液晶ディスプレイが高価な周辺機器の代表格だった時代も、今は昔の話となり、現在ではフルHD対応など高解像度の製品でも手頃な価格で手に入れられるようになった。複数のディスプレイを組み合わせて、2~3画面程度のマルチディスプレイ環境を構築しているユーザーも少なくないだろう。
しかし、多数のチャートを同時に表示する必要に迫られる金融トレーディングなどの用途では、2~3画面ではニーズを満たせず、ディスプレイの枚数は多いほどありがたい。ただ、4画面以上の環境を構築しようとすると、グラフィックスカードの追加導入やドライバの設定といった作業が必要になることも多く、ただたくさんのディスプレイを用意すればいいというものでもなくなってくる。実用的なマルチディスプレイ環境を確実に手に入れたいというユーザーには、少しハードルの高い世界なのだ。
そんな、1枚でも多くの画面を使いたいというユーザーに向けてマウスコンピューターが用意しているのが、最大6画面の同時表示が可能なマルチディスプレイ対応PC「MDV-AQZ7110BV5-HeXa」(販売価格124,950円)だ。今回は、このPCと6台の液晶ディスプレイを組み合わせて、「ヘキサ(=6)ディスプレイ」環境を実際に構築してみた。
マルチディスプレイ用グラフィックスカードを搭載
MDV-AQZ7110BV5-HeXaの最大の特徴は、NVIDIAのマルチディスプレイ用グラフィックスカード「NVS 510」を搭載していることだ。NVS 510はロープロファイルサイズながら、これ1枚で最大4画面出力に対応しており、複数のグラフィックスカードを搭載しなくても多画面環境を構築することが可能だ。
1画面当たりの最大解像度は3840×2160ドット(いわゆる4K)と強力。ディスプレイ端子はmini DisplayPortを4ポート用意しており、DisplayPort対応ディスプレイとスマートに接続できるほか、DisplayPort-DVI変換ケーブルを利用すれば、従来のDVI端子にも接続できる(シングルリンクケーブルの場合最大1920×1200ドット)。
本機はCPUにCore i5-3570を搭載しており、CPUの内蔵グラフィックス機能も利用できる。マザーボード側のDVIとアナログRGB(D-Sub)出力を使用することで、マシン全体では合計6画面の同時出力が可能になっているというわけだ。
23.6型液晶6台とスタッキング対応アームを利用
今回、組み合わせる6台のディスプレイにはiiyamaの「ProLite E2473HS」を採用した。1920×1080のフルHD表示に対応した23.6型液晶ディスプレイで、A4見開き書類も余裕を持って実寸表示が可能。最近の液晶ディスプレイとしては、オフィスなどで導入するのにも標準的なサイズといえるだろう。また、超解像技術「X-Res Tech.」を搭載しており、ぼやけた映像や、画面サイズに満たない画像を拡大した場合も、従来より鮮明に表示することができる。単体販売時の価格は21,800円と、これでも十分な値ごろ感があるが、マウスコンピューターのPCと同時購入する場合、16,800円と一層魅力的な価格設定になっている。
マルチディスプレイ環境でもうひとつ重要なのが、画面のセッティング位置だ。特に、横1列に並べても実用性を損なわない3画面程度までの環境と異なり、それ以上に画面が増えた場合、上下に積み重ねる形で配置しないと全体を視認することが難しくなる。
そこで利用するのが、画面を見やすい位置に固定するためのディスプレイアームだ。今回は、テックウインドが取り扱っているエルゴトロン製の「LXデュアルディスプレイアーム スタッキング」を利用した。これは、2台のディスプレイを保持できるアームで、「スタッキング」の名称通り上下に積み重ねる形での固定のほか、可動範囲が広いため画面を左右に並べることもできる優れものだ。
ひとつひとつのディスプレイに表示させる内容によって、画面位置を変更したくなることがしばしばあるが、アームの品質が低いとなかなか思い通りの位置で固定できなかったり、固定後も手が少し当たった程度で位置がずれてしまったりと、使い勝手が良くない。この点、エルゴトロンは業務用途でも評価の高いブランドだけあって、関節部の精度が高く、簡単に画面を動かすことができる一方、手を離すとピタリとその位置に止まる、ほど良い"固さ"を備えるアームだった。
なお、ディスプレイアームは製品ごとに荷重範囲が決められており、安全かつ快適に使用するためにはそれに合った重量のディスプレイを選ぶことが重要だ。LXデュアルディスプレイアームは1アーム当たりの対応荷重が最大9.1kgとなっているが、ProLite E2473HSはスタンド部を外した場合の重量が3.9kgなのでまったく問題はなかった。