4月の消費税増税まで、残り1カ月を切った。食料品などの生活必需品の消費税率も一律に8%に上がるため、家計への影響も大きく、増税を見据えて節約を心がけている人も多いかもしれない。通信関連の出費を節約したいなら、まず見直したいのはスマートフォンの通話料だ。現在、主要キャリアから販売されているLTE対応スマートフォンでは、30秒21円という割高な通話料の料金プランが一般的であり、無料通話分もないため、通話をする機会の多い人にとっては、毎月の通話料の負担が重くなっている。

スマートフォンの通話料を節約する方法としては、IP電話アプリなども知られているが、最近、注目を集めているのが、「G-Call」や「楽天でんわ」といったプレフィックス番号を利用する格安通話サービスだ。本稿では、よく似たサービスであるG-Callと楽天でんわを比較し、両サービスの違いを解説していきたい。

格安通話サービス「G-Call」と「楽天でんわ」を比べてみた

プレフィックス番号を利用する通話サービスとは?

G-Callと楽天でんわを比較する前に、まずプレフィックス番号を利用する格安通話サービスについておさらいしておこう。G-Callなどの通話サービスでは、スマートフォンから通話発信する際に、相手の電話番号の頭に4桁や6桁などのプレフィックス番号を付加して発信を行う。プレフィックス番号を付加することで、専用の電話回線を利用した通話となり、格安の通話料で電話をかけることが可能だ。

G-Callと楽天でんわでは、それぞれiPhone、Androidスマートフォン向けに専用アプリが用意されており、専用アプリから通話発信することでプレフィックス番号を自動で付加することが可能。両サービスとも、利用にはあらかじめ申込みが必要となり、自身の電話番号を登録することで利用可能。また、電話番号を登録していれば、フィーチャーフォンからも利用でき、プレフィックス番号を直接入力して発信することで各サービスを利用した通話が行える。

G-CallのAndroidアプリ。番号入力や連絡先、通話履歴から発信できる

楽天でんわのAndroidアプリ。番号入力や連絡先、通話履歴、お気に入りから発信可能

なお、G-Callや楽天でんわは、電話回線を利用するため、パケット通信を利用するIP電話アプリとは異なる。IP電話アプリとしては「050 plus」などが有名であるほか、無料通話・チャットアプリの「LINE」が3月より提供開始予定の「LINE電話」もパケット通信を利用する通話サービスとなっているが、一般的にパケット通信を利用した通話は、スマートフォンの通常発信と比べて音声品質が劣化したり、遅延が発生することがある。一方、G-Callや楽天でんわでは、電話回線を利用した通話となるため、音声品質はスマートフォンの通常発信と同様で、遅延も少ないのが特長だ。

G-Callと楽天でんわの国内通話料を比較

それでは、G-Callと楽天でんわを比較していこう。まず、スマートフォンから固定・携帯電話宛に発信したときの国内通話料を見てみると、G-Callの国内通話料は、固定・携帯電話宛ともに非課税で10円/30秒。一方、楽天でんわの国内通話料は、固定・携帯電話宛ともに10.5円/30秒(税込)となっている。LTE対応スマートフォンの一般的な通話料は、21円/30秒であるため、両サービスとも約半額の通話料で電話をかけることが可能だ。

G-Callと楽天でんわの国内通話料の違いは、消費税が非課税となっているか、課税されるかという点だ。また、4月の消費税増税における楽天でんわの対応は明記されていないが、順当にいけば消費税8%に対応して、10.8円/30秒になるものと思われる。それでも、G-Callの通話料10円/30秒との違いはわずかではあるが、たとえば月間で合計1時間程度の通話をした場合、通話料の差は約100円となるため、通話する機会が多い人はG-Callを選んだほうが良さそうだと言える。

なお、楽天でんわでは、通話料100円につき、楽天スーパーポイント1ポイントが貯まる。通話料の約1%が還元される仕組みだが、これを考慮しても消費税分の差は大きいと言える。また、ポイントが付与されるのが、約2カ月後となっているのも注意が必要だ。

国際電話は対応国・料金・単位時間に違いが

G-Callは国際電話にも対応しており、海外にも格安の通話料で電話をかけられる。また、楽天でんわも、2014年2月より国際電話に対応している。なお、両サービスの国際電話では、通話できる国に違いがあり、G-Callがほぼ全世界の国や地域へ通話できるのに対し、楽天でんわでは、アジア、アメリカ、オセアニア、欧州の32の国と地域への通話にのみ対応。

