近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds

近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds

東京都・新宿にあるVRコンテンツ体験施設「VR ZONE SHINJUKU」に、あす12月9日からチーム対戦型フィールドVRアクティビティ「近未来制圧戦アリーナ 攻殻機動隊 ARISE Stealth Hounds」がお目見えする。

同アクティビティの特徴は、プレイヤーが12m×20mという非常に広いフィールド内を動き回ることができ、さらに複数人同士のチーム対戦であるという点。VRゴーグルの着用はイコールで視界をふさぐことになるため、VRコンテンツの多くは着席状態か、あるいは行動範囲を限定している。

安全や遊戯性を担保した上で「自由に動く」体験をどのように実現したのだろうか。今回は、オープン前のメディア向け体験会の様子をお届けする。

サバゲーさながらの装備で臨むVRアクティビティ

同アクティビティにおいて、プレイヤーはαとΩの2チームに分かれて対戦する。体験会では、同施設のナビゲーターがチームに参加して、3on3の対戦が行われた。システム上は4on4、最大8名の対戦が可能となっているが、オープン直後はこの体験会同様、来場者2名に対してナビゲーター1名が参加するスタイルで運用する。

これは、同アクティビティの本番運用における安全性を高める意味と、ゲーミング要素が強い内容を初めて体験するプレイヤーを導く必要があるという判断から。実際、筆者もナビゲーターのアドバイスなしに、初見でアクティビティ内のミッションを進めることは難しかっただろうと感じた。

  • プレイヤーの装備

    プレイヤーの装備

  • 装着する機材一式

    装着する機材一式

  • ナビゲーター

    プレイに同行してくれたナビゲーター。

プレイヤーの装備は着席型のVRコンテンツと比較すると多いが、同施設の「ドラゴンボールVR 秘伝かめはめ波」と同程度だ。HMD(HTC VIVE)やヘッドホンのほか、利き手でハンドガンを持ち、アームガードやすね当て、ベルトで腰に装着するセンサを取り付け、msiのVR向けバックパック型PC「VR ONE」を背負う。バックパック型PCを採用することで、ケーブルレスの可動性を実現し、プレイヤーの立ち位置をリアルタイムにトラッキングする処理が行えるだけのマシンパワーを確保できたという。

  • HTC Vive

    HTC Viveをカスタムしている。フロントには「Project i Can」のロゴが。

  • 攻撃に使うハンドガン

    攻撃に使うハンドガン。グリップの底面にあるボタンを押すと「光学迷彩」を使える。

  • プレイヤー登録画面

    プレイヤー登録画面。プレイヤーの性別はどちらでも構わないが、ゲーム上身長は自分と同じ数値にしないと齟齬が出る。

すね当てなどに赤色LEDが取り付けられており、場内にくまなく取り付けられた60個のカメラで、リアルタイムに全身の動きを3次元でトラッキングする。HTC VIVE純正のシステムは最大で4m×4mとなっているため、同アクティビティの広いフィールドを実現するため、サードパーティのシステムを採用した。

個人の体感だが、自分の手(あるいはコントローラー)が視認できるVRコンテンツでは多くの場合、「現実の手とVR上の手の位置がズレること」が気になっていた。しかし、このコンテンツではとても正確に自分の身体の動きを追ってきて、視界にうつる銃の向く先と手応えは一致し、動きのラグはほぼ感じなかった。「VRコンテンツのトラッキングはある程度ズレる」という先入観があった身からすると、かえってフィットしすぎて違和感を感じたくらいだった。さながら自身が作中の「義体化」を体験しているようにも感じた。

「楽しさ」と「安全」を担保するたったひとつの要素

「攻殻機動隊 ARISE」の世界観を忠実に再現したフィールドが眼前に広がり、ハンドガンの重みを感じながら体験している最中に危機感は特に感じなかったが、他の人たちの体験の様子を撮影してみると、プレイ中はいわば、全員が鬼の「目隠し鬼」をしていると言える状況だ。

  • プレイ中の様子
  • プレイ中のイメージ
  • 実際のプレイ中の様子(左)とイメージ図(右)。エリア内であれば移動に制約はないが、人と人や壁と近づきすぎると警告される

撃たれて戦闘不能になった場合の復帰ポイントや獲得(アクティビティ中では「ハッキング」)すべきアイテムは両チーム共通のため、目指す場所は重なりやすく、はたから見ていると少しヒヤヒヤする。とはいえ、ゲーム中は一定のレンジ内に他プレイヤーがいる場合、接触の警告が視界全体に広がるので、そこで互いに距離を取り合うことになるし、さらに接触しそうになった場合は場外の監視役からヘッドホンに指示が入る。

  • ゲーム開始前のブリーフィング

    ゲーム開始前のブリーフィングは草薙素子(CV:坂本真綾)が行う。プレイ中も彼女からの声かけがあるので必聴。筆者は「下手くそ!」と罵られた

当初、このアクティビティは同施設の開設と同時期の8月にオープンする予定だったが、約4カ月後ろ倒しでの公開となった。オープンにこぎつけるまでに最も苦心したのは、やはりトラッキングの調整だったという。

また、ゲームのルール上、素早い移動はマイナスになりペナルティが科せられるので、「勝つために危険行動に出る」意味がなく、基本的には忍び足で移動することになる。「テロリスト集団の制圧線に参加した、特殊部隊のルーキー」という設定でミッションに臨むにあたり、壁が多く視界の狭いフィールドにおいて「いかに相手に気づかれず仕留めるか」という点を主眼にし、作品の設定と安全の両方を担保したと言えそうだ。

  • プレイ中の視点

    プレイ中の視点

  • プレイ中の視点

    プレイ中の視点

実際、安全と遊戯性を担保したのは「正確なトラッキング」だったと、開発プロデューサーのローム・チャールズ氏は語った。「この作品では、銃を撃つにあたって一切画面上の補助がないので、プレイヤーの位置のトラッキングが非常に重要で、それなしではゲームが成立せず、そこに非常にこだわりました。また、自分や相手の位置がズレなく正確にわかるというのも、安全対策のひとつだと考えています」(チャールズ氏)

  • 左から、記者質問に応じてくれた「Project i Can」小山順一郎氏(コヤ所長)、ローム・チャールズ(CJ)プロデューサー、田宮幸春氏(タミヤ室長)

    左から、記者質問に応じてくれた「Project i Can」小山順一郎氏(コヤ所長)、ローム・チャールズ(CJ)プロデューサー、田宮幸春氏(タミヤ室長)

正直なところ、VRコンテンツの大半は1回やれば満足できてしまうようなものが多いと感じるが、同アクティビティに関しては、繰り返しトライし、上達したいと思わせるだけのゲーム性が強いと感じられた。苦心した正確なトラッキングによる没入感も非常に強い。この記事を掲載しているテクノロジーチャンネル的な視点で見ると、こうしたエンターテインメントコンテンツだけでなく、BIMデータや3D CADデータの閲覧においても、「ユーザーの位置トラッキング」を強化することで、見え方や活用の幅は変わってくるのではないかと感じられた。ともあれ、興味がわいた人は一度体験してみてほしい。体験予約は同施設Webサイトから行える。

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会 (C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.