屋台骨であるオートモーティブ

次に大村隆司氏(Photo17)が登壇、同社の自動車関連製品に関する説明をおこなった。

Photo17:従来はMCU/SoC部門を統括していたが、昨年の事業部改変に伴い自動車向け製品を担当する第一ソリューション事業本部の事業本部長となった大村隆司氏

キーメッセージ(Photo18)そのものは他社とそれほど違う訳ではないが、これは他のメッセージを出すのがむしろ難しいくらいだから仕方がない。ただここからがちょっと異なる。同社にとって自動車向け製品は引き続き屋台骨であり、ECU向けMCU(Photo19)も、Infortaiment向けSoC(Photo20)も世界トップの出荷数量を引き続き提供し続けている。

Photo18:さすがにこのメッセージはどの自動車向け半導体メーカーも同じである。さすがに「人と環境に厳しい」とか「不安・危険な車社会を目指す」というメッセージはありえないからだ

Photo19:業界2位と3位をあわせればやっとルネサスに競合できる、という程度に他社との差は大きく、ここを死守するのは同社にとって至上命題でもある

Photo20:こちらはすでにARMアーキテクチャをふんだんに取り入れた高性能SoCを広く供給しており、こちらも他社との差を保っている

その同社にとって、では自動車向けに求められるものは何か? といえば、まずはエネルギー効率改善に繋がる製品(Photo21)であり、メンテナンス性の向上(Photo22)であり、安全性の向上である。この安全性の向上に関しては、同社が現在開発中の最先端製品のプロフィールが紹介された(Photo23)ほか、先日発表されたR-Car V2(Photo24)の紹介もなされた。また車のIT化に向けて、R-Carプラットフォームがスケーラブルなソリューションを持ち、複数の環境に対応できること(Photo25)や、予想される攻撃に対応するための用意があること(Photo26)を紹介した。

Photo21:基調講演ではこのあと、もう少し具体的に同社の製品ポートフォリオがこれに対してどう貢献できるかの説明もあった

Photo22:これはまだ実現されている機能ではないが、同社の製品ラインナップでこれが既に実現できる、というアピールである

Photo23:ADASの中でも、具体的なActive Safetyに向けた製品。Dual Lock StepとかISO 26262 ASIL-Dに当初から適合、ネットワークを最大20ch搭載など、なかなか壮絶な仕様である

Photo24:こちらは展示会場でもデモが行われた

Photo25:このあたりは競合メーカーも似たようなソリューションを提供しているが、逆に言えばこうした柔軟性とかスケーラビリティで劣る点は無い、ということでもある

Photo26:ビッグデータの時代は、車そのものがビッグデータのデータ生成デバイスになるという意味でもある。実際、ITSとの連携とか、OpenXC/OBD-IIなど、どんどん扱うことの出来るデータ量が増えつつあり、当然ここへの攻撃も予測される

実はこの大村氏の講演では、まず3分半ほどのビデオ(Movie01)が上映された。このビデオそのものはあくまでも架空のシナリオに基づいたものだが、すべにルネサスはパートナーと一緒に、限りなくこれに近いソリューションを提供できるというデモを展示会場で行っており、実際にこれの様子が講演の中でもう少し詳細に説明された。ただこちらは後ほどの展示会場レポートでもう少し細かく紹介したいと思う。

動画
Movie01。ルネサスが目指す自動車の未来の姿(wmv形式)

インダストリアル(産業機器)

最後は横田善和氏(Photo27)率いる第二ソリューション事業本部の説明である。

Photo27:昨年までは子会社のルネサススピードドライバの社長を勤めておられた横田善和氏

第一ソリューション事業本部はある意味「自動車のみ」、第二ソリューション事業本部は「その他全部」ということで、産業向けと汎用向け、ICTがカバー範囲となる。従って当然ながらラインアップは非常に多岐に渡ることになる。その第二ソリューション事業本部、産業向けMCUのトップの座を引き続き維持している(Photo28)。

Photo28:110億個はMCU以外の製品も含むデバイスの総数である

氏はIoTの時代には、セキュリティ、トラフィック、エネルギーの3つの課題があるとまず説明、次いでマーケットを大きく4つにまとめ、それぞれについて同社の持つソリューションをそれぞれ説明していった。

Phtoo29:もちろんこの4つのマーケットにはさまざまな課題があり、それぞれについてさまざまなソリューションがあるわけだが、その全部というよりは、ルネサスの強みが発揮できる部分にフォーカスして今回は紹介された

例えば都市向けであれば、サーベイランス向けカメラのソリューションとして、よりデータ圧縮率の高いH.265のIPを開発したり、あるいはデータの改ざんなどを防ぐ高いセキュリティと耐タンパ性に優れた製品であるとか、家庭向けではエアコン/冷蔵庫/洗濯機といったモーターを利用している白色家電向けに、「世界のノンインバータモータの10%をインバータ化する」といった目標と、それに向けたソリューションを示した。またオフィス向け(と家庭向けの両方であろうが)では、より省電力化を図れるAdaptive Bluetoothの技術を紹介すると共に、これを利用したLifeLogの動作デモを紹介した(Photo30,31)。このデモの特徴は、もちろんさまざまな要素技術をルネサスが持っている点もあるが、それよりもパートナーと共同で、わずか3カ月でここまで構成できた事だとしている(Photo32)。

Photo30:こちらがデータサンプリングデバイス。詳しくは展示会場レポートでまた紹介するが、これはスマートフォンなどと連携することを前提に、Bluetoothでの通信となっている

Photo31:こちらが表示側で、体温や脈拍などが示される。ちなみに毎秒1回測定し、10秒ごとにデータを送る設定になっているとか

Photo32:ちなみにデータそのものは一度クラウドに上げて、そこで処理される形となっている

最後が工場向けであるが、既報の通り同社はR-INコンソーシアムを設立して普及を図る事を発表すると共に、R-IN32M3シリーズの特徴であるR-INエンジンを使ったOSやNetwork Stackの一部オフロードにより、非常に高効率な動作が行えることをデモでアピールした(これもまた展示会場レポートでもう少しご紹介したい)。

Photo33:デモそのものは展示会場で行われており、これをライブ中継の形で紹介した

Photo34:機能安全とかセキュリティは自動車向けとかなり被る部分でもある

最後に改めて3つの課題と、それに対するルネサスのソリューションをまとめて氏の講演は終了した。