フェアリングの再使用、さらに再使用の時間短縮も

今回の打ち上げではさらに、衛星フェアリングの回収も試みられた。衛星フェアリングは、ロケットの先端にある部品で、貝のように中の人工衛星を包み込み、大気や音響から守る役割をもつ。

ファルコン9を含め、これまですべてのロケットはフェアリングを使い捨てていたが、スペースXでは第1段同様、これを回収し、再使用する研究を続けている。マスク氏によると、フェアリングのコストは600万ドル(約6.7億円)だという。再使用するには回収や輸送費、また洗浄などの整備費がかかるものの、第1段と合わせて再使用できれば、コストダウンの可能性がさらに生まれることになる。

フェアリングは分離後、「あたかも小さな宇宙船のように」(マスク氏談)スラスターによって姿勢を制御し、パラシュートを開いて減速、着水するという。その後、船などで接近し、回収される。

打ち上げ後の会見では、予定した海域への着水が成功したことを確認したと発表されている。ただ日本時間31日9時現在、まだ回収はされていないという。

またマスク氏は、現在は点検やメンテナンスなどにため、機体の回収から再打ち上げまで約4か月かかるものの、いずれは24時間にまで短縮したいとも語った。

さらにスペースXは昨年9月に、2020年代に火星への移民を始めたいと発表。その費用は「1人あたり家一件分ほどの値段」を目指すとされ、その実現のために、超大型の再使用ロケットを開発するとしている。そのため、スペースXにとってロケットの再使用というコンセプトは、単に人工衛星を安価に打ち上げ手段を提供するためだけではなく、この火星への移住にとっても、その実現を左右する鍵になっている。

ファルコン9のフェアリング。これまでは他のロケット同様に使い捨てていたが、今後は第1段同様に再使用される (C) SpaceX

スペースXが開発中の、火星移民用の超大型ロケット。ファルコン9と同じく機体を再使用できるようにし、比較的安価に火星への打ち上げを実現したいとしている (C) SpaceX

なお、スペースXによるロケットの再使用打ち上げについて、その方法や仕組み、再使用に向けた歩み、そして本当にコスト100分の1は達成できるのか、といったことについてなどの詳しいことについては、別途、「甦る再使用の夢 - スペースXが挑む『成功が約束されたロケット』の打ち上げ」という連載で取り上げているので、そちらをお読みいただければと思う。

参考

SES-10 Presskit
SES-10 MISSION | SpaceX
SES-10 MISSION | SpaceX
Live coverage: SpaceX launches previously-flown rocket - Spaceflight Now
SpaceX demonstrates rocket reusability with SES-10 launch and booster landing - SpaceNews.com