米Appleが9月9日(米国時間)に発表した「iPhone 6」。同製品は携帯キャリアの通信に対応したモデルのほか、SIMフリー版も提供される。一方でかねてから注目度が増しつつあった「格安SIM」サービスだが、今後は”iPhoneで使い勝手の良いSIMはどれか”という観点からも人々の興味を集めそうだ。

そこで本稿では、格安SIMサービスの一例としてU-NEXTが提供する「U-mobile」の内容をおさらいし、各キャリアの料金プランと格安SIMサービスとの違いを比較する。その上で、iPhone 6と格安SIMサービスとの相性についても考えてみたい。

Apple Storeのウェブサイトには、SIMフリー版の「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」の案内が登場。キャリア版と同時に発売されることが見込まれる。予約注文は9月12日から

格安SIMとは?SIMフリー端末とは?

まずは基本事項をおさらいする。「格安SIMサービス」とは、NTTドコモなどの回線を借り受けた通信事業者が独自のサービスを乗せて提供するサービスの通称。大手キャリアのNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルが提供するサービスよりも”格安で”運用できるのが大きな魅力だ。利用者は、キャリアのロックが解除された状態の携帯電話(通称SIMフリー端末)に、「SIM」と呼ばれるカードを挿入して使用する。

本稿で紹介するU-mobileは、NTTドコモの回線を借り受けたU-NEXTが提供するサービス。通信エリアはLTE「Xi」および3G「FOMA」対応エリアとなる。このため日本全国で安定した通信が利用可能。都市部では下り最大150Mbpsでインターネット通信が利用できる。

大手キャリアの月額料金

はじめに、本稿掲載時点の各キャリアが提供する料金プランの内容を簡単におさらいしておこう。月額料金の計算方法は3社で共通で、「音声通話(定額2,700円/月)+データ通信パック+インターネット接続料(定額300円/月)」。データ通信パックについても3社共通で、データ容量を段階的に設定している。

なお、利用者が多いと思われる容量は、2GBが3,500円/月、5Gが5,000円/月といったように3社共通となっている。なので、携帯3キャリアの利用料は、以下を目安としておくとよいだろう。

・毎月2GBを使用する利用者なら、2,700円+3,500円+300円=6,500円/月 ・毎月5GBを使用する利用者なら、2,700円+5,000円+300円=8,000円/月

格安SIMサービスの月額料金

続いて格安SIMサービスを毎月いくらで運用できるか考えてみたい。U-mobileのプランには、データ通信が行える「U-mobile データ専用」と、データ通信+音声通話が行える「U-mobile 通話プラス」がある。料金プランの詳細は、以下の通りだ。

U-mobileでは、データ通信が行える「U-mobile データ専用」と、データ通信+音声通話が行える「U-mobile 通話プラス」を提供している

U-mobile データ専用は、スマホやタブレットを持っている利用者に向けたプラン。データ通信量に応じたプランを用意しており、1GBが790円/月、3GBが1,480円/月、5GBが2,980円/月、7GBが3,480円/月となっている。「SMSオプション」(150円/月)を付けることで、SMS(ショートメッセージサービス)機能も利用できる。SMSの国内送信は、3円/通。

U-mobile データ専用の料金表

U-mobile 通話プラスは、スマホを持っている利用者向けのプラン。高速データ通信に加え、”090・080・070”ではじまる番号で電話をかけることができる。通話料は20円/30秒だが、9月30日からは10円/30秒で通話が利用できるサービスも開始する(詳細は後述を参照のこと)。U-mobile 通話プラスの基本使用料も、データ通信量に応じたプランを用意しており、、1GBなら1,580円/月、3GBなら1,980円/月、5GBなら3,380円/月、7GBなら4,580円/月。「MNP(携帯電話番号ポータビリティ)」に対応しているので、現在契約している携帯電話会社の電話番号をそのまま引き継ぐことも可能だ。

U-mobile 通話プラスの料金表

大手キャリアのプランと比較

では、実際にありそうな利用シーンを想定して月額料金を比較してみよう。例えば、毎月5GBのデータ通信と10分間の音声通話(利用者から発信)を利用するユーザーの場合。NTTドコモの「カケホーダイ&パケあえる」では8,000円/月かかるところだが、U-mobile 通話プラスなら3,380円+400円(通話料)=3,780円/月で済む(20円/30秒で計算)だ。

