車間4mの隊列走行が実現するまで

もちろんこの4m間隔での隊列走行は、いくら近年になってASV(Advanced Safety Vehicle:先進安全自動車)技術が目覚ましく進んでいるからといって、プロジェクト開始当初の2008年度から可能だったわけではない。2010年度に車間20m(画像2)、そして同年度末に車間10m(画像11)とおよそ1年ごとに達成してきて、目標の4mに至ったのである。

画像11。およそ車間10m。実際には車間を距離ではなく時間で計っているので、速度によって若干距離が変わる

時速80km、大型3台+小型1台の4台隊列で車間4mは世界的にも難度の高いもので、これまで欧州と米国でこうした自動運転の隊列走行の実験が行われているが、今回の技術はそれらと何ら遜色がないという。欧州で行われた「EU SARTRE(Safe Road Trains for the Environment)2009-2012」では、乗用車・トラック混在の4m間隔5台隊列走行(先行車追従制御)だ。米国で行われたのは、大型トラック3台による車間3~6mの隊列走行「Calfornia PATH(Partners for Advanced Transit and Highways) Platoon」だ。こうして、先進国・地域では開発が進められているわけだが、まだ実用化に至ったわけではない。

日本でも実現するには、前述したように道交法を変更する必要がまずある。さらに、長距離トラックを使う輸送業者が、15%の燃費向上程度では、わざわざコストをかけてまで改造したくない、となってしまえば、せっかく販売したとしても使われることのない技術となってしまう可能性もある。もちろん、具体的な装備一式の取り付け費用を含めた価格を現時点で算出するのは難しいわけだが、40万円以下なら、数年で元が取れるはずなので、考えてもらえるのではないか、ということである。

ちなみに、今回の隊列走行を行ったトラックだが、専用設計されて新規に開発されたオリジナル車両というわけではない。前述したようにいすゞ、日野、三菱ふそう、UDのトラックメーカー国内4社が協力しており、各社の販売中の大型トラックに各種機器を後付けして、今回の自動運転技術を実現している(画像12・13)。

画像12。本文で後述するが、コンセプトXのCACC実験車の概要。4メーカーの車種混成で4台隊列を編制した

画像13。同じく本文で後述するが、コンセプトZの隊列走行実験車の概要。3台隊列で車間4m走行を実現している車両だ

よって、現在使用されているトラックを自動運転・車間4m走行仕様にする各種機器を販売するのも、基本的には難しいことではないという。1台のみブレーキの仕組みを一部変更する必要があったということだが、基本、特別設計というわけではないので、普及という面で考えると、させやすいのではないかと思う。

車種の内訳だが、自動運転・車間4m隊列走行を行った3台は日野の「プロフィア」(全長11.985m、車重11.345t)(画像12)のみで編制されているが(画像14)、取材陣が試乗した10m車間走行デモなどで活躍した4台隊列の方はプロフィア(画像15)に加え、いすゞの「ギガ」(全長11.96m、車重10.72t)(画像16)、三菱ふそうの「スーパーグレート」(全長11.99m、車重11.1t)(画像17)、UDの「クオン」(全長11.995m、車重10.91t)(画像18)という編制で、メーカー混成でも隊列を組めるという点も大きなポイントだろう。また、プロフィア3台編制についていける小型トラックとしていすゞの「エルフ」(画像19)もある(当初は障害物回避なども行う車両だったが、そちらは機器の不具合で中止に)。

画像14。日野のプロフィア(型式:FW1EXBJ)の車間4m・3台隊列のコンセプトZ用の車両。荷台が特別仕様になっている

画像15。プロフィアのコンセプトX車両

画像16。いすゞのギガ(型式:CYL)

画像17。三菱ふそうのスーパーグレート(型式:FS55VVZ)

画像18。UDのクオン(型式:QKG-CD)

画像19。唯一の小型トラックいすゞのエルフ