米Appleは9月9日(米国時間)、カリフォルニア州クパチーノで開催されたイベントで、スマートフォンを利用したデジタル決済サービス「Apple Pay」を発表した。NFCを利用した決済は米国でGoogleなどが試みているがなかなか普及せず、業界では数年前からiPhoneのNFC対応が待たれていた。Appleの参入によってNFC決済が起爆するのかが注目される。

Apple Payイメージ

Apple Payはスマートフォンにクレジットカード情報を保存し、対応する店舗でかざして決済が可能になるというおサイフ機能。最新の「iOS 8」の一部として提供し、同日発表した最新のiPhoneである「iPhone 6」「iPhone 6 Plus」で利用できるほか、スマートウォッチの「Apple Watch」を通じてApple Watchがペアリング可能な「iPhone 5」「iPhone 5c」「iPhone 5s」のユーザーも利用できる。AppleではiPhone 5系のユーザーは2億人以上としている。

AppleのCEO、Tim Cook氏は米国だけで1日に2億件のクレジット決済があるとし、物理的な財布を置き換えることを目指すとした。一方で、これまでの業界の取り組みを「失敗」としながら、ユーザーエクスペリエンスにフォーカスしたと胸を張る。

クレジットカードはVISA、MasterCard、American Expressと提携、米国のクレジット決済高の83%をカバーするという。iTunes Storeアカウントに保存しているクレジットカード情報も容易に追加できる。端末のNFCアンテナを介して、このクレジットカード情報を店舗側のNFCリーダーとやりとりする。Apple Storeはもちろん、McDonald’s、Macy’s、Bloomingdale’s、Walgreen’s、Staples、Subway、Whole Foods Marketなど米国内の22万カ所で利用できるという。アプリストア「App Store」でも利用が可能だ。

安全性とプライバシーについては、iPhone 6およびiPhone 6 Plusには決済に必要な情報を安全に保存するチップであるSecure Element(SE)が搭載されており、これに指紋認証の「Touch ID」が組み合わることで高い安全性を実現すると説明している。

端末紛失の際は「Find My iPhone」でリモートから操作できる。クレジットカード情報はAppleのサーバーではなく端末上に保存され、端末固有のDevice Account NumberとともにSEに暗号化された状態で格納される。トランザクションは、クレジットカードの裏にあるコードではなく、Device Account Numberを利用して生成されるワンタイム式の番号で認証される。Apple Payが動的に生成したセキュリティコードを利用することで、トランザクションを安全に行うという。ユーザーが購入したアイテム、購入場所、決済金額などの情報についてAppleは一切把握せず、ユーザーのクレジットカード情報をショップ側と共有することもないという。

Apple Payは米国で10月にローンチ、まずはiPhone 6とiPhone 6 Plusで利用できる。iOS 8のアップデートによりiPhone 5系のユーザーもApple Watchを経由して利用できるようになる。開発者向けには、Apple Pay APIをiOS 8に加える予定とのことだ。

日本では一般的なモバイルのおサイフ機能だが、世界ではまだ普及していない。米国では、GoogleがNFC決済の「Google Wallet」を2011年秋にスタート、VerizonなどのオペレーターもNFC決済団体Softcard(旧名称はISIS)を結成して普及に取り組んでいるが、離陸にはほど遠い状態だ。以前からNFCモバイル決済にはAppleの参入が必要といわれてきた。 なお、Twitterは前日の9月8日に、ツイートから直接購入できる「Buy」ボタンを実験導入したことを発表している。物理店舗での決済サービスではないが、モバイルアプリのみの機能であり、モバイルショッピング分野参入となった。