また、楽天でんわの国際電話の料金は、国内通話と同等で各国とも一律10円/30秒(非課税)。一方、G-Callの国際電話では、発信先の国によって通話料が異なり、たとえば米国は2.9円/6秒、イギリスは3.9円/6秒、韓国は3.9円/6秒などとなっている。1分換算の通話料では、それぞれ米国29円、イギリス39円、韓国39円となるため、楽天でんわの1分20円と比較すると割高だが、G-Callの国際電話料金は、単位時間が6秒となっているのがポイント。通話時間が短い場合でも、無駄なく課金されるのが特長となっている。

以上のことから、国際電話をお得に利用したい場合、G-Callと楽天でんわのどちらを使ったほうが良いかは、発信先の国や通話の用途によっても違ってくると言えそうだ。

登録できる回線数が異なり、G-Callには業務利用のメリットも

先述の通り、G-Callや楽天でんわを利用する際には、あらかじめ自身の電話番号の登録が必要だが、両サービスでは、登録できる回線数が異なる。G-Callの場合、回線数に制限はないが、楽天でんわでは、登録できる電話番号は5回線までに制限されている。

個人で利用する場合、回線数の制限はあまり影響がないと思われるが、たとえば、家族の回線をまとめて登録して一括で支払いたいときや、業務利用の場合には、楽天でんわの5回線までというのは物足りないかもしれない。なお、楽天でんわを提供するフュージョン・コミュニケーションズでは、法人向けの「モバイルチョイス」という同種のサービスを提供しているが、固定・携帯電話宛の国内通話料が31.5円/1分(税込)などと、料金体系が異なっている。

一方、G-Callは、登録できる回線数が無制限であるほか、法人向けの管理ソフトも用意されている。また、法人登録の場合、支払い方法として口座振替も利用できるほか、通話明細や請求書を無料で郵送してもらうことができ、業務利用にも適しているのが特長だ。

キャリア内無料通話をアプリから利用する方法

G-Callと楽天でんわは、どちらも月額基本料や初期費用が無料で、通話した分だけ格安の通話料で利用できるお得な通話サービスとなっている。ただし、スマートフォンでKDDIの「LTEプラン」やソフトバンクの「ホワイトプラン」に契約している場合には注意が必要だ。これらの料金プランでは、同一キャリア内の1時から21時までの通話が無料となっているが、G-Callや楽天でんわを利用して通話した場合は対象外となるためだ。

G-Callや楽天でんわのスマートフォン向けアプリでは、このようなキャリア内無料通話を利用するための機能が用意されているが、使い方には違いがある。

G-Callアプリの場合、電話番号を入力して発信ボタンを押したり、通話履歴から電話番号を選択した際にはポップアップメニューが表示され、G-Callで発信するか、スマートフォンの通常発信を利用するかを選択できるようになっている。そのため、無料通話が可能な相手に発信する際は、通常発信を選択することで、無料で通話することができる。

G-Callアプリの場合、発信時にG-Callを利用するか、通常発信するかを選択できる

楽天でんわでは、"無料通話リスト"に登録した相手にプレフィックス番号を付加せずに通常発信できる

一方、楽天でんわアプリでは、無料通話が可能な相手を"無料通話リスト"にあらかじめ登録しておく必要がある。連絡先や通話履歴から"無料通話リスト"に登録した電話番号を選択すると、プレフィックス番号を付加せずに通常発信でき、キャリア内無料通話を利用できるようになっている。

楽天でんわアプリの場合、あらかじめ相手を登録しておく必要があるほか、登録相手に21時以降の無料通話が利用できない時間帯に発信すると、通常発信による21円/30秒の通話料がかかってしまう。そのため、キャリア内無料通話を利用するためのアプリの使い勝手では、G-Callのほうが優位だと言えそうだ。

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スマートフォン向け格安通話サービスの「G-Call」と「楽天でんわ」を比較してみた。消費税増税を見据えた国内通話料ではG-Callのほうがお得であり、登録できる回線数やアプリの使い勝手もG-Callが優れていると言える。楽天でんわは、対応国は限られるものの、国際電話の通話料が各国一律であるのが魅力だ。もっとも、両サービスとも月額基本料や初期費用は無料であるため、両方のアプリを実際に試してみたり、用途に応じて使い分けてみるのもよいかもしれない。