見方を変えてみよう。U-mobile 通話プラス(5GBプラン)では、何分通話すれば月額の利用料金が8,000円になるだろうか。8,000円-3,380円=4,620円より、4,620円を通話(音声発信を伴う)に利用できることになる。1分あたり40円かかるから、4620/40=115.5。つまり115分30秒となる。大手キャリアのプランと比較してみると、U-mobileのプランがいかに”格安”かがお分かりいただけることだろう。

なお、9月30日からは10円/30秒の料金で電話をかけられる専用アプリ「U-mobile 通話アプリ(仮称)」が提供開始される予定だ。090・080・070ではじまる番号で電話できるサービスで、050のIP電話とは異なり通話品質も高いという。

U-mobileのメリットとは

格安SIMサービスは、提供業者によって特長が異なる。U-mobileのメリットには、前述の通りLTE通信が利用できる、データ通信量が自由に選べる、SMSに対応する、MNPに対応することなどが挙げられる。既述の通り、9月30日からは10円/30秒という安価な料金で電話がかけられる。これに加え、キャッチホン(200円/月)、留守番電話(300円/月)、転送でんわ(月額使用料無料)、国際電話(月額使用料無料)、国際ローミング(月額使用料無料)などのオプションも利用可能だ。

料金プランには2段階制の「ダブルフィックス」プランも用意する。これは通信量が1GB以下の月はデータ専用なら680円/月(通話プラスなら1,660円/月)、1GBを超える月はデータ専用なら1,980円/月(通話プラスなら2,960円/月)で利用できるというもの(上限は3GBまで)。このように、ユーザーの利用環境に応じた使い方ができるのがU-mobileの強みと言えるだろう。

どのようなシーンで使える?

同社のサービス、具体的にはどのようなシーンで使えるだろうか。例えばすでにメインのスマートフォンを持っており、2台目にタブレットを購入するという人なら、タブレットにデータ専用プランのSIMカードを挿して毎月のコストを下げることができる。家や出先にはWi-Fi環境が整っている、という人ならメインのスマホに通話プラスのリーズナブルな1GBプランのSIMカードを挿して使用するのも良いだろう。もちろん通話プラスの5GBプランなら、大手キャリアのサービスと何ら遜色ない使用感でメインのスマホを安価に運用することが可能だ。

iPhone 6を2年使うといくらになる?

アップルではこれまで、大手キャリア版のiPhoneを発売した後、ある程度の時間をあけてからSIMフリー版を提供してきた。ところが今回は、(日本時間で10日の)発表直後からSIMフリー版の案内を出している。このため、SIMフリー版の「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」は、キャリア版と同時期に発売されることが見込まれる。予約注文は9月12日から、発売は9月19日になる予定だ。

Apple Storeのウェブサイトには、SIMフリー版のiPhoneについて紹介するページも用意された

気になる端末価格だが、iPhone 6は16GBが67,800円、64GBが79,800円、128GBが89,800円。iPhone 6 Plusは16GBが79,800円、64GBが89,800円、128GBが99,800円(すべて税別)となっている。

2年間の支払い総額で考えた場合、大手キャリアと格安SIMサービスでは、どちらがどのくらい安くなるだろうか。大手キャリアでiPhoneを契約した場合、端末価格が割引されるのが通例だ。そこで、仮にiPhone 6の16GBモデルが実質0円で契約できたとする。5GBプランを契約した場合、利用者が24カ月で支払う総額は単純に計算して8,000円×24カ月=19万2,000円となる。一方、U-mobile 通話プラス(5GBプラン)で契約した場合、端末価格は定価のままだが、運用コストが安くなる。月に10分間の音声通話をしたとして、運用コストは3,780円×24カ月=9万720円。端末代を加算すると、6万7,800円+9万720円=15万8,520円となる。2年間の支払い総額で考えた場合、大手キャリアよりも「U-mobile 通話プラスの方が3万3,480円安い」ということになる。

適正価格は、月平均4,045円

最後にMMD研究所が8月4日に公開した格安SIMサービスを提供する代表的な5社(IIJ、So-net、b-mobile、BIGLOBE、U-mobile)のサービス内容を一覧表にまとめを掲載しておく。格安SIMサービスの会社選びの参考にしてほしい。

格安SIMサービスを提供するIIJ、So-net、b-mobile、BIGLOBE、U-mobileのサービス内容比較表 (※拡大画像はこちら)

(執筆:大石はるか)