「自分は本当に正しかったのだろうか?」という自問自答を行いたくなる瞬間。


それでも、剣は無機質に次の巨像の場所を指し示します。早く次の巨像を狩れ、と言わんばかりに。

16体の巨像をすべて倒し終えた時、本当に少女に魂は宿るのか。
巨像を倒せとワンダに指示する声は、誰なのか。そして、どんな思惑があるのか。
ワンダの未来に待ち受けるのは、幸福なのか、それとも……。

PS4で美しく生まれ変わったフィールドを駆け抜けながら、ワンダの闘いは続きます。

  • 「フォトリアル」という言葉が似合う、『ワンダと巨像』のフィールド。太陽光が当たっている場所でないと巨像の居所や弱点がわからないというシステムも独創的

PS4 Proユーザーなら、グラフィックがさらに強化

PS4版では、PS4 Proに対応した専用モードが用意されています。一つは、4KHDRディスプレイ対応で30fpsの、解像度を優先したダイナミックな画質を楽しめる モード。もう一つは、解像度は2Kのまま、フレームレートが60fpsになって円滑なプレイが楽しめるもの。どちらを選ぶかはユーザー次第だが、PS2版からの進化はもちろんのこと、PS3版と較べても別物と呼べるほどにグラフィックが強化されています。

また、薄型や初期型PS4をお使いの方でも、追加された新モード「フォトモード」を使えば、キャラクターの位置や角度などを自由に設定でき、写真を撮れるモードが付いています。 美しく生まれ変わったフィールドで、ワンダや巨像たちの写真を撮影し、画像データとして保存できる機能も素敵。 撮影した画像はUSBメモリなどにコピーしてスマートフォンやパソコンへ入れることもできますので、私は壁紙にして楽しんでいます。


PS2版やPS3版を遊んだ人も、そうでない人も。
ワンダと共に、太陽へ剣をかざしましょう。

『ワンダと巨像』
ハード:PlayStation(R)4
発売日:発売中(2018年2月8日)
価格:パッケージ版 4,900円+税
   ダウンロード版 5,292円(税込)
   デジタルデラックス版 6,372円(税込)
発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント
ジャンル:アクションアドベンチャー
CERO: B(12才以上対象)
プレイヤー:1人
※ PS4(C)Pro ENHANCED
PlayStation(C)4 Proでプレイすると一部の映像表現が強化されます。

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